労災保険制度の拡大フリーランスの自由な働き方を支える
自由な働き方を選び、企業に属さずに個人で業務を受けるフリーランスの数が増加しています。
フリーランスが安心して働くためには、病気やけがの際にも生計が保護される安全ネットが必要です。厚生労働省は、原則としてあらゆる業種のフリーランスが労災保険に加入できるように改革を進めています。この改革により約270万人のフリーランスが対象となる見込みです。
対象270万人、働き方の多様化に応える重要な一歩
厚生労働省は、労働者災害補償保険法の施行規則を改正し、フリーランスの労災保険適用範囲を全業種に広げる方針を進めており、この改革は2024年秋に施行される予定です。
加入は任意であり、ライター、研究者、デザイナーなども新たに対象となるでしょう。
新しい制度では、企業から業務委託を受け、企業で働く労働者と同様の環境で働いているフリーランスが保険の対象となる見込みです。この基準は、2023年4月に成立した「フリーランス・事業者間取引適正化等法」に基づいて判断されます。
そもそもフリーランスとは、企業や組織に雇用されず、独自に仕事を受ける個人を指します。
内閣官房の調査によれば、2020年時点で全国で約460万人のフリーランスが存在し、労働人口の約15分の1に相当します。新型コロナウイルスの感染拡大がきっかけとなり、彼らの数は増加傾向にあるようです。
しかし、フリーランスは通常、労災保険などの安全保障に関して、一部の業種しか加入できないという課題がありました。これまで自転車配達員や歯科技工士など、特定の業種に対して保険対象を拡大してきましたが、対象業種は現在25種類に限られています。
現行のルールに従えば、約70万人のフリーランスが労災保険に加入しているとされていますが、業務委託を受けているフリーランスは約270万人いるとされ、新しい制度の導入に伴い利用者が増加する可能性が高いでしょう。
今後の検討課題としては労災保険料率があります。通常、労災保険料は雇用主である企業が負担しますが、フリーランスは個人で負担する必要があり、月額で約3,000円から5,000円程度かかります。
労災保険法は1947年に制定され、当初は工場で働く労働者を対象としており、個人事業主などのフリーランスは含まれていませんでした。しかし、1965年にトラック運転手や一人親方などの業種に対して労災の適用を始めるなど、労働環境が多様化するにつれ、労働者としての保護が必要とされるようになりました。
現代の多様な働き方に合わせて、労働者としての定義やフリーランスの保障についての線引きは難しい課題となっています。フリーランスは一般的に労働者法の下では「個人事業主」とされているため、一律に労働者として扱うことはできません。例えば、フリーランスが保険に加入せずに仕事を請け負った場合、事故が発生した際に労働者として認定される可能性があり、労災認定を要求するケースも予想されます。
そのため、厚生労働省内では、企業が契約を結ぶ前にフリーランスが任意で労災保険に加入しているかを確認する仕組みが必要との声も上がっています。
欧州連合(EU)では、個人事業主と労働者を区別する基準の策定が進められており、契約企業が報酬の水準や労働状況を監視・評価しているかどうかなど、特定の基準を満たす場合、労働者として認識する案も存在します。フランスなどの一部の国では、実際に企業がフリーランスの保険料を負担する労災補償制度を法律で定めています。
しかし、日本にはこのような基準がまだ存在しません。
フリーランスの労災保険制度の改革は、現代の労働環境に合わせた重要な一歩です。
制度の改善により、フリーランスの生計と健康が守られ、社会全体にとってプラスの影響をもたらすことが期待されます。
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