【投資家の視点から解説!】米国経済のリセッション回避に向けた戦略とリスク管理!
米国経済における今後の展望について、世界的な経済状況と共に、市場参加者や投資家が関心を寄せています。特に米国経済が景気後退を意味する「リセッション」を回避する可能性が高まるなかで、注目されているのが米国の長期金利の動向です。
金利と株価はシーソーのような関係にあり、金利が下がると株価は上がりやすくなります。
なぜなら金利が低いと、預貯金よりも投資をしてリターンを得ようとする期待が高まり、株式市場へ資金が集まりやすくなるからです。
反対に金利が上昇すると、株価は下がりやすくなるのです。
つまり、今後の米国経済の動向として有力視されているリセッションを回避するシナリオにおいては、FRB(連邦準備制度)が政策金利を引き上げると、市場金利全体が上昇する可能性があり、市場参加者がより高い利回りを求めて米国の長期金利を上昇させ、それに伴いドル高に傾きやすくなると予想されます。
こうした状況下において、ドルと逆相関の関係にあるといわれている新興国株や金が売られてしまうと懸念する投資家もいるのではないでしょうか。
しかし、過去の経験から学ぶと、必ずしも長期金利の上昇がドル高になったわけではなく、新興国株や金の価格を押し下げる結果になると決まったわけではありません。
そこで今回は米国経済のリセッション回避について、また今後の投資戦略やリスク管理について考えていきたいと思います。
リセッション回避の背景とは?経済的な不安とリスクを解説
まず、リセッションとは「景気後退」を意味する言葉です。欧米ではGDP(国内総生産)が前年同期比で2四半期以上連続してマイナスになると、リセッション入りしたと考えられます。
それでは、米国経済の見通しに関して考えてみましょう。2023年のリセッションの可能性を示唆していた先行予測が、8月の第1週にバンク・オブ・アメリカとJPモルガン・チェースによって撤回されました。
これは、強固な労働市場と安定した個人消費を背景に、直ちにリセッションが迫る兆候が見られなかったことが要因です。この変化がもたらす影響としては、リセッション入りを予想していた投資家が、安全資産として保有していた長期債券を売却する可能性が考えられます。
また為替市場においては、異なる国々の金利水準の差異が為替レートに大きな影響を与えますが、米国の長期金利の上昇はドル高要因となりやすい特徴があります。
ただし、過去のデータを振り返ると、逆にドル安の展開がみられたことが何度もあるのです。
また金利水準だけでなく、国内外の経済指標や政策動向、紛争やテロといった地政学的リスクなどが為替相場に影響を与えることを考慮する必要もあるでしょう。
リセッション回避と米国の長短金利差に注目する理由
「長短金利差」とは長期金利と短期金利の差を指します。
通常、長期金利は将来的な経済の見通しが反映され、短期金利は市場の短期的な金融政策の影響を受けます。
この長短金利差が広がる場合、経済が拡大し、成長している兆候があるとされます。
反対に長短金利差が縮まる(マイナスになる)場合、景気減速の兆候とされることがあります。リセッション回避と米国の長短金利差に注目する理由は、今後の投資戦略や方向性を考える材料となるからです。
たとえば、2000年以降のドル指数と長期金利の変動を振り返ると、長期金利の上昇とドル指数の下落が同時に起こる逆行現象が何度も確認されています。この逆行現象は、為替市場の影響を単一の要因に依存するのではなく、世界全体の金利状況、インフレーションの動向、貿易収支、地政学的リスクなど、多岐にわたるファクターが重なり絡み合って影響を及ぼしているからと考えられます。
同様に、この逆行現象は発生するとしばしば1年以上にわたって持続する傾向が見られます。
特に注目したいのが、今年の3月以降、長期金利の上昇と同時にドル指数の上昇が鈍化していることが確認されていることです。しかしながら、これは主にドル円の動向に焦点を当てている投資家からの視点であり、世界の為替市場全体から見ればドル安の流れが続いている現状を捉えることが重要です。
したがって、米国経済がリセッションを克服するシナリオが進行する場合でも、必ずしもドル高に振れるわけではなく、逆行現象が継続する可能性があるならば、新興国株や金などの資産価格にとっては追い風となる可能性があるのです。
もちろん、長期金利の上昇によって米国株と新興国株の両方が下落する可能性もあるでしょう。
しかし、特に長期金利の上昇に弱い分野は他にも存在します。
それがハイテク株(高度な最先端技術を持つ電子機器や精密機械の製造企業、IT・通信関連企業などの株式の)などの高PER(※)のセクターです。
特に長期金利の上昇局面においては、投資家のリスク許容度が下がるため、高PER銘柄の多いハイテク株の売りが先行する可能性が高いのです。
そもそもハイテク株は、将来に向かって成長が加速することが期待されており、金利が上昇すると割引率も上昇します。この割引率とは、金融商品やお金などの「将来における価値が現在どの程度の価値を持つか」を計算する際の利率です。一般的に金融商品の割引率は無リスク金利(リスクを取らない場合の利回り)とリスクプレミアム(リスクに応じて期待される収益の上乗せ分)から構成され、遠い将来の方が割引率が大きくなります。つまりハイテク株などの高成長企業の株価は、安定成長型の企業よりも大きく変動します。また長期金利が上昇すると、将来の事業に対する懸念も増大するため注意が必要です。
今後の米国株の投資戦略の考え方
長期金利の上昇が予想される状況においては、米国の株式市場が急落するリスクが指摘されていますが、今後の米国株の投資戦略としては下記2つのポイントが考えられるでしょう。
分散投資の重要性
高PER銘柄の多いハイテク株などに対するリスクを考えた場合、ひとつのセクターに過度に投資を集中させることは避けるべきではないでしょうか。
ポートフォリオを異なるセクターに分散させることで、リスクを下げることができます。
こうすることで、ひとつの市場の動向に左右されにくくなります。
バリュー株の検討
長期金利の上昇が高PERであるセクターに影響を与える可能性があるなかで、低PERのバリュー株は注目されるようになる可能性が高いです。
バリュー株はしばしば安定したキャッシュフローや実体のある資産に支えられており、市場の変動に対する耐性があることも特徴のひとつです。
バリュー株を選定する際には、企業の基本的なファンダメンタルズに注意が必要ですが、米国には配当貴族と呼ばれる連続増配を25年以上続けた企業が多く存在します。そうした企業のなかから目安となる個別株を検討するのも良いでしょう。
今後の新興国株の投資戦略の考え方
米国の長期金利の上昇が予想される状況においては、米国内の株式市場が急落だけでなく、同時に新興国株にも連動して下落が広がるリスクから、新興国株も売却しておくべきだろうと考える投資家もいることでしょう。
しかし、米国ではGAFAMなど米国経済を牽引してきたビック・テックの成長が鈍化しており、特に2010年以降、米国を筆頭とした先進国の株式よりアンダーパフォーム(※)してきた新興国の株式へと注目が集まりつつあります。
そのためマーケットの変動に惑わされることなく、新興国株も長期的な投資戦略が必要ではないでしょうか。
新興国株のチャンス
長期金利の上昇による米国株式市場の動揺は、新興国株式市場にも影響を及ぼすかもしれませんが、その中には成長潜在力を持つ企業も多く存在します。新興国の経済成長や技術の進歩に注目し、適切なリサーチを行うことで、投資機会を見つけることができるかもしれません。
特に参考となるのが、国際通貨基金(IMF)が毎年2回(春と秋)発表している世界経済見通し(WEO)です。定期的に確認することで、今後経済成長が期待される新興国や地域を把握することが可能です。
とはいえ投資をする際には、自身のリスク許容度と向き合うべきです。
なぜなら無理をするとマーケットが悪化したときに、感情に流されて狼狽売りしてしまう可能性が高くなるからです。
筆者自身、大きく相場に張ってしまい狼狽売りして後悔した経験が何度もあります。
たとえ小さな金額でも構わないので、自身が継続できる金額から始めることが大切だと思います。
まとめ
経済状況や市場の動向は、予測困難な要素が多々含まれています。
しかし、投資家にとって重要なのは、過去の経験を踏まえつつ、将来の不確実性にも柔軟に対応することだと思います。
経済の波に乗りながら、着実な資産運用を行うためには、市場の波に揺られず、着実な投資戦略を実行し続けることが成功の鍵となるはずです。
したがって、今後の経済展望や市場の展開に対しては、単一の要因にとらわれず、幅広い視野を持ちながら判断することが大切になるはずです。
米国経済がリセッションを回避するとしたら、金利や為替市場が動くなかで、どのようにすれば市場の変動に強いポートフォリオを構築することが可能となるでしょうか。
これが投資の難しさであり醍醐味のひとつでもあるのです。
忘れてはいけないのは、経済や市場の動向に合わせた投資戦略を微調整しながらも、長期的な目標を念頭に置きつつ投資を進めていくことです。
ちなみに筆者自身、米国と新興国へのインデックス投資を毎月継続しています。
今回は投資家の視点から米国経済のリセッション回避と投資戦略について解説させて頂きました。
▼参照サイト
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