雇用調整助成金上限は8,330円→1万5,000円に事業者への家賃支援も拡充へ~第2次補正予算案のポイント~
新型コロナウイルス感染症の追加対策を盛り込んだ歳出総額31兆9,0000億円の2020年度第2次補正予算案が、閣議決定されました。中小企業を中心とした資金繰り対策に約11兆円が計上されたほか、「雇用調整助成金」「持続化給付金」「家賃支援給付金」などが拡充、新設されることになります。事業者向けの施策を中心に、ポイントをまとめました。(5月28日現在の情報です)
「雇用調整助成金」は大幅拡充
中小企業の経営者や個人事業主、フリーランスにとって特に関係が深いと思われる施策について説明します。
「雇用調整助成金」の上限引き上げ
雇用調整助成金は、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、雇用の維持を図るために従業員に支払う休業手当に要した費用を、国が肩代わりする制度です。「新型コロナ」の感染拡大で影響を受けた企業に対して、すでに申請、支給が開始されていますが、第2次補正予算で拡充が図られています。
雇用調整助成金について(今回の拡充前)
最も大きいのは、労働者1人当たり日額8,330円とされていた上限が、1万5,000円(月額上限33万円)まで引き上げられたこと。これを超える部分は企業が負担しなくてはならないため、制度の利用に二の足を踏む一因にもなっていました。
また、解雇などを行っていない中小企業の場合は、国の助成率が10/10に引き上げられることになりました。中小企業は、自己負担なく休業手当を支払うことが可能になります(現在は、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく休業要請を受けている場合にのみ、助成率10/10)。
適用期間は、4月1日に遡及の上、9月30日まで。こうした「新型コロナ」対策の特例措置が受けられる緊急対応期間も、従来の「6月30日まで」から、「9月30日まで」に延長されます。
「家賃支援給付金」の創設
「単月の売上が昨年同月比で5割減った」ないし「3ヵ月の売上が昨年同期に比べ30%減った」ことを要件に、事業者の家賃の2/3を、中堅・中小企業は月に50万円、個人事業主は月に25万円を上限に半年間給付する制度が設けられます。
「新型コロナ」対策の家賃補助について
- 「新型コロナ」対策で、中小企業の家賃を2/3補助へ 世帯向けの「住居確保給付金」も対象を拡充
- 中小企業生産性革命推進事業 事業別ガイドラインなどに基づいて中小企業が行う、事業再開に向けた消毒設備や換気設備などの設置を支援
- 中小・小規模事業者向け経営相談体制強化事業 各市町村へ専門家を派遣し、中小・小規模事業者からの相談に対応する体制を強化。また、商工会・商工会議所の相談受付体制を強化
- 感染症対策関連物資生産設備援助事業 抗原検査機器やN95マスクなどのニーズが高い物資について、生産設備の整備・増強に係る費用を補助し、国内における供給の拡大を図る
- 失業等給付費の確保 雇用失業情勢の変化に対応するため、失業等給付費を確保する
- 新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金の抜本的拡充 医療提供体制の整備などについて、重点医療機関への支援、医療従事者などへの慰労金の支給などの新たなメニューを追加。介護・福祉分野の支援についても、新たに対象に追加する
与党の当初案(上の記事参照)では、「複数の店舗を借りている場合、この金額では焼け石に水だ」という批判がありました。それを考慮して、複数借りている事業者には、例外措置として、中堅・中小企業は100万円、個人事業主は50万円に、それぞれ上限が引き上げられました。
「持続化給付金」の拡充
売上が大幅に減少している中小企業や個人事業主などに最大200万円を給付する持続化給付金も、その原資として新たに約2兆円が計上されています。
持続化給付金について(今回の拡充前)
従来、「昨年に比べて売上が減った事業者」が対象でしたが、今年1月から3月末までに創業した場合でも、いずれかの月の売上が1月~3月の平均より50%以上減ったことを要件として、給付を受けられることになりました。
また、フリーランスのうち、収入を「雑所得」や「給与所得」として確定申告していた人(つまり「事業所得」でなかった場合)でも、申請可能となりました。源泉徴収票や支払調書など、支払いを証明できる書類を提出し、要件を満たした場合には、給付対象です。
「大型」の資金繰り対策も
予算案で最も多くのお金を振り向けているのが、資金繰り対策です。具体的には、以下のような施策が実行される予定です。
①日本政策金融公庫などによる実質無利子融資の継続・拡充(中小・小規模事業者向け)
日本政策金融公庫や商工組合中央金庫(「危機対応融資」)などが「新型コロナウイルス感染症特別貸付」などを継続し、さらに貸付上限額と利下げ限度額の引き上げを実施
②民間金融機関を通じた実質無利子融資の継続・拡充(同)
都道府県などによる制度融資を活用した民間金融機関の実質無利子融資を継続し、さらに融資上限額の引き上げを実施
③資本性資金供給・資本増強支援(同)
長期一括償還の資本性劣後ローン(返済順位が低い融資)を供給するとともに、中小機構出資の官民連携のファンドによる出資や債権買取などを実施
④危機対応融資及び資本性劣後ローン(中堅・大企業向け)
長期・低利の融資を実施するとともに、財務基盤が悪化している事業者に対して、資本性劣後ローンを供給
事業再開支援なども盛り込まれている
このほか、第2次補正予算案に示された事業者向けの主な施策を上げておきます。
まとめ
この第2次補正予算案は、今のところ6月8日に国会に提出され、12日までには成立の見通しとなっています。自らが「使える」制度がないか、あらためてチェックしたうえで、常に最新の情報に注意するようにしてください。
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