2020年分所得税の確定申告等⇒4月15日まで期限延長!納税猶予の特例は「個別対応」に

[取材/文責]マネーイズム編集部

新型コロナウイルス感染症の影響が長引く中、所得税、個人事業主の消費税、さらに贈与税の申告・納付期限が、2021年4月15日まで延長されています。併せて、所得税、消費税の振替納税の振替日も延長されました。一方、期間延長も議論に上っていた、コロナで打撃を受けた個人や法人を対象に1年間納税を猶予する「特例制度」は、その後どうなったのでしょうか? コロナ禍中の納税について、あらためて整理しました。

首都圏などへの緊急事態宣言に対応

確定申告期限延長の理由について国税庁は、発表資料で「新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言の期間が令和2年分所得税の確定申告期間(令和3年2月16日~3月15日)と重なることを踏まえ、十分な申告期間を確保して確定申告会場の混雑回避の徹底を図る」ため、と説明しています。

 

申告・納税期限の延長は、緊急事態宣言の発令されていない地域も含めた全国一律の措置で、以下のようになっています。

 

  • 申告所得税(当初3月15日)→4月15日(木)
  • 個人事業主の消費税(同3月31日)→4月15日(木)
  • 贈与税(同3月15日)→4月15日(木)

 

同時に国税庁は、通常の申告期限以降については、「会場によっては相談スペースの確保に制約が生じることも予想されます」と注意喚起しています。税務署の窓口での申告を考えている場合には、特に早めに行動するようにしましょう。

 

なお、これらの期限延長は、あくまでも「申告会場の混雑回避」を目的としたものです。国税庁は、「法人税や相続税といったその他の税目については、確定申告会場との関わりがないため、一律での期限延長の対象とはなりません」としています。

振替期日も延長された。その注意点とは?

所得税や消費税の納付には、送られてくる納付書に現金を添えて金融機関や税務署窓口、コンビニなどで直接支払う方法や「電子納付」などのほかに、決められた振替日に自分の口座から自動的に納税額が引き落とされる「振替納税」があります。この振替納税には、税金の納付のために毎回足を運んだりする必要がなく手間いらずということに加えて、「納付期限を先に延ばせる」というメリットがあります。

 

所得税に関して言えば、確定申告の期限は通常3月15日で、納税もそれまでに行わなくてはなりません。しかし、振替納税にしておけば、納税(=口座引き落とし)は、そのおよそ1ヵ月先になるのです。ちなみに今年の当初予定では、振替日は4月19日でした。確定申告の作業を進めるうちに、納税額が想定外に膨らんでいることがわかった、といったことは珍しくありませんから、この1ヵ月の「余裕」はバカにできません。

 

前置きが長くなりましたが、今年は、この振替納税の振替日についても、以下の通り延長されました。

 

  • 申告所得税(当初4月19日)→5月31日(月)
  • 個人事業主の消費税(同4月23日)→5月24日(月)

 

手間いらずで便利な振替納税ですが、それ故に注意すべき点もあります。万が一、引き落とし期日に口座が残高不足で振替ができなかった場合には、あらためて金融機関や税務署の窓口に出向いて納付する必要が生じるのです。しかも、本税(本来の税金)に加えて、振替日の翌日から加算される延滞税(21年中は、2ヵ月以内は年2.5%、それを過ぎると年8.8%)を合わせて支払わなくてはなりません。

 

申告から納付までの“タイムラグ”は、ありがたい半面、「うっかり」の原因にもなりえます。特に今年は、振替日が例年からさらに先延ばしされることになりますから、納税額と合わせて再確認した上で、口座に十分資金を用意しておくようにしましょう。

延納の期限は変わらない

ここまで説明してきたのは、新型コロナに伴って国税庁が決定した税の申告・納付期限の延長ですが、所得税には納税者が申請する「延納制度」が設けられています。「確定申告時に延納手続きを行い、半分以上の税額を納期限までに納めれば、残りの税額は通常5月31日まで納付期限を延ばすことができる」という制度で、この場合、納付を先延ばしした税額には、年1%の利子税がかかってきます。

 

この納付期限については、今年も延長されることはありません。現金で納付する場合には、4月19日までに半分以上の金額を納め、残りは5月31日までに納める必要があります。

 

ただし、振替納税を選択している人が延納の手続きをした場合は、扱いが違ってきます。さきほど説明したように、今年は所得税の振替日自体が、延納の納付期限と同じ5月31日まで延びました。このため、「確定申告書に延納届出額を記載した場合であっても、確定申告に基づき納付いただく税額の全額を一括して振替納税による口座引落しを行う」(国税庁)ことになったのです。

 

つまり、延納の手続きの有無に関わらず、所得税の全額が5月31日に引き落とされるわけです。やはり、口座の残高には注意を払う必要があるかもしれません。

「納税猶予の特例」は、原則申請打ち切り

一方、新型コロナの影響で大幅な収入減となるなど、一定の要件を満たす事業者に対して、「2020年2月1日から21年1月31日までに納期限が到来する所得税、法人税、消費税などほぼすべての税目」の納税を猶予する特例制度は、当初の予定通り申請が締め切られました。税制改正の議論では、厳しい経済環境の中、さらに1年間の期間延長などを求める声もありましたが、支援は無利子・無担保融資で対応すべきという意見が多く、結局見送られたそうです。

 

ただ、報道によれば、緊急事態宣言の再発令による事務作業の遅れや、納税者自身のコロナ感染など特別な事情がある場合に限り、引き続き特例の申請を受け付けるということです。ハードルは高そうですが、納税に無理を感じる場合には、税務署や税理士に早めに相談してみることをお勧めします。

 

国税庁によると、今年1月末までにこの特例(既存の納税猶予制度は除く)をが認められたのは、約30万件で、税額は1兆3,863億円となっています。

まとめ

所得税、個人事業主の消費税、贈与税は、申告・納税期限が4月15日まで延長されています。振替納税を利用している場合には、いつもと違う振替日にも注意しましょう。

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