2025年問題とは?影響や対応策などを紹介

[取材/文責]マネーイズム編集部

2025年には、日本の社会や経済に大きな影響を与える「2025年問題」が本格化します。大量の退職者や労働力の不足、さらには事業承継への対応など、数多くの企業が直面するリスクが迫っている状況です。

とはいえ、必要な対策を早めに把握するとともに、戦略を打ち出せれば、新たな成長のチャンスをつかみ取ることも十分に可能でしょう。この記事では、2025年問題の概要と企業の具体的な影響、さらに対応策まで解説していきます。

2025年問題とは?社会・経済に与える影響

2025年問題とは、団塊の世代が75歳以上となり、社会全体の高齢者人口が増加することで労働力人口が不足する社会的な課題のことです。医療や介護にかかる社会保険費が増える一方で、現役世代が支える負担も増えるため、企業における保険料負担だけでなく、日本の財政にも影響が及ぶ可能性があります。

例えば、地方の中小企業では後継者の不在や人手不足が深刻化するなど、地域経済の活力が低下するリスクも出てくるでしょう。さらに、人口構造の変化は、ビジネス環境に直接影響を及ぼし、雇用の確保やサービスの品質を維持することも難しい状況です。

これからの超高齢化社会を乗り切るためにも、安心して暮らせる社会づくりと、経済の活性化を同時に進める必要があります。
 

団塊世代の大量退職と労働力不足の深刻化

団塊の世代は、これまで現場を支えてきた熟練の人材です。仮に、退職に至る可能性が高まると、長年培ってきた技術やノウハウが組織から一気に失われる可能性が高まります。さらに現場での負担が増加するだけでなく、サービスの品質維持も難しくなるでしょう。

また、若年層の採用競争が激化すると、中小企業や地域企業ほど優秀な人材を確保しにくく、企業の経営にも支障をきたしかねません。対策するためには、シニア人材の再雇用によるノウハウの継承や、多様な働き方による若年層に響くような施策が重要です。さらには業務の自動化やIT化を進めることで、限られた人材でも効率的に運営できる体制を整えることが求められます。
 

医療・介護費の増大が企業経営に及ぼす影響

後期高齢者が増加すると、医療や介護施設を利用する人数も増える見込みです。そのため、企業の社会保障費が増加し、収益を圧迫する要因にもなりかねません。また、後期高齢者の医療費は一部の負担があるとはいえ、残りは社会全体で支えるため、現役世代への負担が増えます。

他にも、診療報酬が見直された場合は、病院経営が難しくなり、閉鎖リスクが高まるなどの問題に直面します。さらに、後期高齢者の増加によって、病院や介護施設の利用者も増えますが、一方で人材不足によって質の高いサービスが提供できなくなるでしょう。

2025年問題が企業に与える具体的なリスク

2025年問題が本格化すると、企業にとってはリスクが拡大することとなります。人口構造が変化することによって、企業そのものが成長する機会の損失につながるなど、経営環境が厳しくなる要因も増えるでしょう。

さらに、経営層が高齢化すると後継者が不足する問題への対応、技術を承継する人材が不在となるなどもあります。そこで、企業の具体的なリスクとして、経営者の高齢化と事業承継問題、さらには人手不足による生産性の低下を把握することが重要です。
 

経営者の高齢化と事業承継問題

地方や中小企業を中心に、経営者の高齢化は深刻な問題と言えるでしょう。後継者が不在であることを理由に、廃業を迫られる企業も増加している状況です。また、人員の問題だけでなく、税負担や手続きの煩雑さを敬遠して準備が進まないという場合もあります。

課題を解決するためにも、事業承継の計画を具体化し、親族内の承継以外にM&Aや外部の専門家に頼ることで選択肢を増やすことが大切です。さらに、国や自治体の補助金や助成金、税制優遇も積極的に活用することで、ハードルを下げられるでしょう。
 

人手不足による生産性の低下と競争力の低下

企業は、少子高齢化によって生産性が低下するとともに、競争力が損なわれる可能性も高まります。特に、現場で働くスタッフの確保が難しい業種では、一部の従業員へ業務負担が集中し、過労による離職率の上昇につながりかねません。

また、人材不足が長期化すると、研究開発や新規プロジェクトへの人的なリソース確保ができにくく、伸ばしたい分野へ労力を割けないでしょう。さらには、人手不足を解消するために人件費が高騰し、企業の利益も低下する要因にもなります。

このような事態を回避するには、複数の採用チャネルを活用し、多様な人材の確保に努めるとともに、業務プロセスの見直しや自動化、アウトソーシングを活用していきましょう。

2025年問題への対応策:企業が今できること

2025年問題を乗り越えるには、団塊世代の退職について対策するだけでは不十分と言えます。様々な視点での組織体制づくりや、事業構造の見直しを行わなければ、今後の市場変化には柔軟に対応できないためです。

また、限られたリソースを効率的に活用することが大きな鍵にもなるでしょう。ここでは、早期の事業承継問題やデジタル化の推進について、企業が取り組むべきポイントを解説します。
 

事業承継計画の早期策定とM&Aの活用

高齢となった経営者が引退を見据える場合は、後継者探しが重要です。また、廃業を防ぐためにはあらかじめ事業承継の計画を立てておくことをおすすめします。経営者が引退する直前に後継者選びを始めても、企業価値の算定や株式の移転、従業員への周知など、数多くの課題を解決するには時間を要するためです。

早い段階で事業承継の計画を策定し、自社の強みや課題を客観的に洗い出すことで、実現性の高い事業承継を目指しましょう。なお、親族内での承継が難しい場合はM&Aによる選択肢も検討することが大切です。

第三者に引き継ぐことで、新たな販路拡大のチャンスも生まれるだけでなく、従業員や取引先へのメリットも得られます。ただし、事業承継やM&Aは専門的な知識も必要であり、計画的に進めるためにも専門機関へ相談しましょう。
 

デジタル化・DX推進による業務効率化

人手不足が避けられない時代では、デジタル技術を活用して業務効率を高めておきましょう。RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)による定例的な作業の自動化、AIを使用した需要の予測によって、人材難を解消していかなければならないためです。

デジタル技術を導入することで社員が付加価値の高い業務に集中できるだけでなく、少人数でも高い生産性を維持しやすくなるなどのメリットがあります。テレワーク環境の整備やオンライン会議の活用は、介護や育児と仕事の両立を可能にする手段としても有効です。デジタル化を進めると、新製品や新サービスの開発も可能となるため、積極的に活用していきましょう。

2025年問題と労働環境の変化:人材確保のための対策

労働力が不足する環境では、従業員の確保は当然ながら、潜在的な労働人口を幅広く取り込むことが必要です。シニア層の雇用や外国人労働者の積極採用など、多様な人材を確保することで労働力の不足を補えます。これまで活用してこなかった人材に活躍の場を提供することで、新たな視点やスキルを取り入れる機会が生まれるでしょう。

さらに、柔軟な働き方を認める制度や福利厚生の充実度が高められると、従業員のモチベーション向上にもつながります。従業員がそれぞれの事情に合わせた柔軟な働き方や、労働環境を構築できれば、優秀な人材の確保も可能となり、変化にも対応できる組織を作ることも可能です。
 

働き方改革とシニア雇用の活用

働き方改革によって、従業員がそれぞれ能力を発揮しやすい環境を整えるとともに、ライフステージの異なる従業員が共存しても働きやすい仕組みを構築することが大切です。特に、長年働いてきたシニア層は豊富な知識や人脈があるため、若手を指導しながら業務を円滑に進められるでしょう。

また、再雇用制度や役割・給与体系を再設計することによって、モチベーションの保ちやすい職場づくりも進められ、大量退職によるノウハウの流出リスクも下げられます。なお、新しい制度を導入する際は、社内コミュニケーションや評価基準の変化が伴うため、段階的に周知しながら運用を始めることが重要です。
 

外国人労働者の受け入れと多様な働き方の推進

日本国内だけでは労働力が不足するため、外国人労働者の採用を検討しておきましょう。介護や外食、建設など慢性的な人材不足に悩まされる業種では、即戦力として活躍できる場もあるからです。来日している外国人労働者の多いフィリピンやベトナムでは、日本と比較すると給与水準が低いため、高収入を得られる日本に魅力を感じている人もいます。

とはいえ、文化の違いや言語の壁を乗り越える必要性は高く、受け入れ企業側のサポートがなければ成り立ちません。職場内での日本語教育や多文化で交流を図るための研修プログラムの実施など、継続的なサポートを提供することで、外国人労働者の離職率を下げるように努めましょう。

2025年問題と企業の成長戦略

2025年問題は、企業にとって試練が多いものの、新たな市場を生み出すチャンスとも言えます。医療や介護、シニア向けビジネスなどでは、社会ニーズの急拡大が見込まれるため、ニーズを的確につかめれば競合他社との差別化が十分に図れるでしょう。

また、成長戦略を立てる際には、補助金や助成金を活用することで、経営基盤が強化されやすいため、積極的な活用が大切です。ここでは、公的支援制度の有効活用や、持続可能な経営モデルを構築するための市場開拓ポイントを解説していきます。
 

補助金・助成金の活用で経営基盤を強化

新たな設備投資や人材育成など、まとまった資金が必要となる場合は、手元資金だけでは不足が生じやすくなります。少子高齢化が進む中で、国や自治体は事業承継やDXの推進、人材育成など多くの領域で提供している支援制度の活用が重要です。

例えば、IT導入補助金、キャリアアップ助成金などが代表的な例として挙げられますが、活用することで経営改革を進められます。従業員教育や職場環境整備を支援する制度もあり、社内研修は資格取得支援のプログラムにも活用ができることから、積極的に活用することが重要です。

ただし、応募期間や要件が細かく定められているため、常に最新情報をチェックしましょう。場合によっては、専門家のアドバイスを受けることもおすすめします。
 

持続可能な経営モデルの構築と市場開拓

2025年問題を解決するためにも「持続可能な経営」にシフトしなければなりません。ただし、地域によって大きく異なるため、地域特性を考慮したビジネスモデルを構築することが重要です。例えば、都市部では高齢者が在宅で快適に暮らせるためのサービスや、健康増進、予防医療関連ビジネスなどが考えられます。

一方、過疎化が進む地域は、オンライン診療や移動販売などのニーズが高いでしょう。地域では地方自治体や地元企業との連携を強化し、地域全体の活性化につながるための施策を打ち出すことで、持続可能なビジネスモデルを構築していく必要があります。

まとめ

2025年問題は企業にとって非常に大きな問題です。団塊世代の退職や医療・介護費が増大する一方で、労働力人口が足りないという深刻な問題によって、企業のみならず財政にも支障をきたす可能性があります。

解決策としては、シニア雇用や外国人労働者の積極的な受け入れによる人材確保や、事業承継やデジタル化による業務の効率化などをいち早く取り入れることです。また、経営基盤を安定させるためには、補助金・助成金を活用することで、企業の経営負担を軽減させられます。

適切な対策を講じることで、企業が新たなビジネスチャンスを生み出すきっかけにもなるため、少しでも早く準備を進めておきましょう。

中小企業経営者や個人事業主が抱える資産運用や相続、税務、労務、投資、保険、年金などの多岐にわたる課題に応えるため、マネーイズム編集部では実務に直結した具体的な解決策を提示する信頼性の高い情報を発信しています。

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