迫る物流業界の「2024年問題」慢性化するドライバー不足に政府が緊急対策を検討
EC通販の拡大などで宅配需要が高まるなか、懸念される輸送量の減少について、3月27日に行われた参院予算委員会で、政府は「物流の2024年問題」に対して、緊急対策を取りまとめることを明らかにしました。
物流業界では2024年4月に改正労働基準法が施行され、トラックドライバーの拘束時間が現状の1日最大16時間以内から15時間以内に制限されます。労働環境が改善される一方で、1人が運べる荷物の量が減るほか、運送事業者の売り上げの減少、ドライバーの収入減などにより輸送量が減ることが懸念されています。
※記事の内容は2023年4月19日時点の情報を元に作成したものであり、現在の内容と異なる場合があります。
物流の2024年問題とは
2024年問題とは、働き方改革関連法により2024年4月1日以降、自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間(月80時間)に制限されることによって発生する問題を指します。
出典:「労働関係法令が改正されました」【公益社団法人 全日本トラック協会】
これまでトラックドライバーの労働環境は、長時間労働の慢性化という課題を抱えていました。
2024年の法施行では、自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限を設定することでトラックドライバーの労働環境を良くしようという狙いがあるそうです。
一見、物流業界がホワイト化する良いきっかけとなるように思われますが、この法施行によって大きく2つの問題が生じます。
1.運送・物流業者の売上、利益が減少
規制で1日に運べる荷物の量が減るため、運賃を上げなければ必然的に収入が減少します。
しかし、運賃を上げることは容易ではなく、約6万社を超える運送業者の過当競争の中、荷主企業はより運賃の安い業者へ依頼するため、運送業者が荷主と価格交渉しにくい現状があります。また、中小企業で月60時間以上の時間外労働が発生した場合には、2023年4月の法施行により割増賃金率が25%から50%へ引き上げられることから人件費が増加し、利益の減少に繋がるとされています。
割増賃金率の引き上げについては、2010年に労働基準法が改正され、月に60時間を超える時間外労働に大企業は50%、中小企業は25%の割増賃金率が課せられていました。ただし、このときには事業者に大きな影響を与えかねないとし、時間外労働に対する割増賃金率の引き上げ適用は、大企業のみでした。猶予期間が設けられていた中小企業ですが、2018年の労働基準法改正により、猶予措置が廃止されることが決定し、2023年4月からは中小企業も、月60時間以上の割増賃金率が50%に統一されます。
2.労働時間の減少に伴い、ドライバーの収入が減少
トラックドライバーは走行距離に応じて運行手当が支給されるため、本来であれ ば走れば走るほど収入が増えますが、労働時間の規制により走れる距離が短くなれば収入が減少してしまいます。収入が低いとなれば離職に繋がる可能性もあり、労働力不足に拍車がかかる恐れもあります。
これらの問題は「2024年問題」と呼ばれ、これまで当たり前に届いていた荷物が遅延してしまう、届ける手段がなくなるなど大きな影響が出かねないことから対策が急務となっています。
今後は物流のデジタル化、モーダルシフトへ転換か
3月27日に行われた参院予算委員会で、岸田首相は、「物流の停滞が懸念されている2024年問題の解決に向けて政府として迅速に対応するとしたうえで、政府として適正な取引を阻害する取引是正や物流デジタル化、モーダルシフト(トラックから鉄道・船舶利用への転換)など輸送の効率化に取り組む」と述べました。
燃料費高騰などのコスト増も重なり、物流業界の経営環境は厳しさを増しているそうです。特に危惧されているのはトラック輸送の下請けを担う数多くの中小企業へのしわ寄せです。日本の場合、トラック運送事業者の99%超を中小が占めているそうで、郵送の効率化が中小の運転手の待遇改善に繋がるかが物流課題解決への焦点となりそうです。
今後も引き続き、動向が注目される運送業界ですが、オンラインマガジン「トラッカーズマガジン」は運送業界の専門マガジンとして、日々、最新情報が更新されています。気になる方は参考にしてみてはいかがでしょうか?
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