富裕層の節税術“タックスヘイブン”にメス資産家一族に追徴課税額約18億円

[取材/文責]マネーイズム編集部

兵庫県神戸市内の高級住宅地に住む不動産関連会社経営の50代の男性と台湾に住む親族ら資産家一族が大阪国税局の税務調査を受け、2015年から2020年までの5年間で合計で約52億円の申告漏れを指摘されていたことが明らかになりました。
50代の男性は、法人税率の低いタックスヘイブン(租税回避地)に設立された会社で多額の資産を管理し、運用益を過少に申告するなどしていたようです。

タックスヘイブンとは?

タックスヘイブン(Tax Haven)とは、法人税や所得税などの税率がゼロか極めて低い国や地域のことで、日本語では「租税回避地」「低課税地域」と訳されています。それらの国々では、海外企業や富裕層のマネーを「誘致」するために、戦略的にそうした税の優遇措置を設けているようです。

具体的には、

  • 無税:バハマ、バミューダ、バーレーン、ケイマン諸島、マーシャル諸島など
  • 特定の会社や事業活動に限り優遇:オランダ、イギリス、ルクセンブルク、リヒテンシュタイン、アイルランドなど
  • 国外で生じた所得が非課税:パナマ、マレーシア、コスタリカなど
  • 法人税が低率:香港、マカオ、台湾、シンガポール、アイルランド、キプロス、モンテネグロなど

といった地域が該当します。

上記に記載した地域では、自分の国で課税される高率の法人税や所得税、相続税、贈与税などの負担が大幅に軽減されるため、多国籍企業が拠点を置いたり、富裕層が資産を移したりといった形で、節税対策に活用されることになります。

相続税対策としてのタックスヘイブンの利用

このタックスヘイブンは、企業だけでなく、富裕層の相続税、贈与税の節税策としても使われています。日本では高い税率(それぞれ最高で55%)を覚悟しなくてはならないため、高額の資産を持つ場合には、それをタックスヘイブンに移した上で子どもなどに渡すメリットには、大きなものがあります。

利用の仕方には、大きく2つあります。

  • 10年以上海外で暮らす
  • 海外の会社を経由して贈与を行う

 

節税のためとはいえ、「親子で海外に10年住む」というのは、現実的にはかなりハードルの高い話ということもあり、相続税対策でタックスヘイブンを利用する場合は、後者のパターンが多いようです。
タックスヘイブンについては、「サンリオに13億円の追徴課税 適用された「タックスヘイブン対策税制」とは?」をご覧ください。

台湾にある上場企業の株式を相続

冒頭の内容に話を戻すと、50代の男性と台湾に住む親族らは、別の親族が亡くなった際に、台湾にある上場企業の株式を相続。その後、株式などを含む資産を、亡くなった親族が生前にタックスヘイブン(租税回避地)に設立していた資金管理会社へと移し、そこから男性らは配当金などを受け取っていたとされています。さらに税務申告などを怠っていたとともに、男性が台湾に住む親族に資産を贈与したにも関わらず、親族が税務申告をしていなかったことも判明したそうです。

1億円以上の有価証券を持つ国内居住者が国外の親族などに贈与する場合、含み益などに所得税や贈与税が課される「国外転出時課税制度」が適用されますが、男性らはいずれも申告をしていなかったとしています。
「国外転出時課税制度」は、株式の売却益に税金がかからないタックスヘイブンなどを通じた税逃れを防ぐ目的で2015年に導入され、今回はこのルールが適用されたとみられています。
過少申告加算税を含む追徴課税額は合計で約18億円で、既に全額が納付されているようです。

YouTubeで「タックスヘイブン」について解説中!

<サンリオ・ハローキティ vs 東京国税局>タックスヘイブンとは?【3分かんたん確定申告・税金チャンネル】

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