インボイス制度導入でエンタメ業界の2割が廃業する?

[取材/文責]マネーイズム編集部

2023年10月に導入されるインボイス制度に反対する声優やアニメーター、俳優、漫画家の各有志団体が16日、東京都内で合同記者会見を開き、導入後に廃業の恐れのある人が各業界とも2割に上るとのアンケート結果を公表しました。

そもそもインボイス制度とは

インボイス制度とは、取引内容や消費税率など、必要な情報を記載した請求書を発行し、保存しておくことを義務付ける制度のことを指します。

制度導入以降、消費税を納付する義務がある法人や個人事業主(課税事業者)は「適格請求書発行事業者」として必要な内容が記載された請求書の発行や保存をしなければならなくなります。

「適格請求書発行事業者」になるには、税務署へ事前に申請をして登録を受けなければなりません。そして、登録は消費税を納付する義務がある法人や個人事業主しか行えないため、課税売上高が1,000万円に満たない事業主や小規模事業者(免税事業者)は適格請求書発行事業者になることができないつまり制度に対応した請求書を発行できないということになります。

エンタメ業界からは制度に危機感を抱く声も

制度が導入されることで、課税事業者・免税事業者ともに影響があるものの、とりわけ大きな影響を受けるのが免税事業者とされています。

先述の通り、免税事業者は適格請求書を発行できないため、仕入税額控除が受けられません。また取引先が課税事業者の場合、消費税に当たる分の金額を値引きするように要求される可能性もあります。制度導入を機に、免税事業者から課税事業者になることも考えられますが、課税事業者になれば当然「消費税」を納めなければならなくなります。さらにいままで必要がなかった消費税の計算や申告、そして納税といった作業を行わなければなりません。

株式会社ワクワークが公表したアンケートによると、制度導入で「廃業を決めている」「廃業する可能性がある」などと答えたのは、声優で27%、アニメ業界で25%、漫画業界で21%、俳優ら演劇関係者で20%という結果が明らかになりました。アンケート回答者の年収を年代別で見てみると、20代の8割が年収300万円未満と、若手ほど低収入なことが分かります。インボイス制度により、業界を支えるフリーランス、特に収入の低い若手が廃業せざるを得なくなる可能性もあるとしています。

漫画家らの有志団体を結成した漫画家・由高れおんさんは「アシスタントの問題が特に深刻。収入が減れば、なり手がいなくなり、作品が減り、日本の漫画産業は衰退する。クールジャパンを守りたいなら一刻も早く延期、中止して」という意見や、コロナの影響が未だに尾を引く業界多方面から、「なぜ、今インボイスなのか?」という声も挙がっているそうです。

関連記事:会社設立や法人化するならインボイスの導入前と導入後のどちらが良い?

まとめ

エンタメ業界に限らず、他業界にも影響が出るインボイス制度。制度導入後も免税事業者のままでいることは可能のようですが、メリットデメリットをよく考え制度導入までにしっかりと準備しましょう。

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