申告漏れは税務調査の原因に?納める税金や調査の対象を解説
所得を正しく申告していないと、税務調査で申告漏れとして指摘される可能性があります。もし、税務調査で指摘されてしまうと、修正申告が必要となり追徴課税を課されるでしょう。どのような理由で税務調査を受け、追徴課税ではどの税金を納める必要があるのか解説します。
税務調査で申告漏れが発覚する可能性あり
個人での税務調査例
個人での税務調査例としては、仮想通貨や暗号資産で利益を得ている人に対するものが挙げられます。これらの取引で得た利益は、適切に確定申告し納税までおこなう必要がありますが、適切に処理されていないケースが多いからです。正しい知識がないケースや、意図的に確定申告していないケースが見受けられます。
税務署は、いくつもの調査から仮想通貨や暗号資産で利益を得ている人の情報を把握しています。そのため、まとまった収入を得ているにもかかわらず、確定申告していない人を発見すると税務調査の対象となる仕組みです。
法人での税務調査例
法人での税務調査例としては、海外取引にかかわる申告漏れなどが挙げられます。いわゆる「タックスヘイブン」を利用して、納税を回避しようとする取引などです。取引自体は申告しているものの、その取引額が法人の認識していた額と、税務署が必要だと判断していた額が異なり、それによって申告漏れが発生します。
国税庁の事例では、海外子会社が収益を上げているにもかかわらず、それを日本で確定申告していないケースが紹介されていました。海外子会社を含めた申告が正しくおこなわれていないと、税調調査の対象となってしまい、申告漏れとして指摘される原因となりかねません。
申告漏れでは追徴課税を課される
追徴課税とは
追徴課税は、本来納めるべき税金を正しく納付できていない時に、不足分を納付することを指します。本来、税金は特定の計算方法から算出される金額を納付しなければなりません。しかし、申告漏れがあると正しく計算できないため、改めて算出した金額との差分を納付します。
ただ、納めるべきタイミングから納付が遅れているため、ペナルティが発生します。不足している税額とは別に、附帯税と呼ばれるものを納めなければなりません。申告漏れにより追徴課税の対象となった場合は、この附帯税によって、納税額が大きく増加してしまいます。
追徴課税の種類
申告漏れ・無申告によって課される追徴課税には、大きく分けて以下の5種類があります。
無申告加算税
無申告加算税は、期日までに確定申告せず、納税を免れた際に課される税金です。申告漏れの場合は、まったく確定申告していないわけではないため、無申告加算税の対象にはなりません。
無申告加算税が課される場合は、原則として以下のとおり計算されます。
- 納める税額が50万円まで:納付税額の15%
- 50万円を超えた場合、その部分について:納付税額の20%
過少申告加算税
過少申告加算税は、期日までに確定申告したものの、本来の納税額よりも少なかった場合に課される税金です。申告漏れがあった場合は、本来の納税額よりも納付した金額が少なくなるため、この過少申告加算税の対象となります。
基本的に、過少申告加算税は、追加で納めることとなった税額の10%を納めなければなりません。ただ、追加で納付する必要がある税額が「当初申告した納税額」もしくは「50万円」のいずれか多い方の金額を超えていると、15%を納めることになります。
不納付加算税
不納付加算税は、源泉徴収義務のある個人や法人が、徴収した税金を納めていないときに課されます。事務手続きが実施されておらず、源泉徴収した内容に申告漏れがあった場合は、納付の対象となり得ます。
納税額は、納付すべき金額の10%です。金額に応じて、税率が変化する仕組みではありません。
重加算税
重加算税は、正しく納税できていない状況において、悪質さが認められていた時に課される税金です。例えば、意図的に申告漏れを生み出し、脱税しようとしたケースなどが該当します。また、虚偽の申告によって、納税額を減らそうとした場合なども重加算税が課されるでしょう。
実際に重加算税が課されるかどうかは、税務調査を担当した所轄の税務署の判断に左右されます。一律の基準があるわけではなく、過去の事例なども踏まえて「悪質かどうか」が判断される仕組みです。そのため、申告漏れがあったからといって、必ず重加算税が課されるとは限りません。
重加算税が課される場合の税率は、状況によって以下のとおり変化します。
- 過少申告加算税に代えて課せられる場合:納付額の35%
- 無申告加算税に代えて課せられる場合:納付額の40%
- 不納付加算税に代えて課せられる場合:納付額の35%
申告漏れがあった場合は、無申告ではないと考えられるため、35%の税率が適用されると考えましょう。
延滞税
申告漏れなどが原因となり、追加で税金を支払う際には、延滞税と呼ばれるものも課されます。こちらは、期日までに税金を納めていないことに対するペナルティに該当するものです。期日までに納めている人と差別化するために、これが設けられています。
延滞税は、納付期限と実際に納付する日の関係から算出される仕組みです。細かく、税率が定められているため、その都度算出しなければなりません。
個人の申告漏れは住民税や社会保険料にも影響
住民税に影響する理由
住民税は市区町村が所管の税金ですが、所得の申告漏れがあるとこちらにも影響します。これは、住民税が所得税の算出に利用される「所得」を元に算出されているからです。
一般的に住民税は所得金額の10%を納めなければなりません。そのため、申告漏れを精査した結果、所得金額が増加すると所得税にも影響してしまいます。増加した所得の10%を住民税として納めると、理解しておくと良いでしょう。
社会保険料に影響する理由
社会保険料は所得を踏まえて算出される仕組みです。そのため、申告漏れの修正によって所得が増加すると、社会保険料も増加します。社会保険料は等級によって支払額が管理されているため、どの程度の変化があるのかは状況によります。
なお、社会保険料についても、支払いが遅れていることによる延滞金の支払いが求められる可能性があります。申告漏れがあった際は、早急に相談して指示を受けるようにしましょう。
納められない場合は相談が必要
申告漏れを指摘された際は、税務調査の結果を踏まえて納税しなければなりません。ただ、高額な納税を求められると、その場で納められないこともあるでしょう。期日までに現金を用意できないことが考えられます。
このような状況では、納税について税務署や住民税の担当窓口と相談するしかありません。納税できないからと放置すると、差し押さえなど更なる問題に発展します。分割で納税できるように交渉するなど、適切な対応が必要です。
申告漏れによる追徴課税額の試算
国税庁が公開している資料を参考にすると、税務調査1件あたり追徴本税額は100万円程度です。この場合、どの程度の追徴課税となるのか試算してみましょう。
まず、申告漏れの場合は原則として10%の過少申告加算税が課されます。そのため、100万円の10%である10万円を納めなければなりません。悪質性が認められる場合は、重加算税となり35%の35万円を納めます。
また、これらに加えて納税していなかった期間に応じた延滞税の納付が必要です。こちらは、期間に応じて変化するため割愛しますが、期間が長いほど高額になってしまいます。
合計すると、税務調査で所得税の申告漏れを指摘された場合は「110万円(135万円)+延滞税」を納めなければなりません。
まとめ
申告漏れが税務調査で発覚するケースについて解説しました。意図しているかどうかを問わず、申告漏れを指摘されると追徴課税の原因になりかねません。指摘されることがないように、正しく確定申告することが重要です。
また、申告漏れが指摘されると、住民税や社会保険料にも影響します。大きな出費を抱えることになるため、正確な確定申告がとにかく重要です。
立命館大学卒。
在学中に起業・独立などにあたり会計や各種監査などの法規制に対応するためのシステム導入ベンダーを設立。紆余曲折を経て多くのシステムを経験。
システム導入をされるお客様の起業活動を通じて得た経験、知見を活かし皆さんの気になるポイントを解説します。
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