また不正発覚…!ビッグモーター福井県内の店舗で自動車保険の虚偽契約か

[取材/文責]マネーイズム編集部

「車を売るならビッグモーター」のCMで知られる、中古車販売大手・ビッグモーターによる保険金不正請求の横行で、7月25日に創業者の兼重宏行社長らが会見、辞任を表明しました。顧客から預かった車を故意に傷つけて修理代を水増し、損害保険会社に保険金を不正請求していたというのは、サービスの信頼が根底から崩壊する大問題へと発展しています。連日次々と疑惑が噴出し、依然として世間から厳しい視線が向けられている中、同社が保険代理店としての立場を悪用し、虚偽の自動車保険契約を結んでいた疑いがあることが新たに分かりました。

ビッグモーターの業務停止命令に迫る可能性も

ビッグモーターは、1978年に設立された中古車販売大手で全国に約300店舗以上を展開し、年間約15万台の中古車を販売しています。ビッグモーターの業績は好調で、売上高約7000億円、従業員数約6000名を有し、中古車の売買、車検、整備、修理まで、ワンストップで行えることを売りに全国に店舗を拡大していきました。帝国データバンクの情報によると、2017年度が1738億円で直近では5200億円となっており、わずか5年で、3倍近い急成長を遂げています。しかしその裏では、保険金の不正請求が行われていたようです。

ビッグモーターの複数の関係者によると、水増し請求が表面化したのは2022年3月頃のこと。損保の業界団体にビッグモーターの従業員から「上長の指示で過剰な自動車の修理をし、その費用を保険会社に請求している」という旨の内部通報があったことがきっかけのようです。
内部通報を受けて、ビッグモーターと取引のある損害保険ジャパン、東京海上日動火災保険、三井住友海上火災保険の3社は2022年2月以降、修理費の請求書類を各社それぞれ数百件抽出してサンプル調査を実施。すると、全国に33ある整備工場のうち25の工場で、水増し請求が疑われる案件が合計80件超見つかったそうです。

不正請求を巡り、同社は外部の弁護士らによる調査委員会を設置。調査報告書によると、2018年ごろから板金や塗装部門の元本部長が、修理の工賃や部品から得る粗利の合計金額を上げるよう、各工場長に要求。工場長や複数の従業員がそれに従い、「サンドペーパー(やすり)で車の側面にすり傷と見せかける傷」「ゴルフボールを靴下に入れて車体を叩く」など故意に車を傷つけて、修理代を水増し請求する不正行為に加担していたといいます。元本部長は行為を認めており、強要した理由として“アット”と呼ばれる「営業ノルマ」の存在があったといいます。“アット”とは、修理車両1台当たりの工賃と部品の粗利の合計金額のことを指します。具体的な不正行為としては、不必要な部品交換をしたり、塗装の品質を実際より高く偽ったりしたなどの悪質なケースも発覚。そもそも車の修理費用は損傷の程度によって決まるものですが、同社で設定されていたノルマは、1台、約14万円。仮にドアを修理した場合、車種によりますが、擦り傷の場合は4万円、ドアにへこみなどの損傷があった場合は6万円が平均的な金額となる場合が多いため、かなり水増し感があります。報告書には不正の背景として、修理を担う現場に無理な目標を押しつけていたことなど不適切な組織運営が指摘。「コンプライアンス(法令順守)意識の鈍麻」や「経営陣にそんたくするいびつな企業風土」といった厳しい批判も盛り込まれたとしている。

そして7月30日に新たに発覚したのが、福井県内の店舗で、虚偽の自動車保険契約を複数結んでいた疑惑。関係者の話によると、個人が所有していない車両を対象とした保険契約が、2022年に福井県の店舗で複数件確認され、捏造に当たると判断されたようです。

虚偽契約の詳しい手口は明らかになっていないものの、対象車両は車検証がある展示車両などが該当するのではないかとされており、現時点では契約者自体が存在しない人物だったとの情報は確認されていません。店舗に対して契約件数や手数料収入のノルマが課されていたかどうかは分かっていないものの、従業員が保険料を自己負担していたとみられ、契約件数の積み上げを狙った可能性があるとしています。

ビッグモーターは、保険代理店として、自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)契約のほか、任意保険の販売などを行っており、保険の契約件数に応じ、ビッグモーターは損保会社から販売手数料を得ています。

金融庁は、7月31日にビッグモーターと損保ジャパン、三井住友海上火災保険や東京海上日動火災保険など損保会社計7社に対して報告徴求命令を出しました。ビッグモーターに対しては、保険代理店としての運営状況などについて調査。損保7社については、代理店として同社に自動車保険の販売を委託していることから、取引状況や契約者保護の観点で問題がなかったか調べを進めるとしています。関東財務局も既にビッグモーター社役員を呼んで任意聴取を行い、問題が認められれば業務改善命令などの処分を出すとし、一定期間の業務停止や保険代理店の登録取り消しといった厳しい措置に踏み切る可能性もあるようです。

ビッグモーターを巡っては、7月28日に損保ジャパンが保険代理店契約を解除すると発表、三井住友海上と東京海上も契約解除を検討しています。

全国で横行していた自動車保険金の修理代水増し請求に続き、虚偽契約という保険業法違反の恐れがある不正が新たに判明し、業界に激震が走っています。

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