オリンピックのメダル報奨金高いのはどこの国?日本の水準は?

[取材/文責]マネーイズム編集部

新型コロナの影響で東京2020夏季五輪が1年延期されたために、2021年(東京オリンピック・パラリンピック)、2022年(北京冬季オリンピック・パラリンピック)と2年連続の“五輪イヤー”が盛り上がりました。ところで気になるのが、メダルを獲得した選手に支給される報奨金。国の名誉でもあるメダリストに各国はいくらぐらいの「ご褒美」を用意しているのか、まとめてみました。

日本人メダリストへの報奨金は?

五輪の金メダルは500万円

最初に日本のメダル報奨金から見てみましょう。スポーツ庁のホームページ(オリンピック・パラリンピック競技大会の報奨金では、以下のように説明されています。

オリンピック競技大会、パラリンピック競技大会のメダリストに対しては、日本オリンピック委員会(JOC)、日本障がい者スポーツ協会(JPSA)から、報奨金が支給されています。
【オリンピック競技大会】(JOCから支給)
金:500万円 ※2016年リオ大会より、300万円から引上げ
銀:200万円
銅:100万円
【パラリンピック競技大会】(JPSAから支給)
金:300万円
銀:200万円
銅:100万円

 

世界の頂点に立つ金メダルで500万円というのは、数千万円の年棒が珍しくないプロ野球のスター選手などと比較すると、給料と報奨金の違いはあるとしても、少額な印象も受けます。ただこれは国レベルで支給されるもので、選手が所属する競技団体から別に報奨金をもらえる場合もあります。

競技団体の報奨金には差がある

報道によれば、東京オリンピックの卓球で金(混合ダブルス)、銀(女子団体)、銅(女子シングルス)のメダルを取った伊藤美誠選手が手にした報奨金の総額は、1,800万円だそうです。JOCからの支給額を上回る分は、日本卓球協会からの報奨金ということになります。

 

ただし、競技団体の報奨金は一律ではなく、オリンピックの場合、日本卓球協会は金メダルならばシングルスで1,000万円/ダブルスは1人500万円/団体で1人400万円なのに対して、日本体操協会は金で50万円/銀が30万円/銅は20万円と桁が違います。

 

また、東京大会で女子が史上初の銀メダルを取った日本バスケットボール協会は、金で500万円/銀で300万円/銅が100万円。野球は、日本野球機構などが出資するNPBエンタープライズから、監督・選手にJOCと同程度の報奨金が支給されます。

 

一方で、報奨金ゼロの競技団体も数多くあります。意外なことに、日本水泳連盟と全日本柔道連盟には報奨金の制度がありません。こうした“格差”の結果、東京オリンピックで2個の金メダルを取った競泳の大橋悠依選手、金メダル2個と銀メダル1個の体操の橋本大輝選手の報奨金は、総額で伊藤美誠選手に及びませんでした。

世界各国の報奨金は?

最高は金メダルおよそ8,500万円のシンガポール

では、世界各国の国レベルでの報奨金は、どうなっているのでしょうか?今年2月17日の『日テレNEWS』(オンライン)が、アメリカのニュース専門チャンネルCNBCの調査結果を基にした「メダリストへの報奨金比較」を報じました。

金メダル 銀メダル 銅メダル
シンガポール 約8480万 約4240万 約2120万
カザフスタン 約2880万 約1730万 約860万
マレーシア 約2710万 約820万 約280万
イタリア 約2450万 約1230万 約820万
ハンガリー 約1930万 約1450万 約1100万
ブラジル 約560万 約330万 約230万
アメリカ 約430万 約260万 約170万
オーストラリア 約10万 約130万 約80万
引用:北京五輪 メダリストの栄誉たたえる「報奨金」各国と比較して日本は?【日テレNEWS(2022年2月17日付)】

世界のベスト8を並べたものではありませんが、これを見ると、シンガポールがダントツの大盤振る舞いをしていることが一目瞭然です。選手の士気を高めてスポーツ振興を図ろうという意図が感じられますが、獲得するメダルの数は多くはない(結果として総支出はそう高額にはならない)という事情もあるのでしょう。

 

アメリカは、金メダルで430万円など日本とほぼ同水準でした。逆に言うと、日本は「アメリカ並み」で、世界の中で低いレベルに置かれているとは、一概には言えないでしょう。

総額を比べると?

これとは別に、『フォーブス』が、東京オリンピックでのメダル獲得の報奨金の総額について報じています。それによると、国別のベスト10は次の通りです。

 

  1. イタリア 907万ドル(約10億円):金10、銀10、銅20
  2. アメリカ 784万ドル:金39、銀41、銅33
  3. フランス 651万ドル:金10、銀12、銅11
  4. ハンガリー 564万ドル:金6、銀7、銅7
  5. 台湾(チャイニーズ台北) 492万ドル:金2、銀4、銅6
  6. 日本 403万ドル:金27、銀14、銅17
  7. スペイン 255万ドル:金3、銀8、銅6
  8. トルコ 226万ドル:金2、銀2、銅9
  9. セルビア 201万ドル:金3、銀1、銅5
  10. 香港 193万ドル:金1、銀2、銅3
引用:東京五輪メダル報奨金、総額100万ドル超支給は13カ国・地域【Forbs JAPAN(2021年8月11日付)】

なお、イギリス、ニュージーランド、ノルウェー、スウェーデンなど、報奨金ゼロの国も世界の中にはあります。

 

また、「総額のベスト10」といいましたが、これには中国が含まれていません。2008年の北京オリンピックで金メダリストに5万1,000ドルを支給したそうですが、その後は報奨金の額を公表していないためです。国から贈られる報奨金は最大で1,000万円程度(金メダル)ともいわれますが、東京大会ではアメリカに次ぐメダルを獲得しただけに、総額で上位にランクされるのは間違いありません。

メダルの報奨金には課税されるのか?

国、団体からの報奨金

再び日本の話に戻ると、これらの報奨金には税金がかかるのかどうかも興味のあるところです。答えは、「原則として課税されない」です。

 

さきほど説明したJOCやJPSAからの報奨金は、所得税・住民税が非課税となります。JOCやJPSAに加盟している競技団体から支払われる報奨金も同じ扱いです。ただし、競技団体の報奨金には、金メダルで500万円/銀メダルで200万円/銅メダルで100万円までという「非課税枠」があり、これを超えると超えた部分には課税されます。

企業などからの報奨金は?

実は、メダルの報奨金はこれ以外にもあります。選手が所属する企業やスポンサーから贈られるものです。東京オリンピックでは、フェンシングの男子エペ団体で金メダルに輝いた見延和靖選手に1億円の報奨金が支給されたことが話題になりましたが、これは所属企業ネクサスからのものでした。ちなみに、日本フェンシング協会にも報奨金規定はありません。

 

このように競技団体ではなく企業などから支給された報奨金については、先ほどと扱いが異なり、一時所得として課税対象になります。

まとめ

オリンピックのメダリストに贈られる報奨金の国別の金額などについてまとめました。金メダリストに500万円という日本の水準は、シンガポールの約8,500万円とは大きな開きがありますが、世界全体の中ではとりわけて低いというわけでもないようです。東京オリンピックはメダルラッシュとなったために、総額は4億円を超えました。

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