ソフトバンク傘下のArmがナスダック上場で株価25%上昇、時価総額は約9兆5900億円に

[取材/文責]鈴木林太郎

イギリスの半導体開発企業「Arm(アーム)」が9月14日に米証券取引所ナスダックに上場しました。この上場によって、Armの時価総額は約9兆5900億円にのぼり、2023年最大規模の上場となりました。

Arm上場、AI市場拡大期待で投資家の注目を集める

米証券取引所ナスダックに上場したArmは、63.59ドルで初日の取引を終えました。
株式の売り出し価格51ドルから25%上昇し、企業の時価総額は652億ドル(約9兆5900億円)に達しました。この価格上昇は、人工知能(AI)関連の需要が拡大しているという期待から、多くの投資家による買いを引き寄せました。

そもそもArmはイギリスを拠点とする半導体企業です。

スマートフォン、タブレット端末、そしてIoTデバイスなど、広範なデバイスに使用されるプロセッサー技術の開発で知られています。

このプロセッサーとは、スマートフォンやタブレットなどのデバイスにおいて、中央演算処理装置(CPU)として機能し、Armの特徴的な技術には、高いエネルギー効率と容易な小型化が挙げられます。

現に、Armのプロセッサー技術は、市場において高い評価を受けており、多くの有名企業がArmの製品を利用しています。たとえば、米国のアップルは「iPhone」と「iPad」、韓国のサムスン電子は「Galaxy」、日本企業のソニーも「Xperia」において、Armのプロセッサーを使用しています。スマートフォンやディスクドライブのプロセッサー市場において、Armの製品は独占的な地位を占めています。

今回ナスダックに上場した背景には、2016年にソフトバンクグループがArmを3兆円を超える金額で買収したあと、アメリカの主要な半導体企業であるエヌビディアにArmを約4兆円で売却する計画が持ち上がりましたが、欧米の規制当局はこの取引が市場競争を阻害する可能性があると指摘し、2022年2月にこの売却計画が中止となったことが上場の発端です。

ソフトバンクグループは、Armの株式を上場させることで、株式を担保に資金調達を行いやすくする戦略を採用しており、今回売り出された株式は、ソフトバンクグループが保有する株式全体の1割で、アップルやエヌビディアなどが出資する方針です。

ソフトバンクグループは、これまで主要な投資プロジェクトに巨額の資金を注ぎ込んできましたが、その資金調達は通常、投資先の企業の株式を担保にする形で行ってきました。

今後は、AI(人工知能)などの急成長産業への投資を強化する方針のようです。

Armの上場に伴い、ソフトバンクグループの株価は東京株式市場で15日に一時5.1%上昇し、6914円まで上昇しました。この株価の上昇率は、2023年6月14日以来の高い日中上昇率を示しています。

ソフトバンクグループにとっては、Armの事業成長を促進し、株式の価値を向上させることが今後の重要な課題となります。

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