ネット証券業界の地殻変動:SBI証券と楽天証券、日本株取引手数料ゼロ化で競争激化
ネット証券業界の2大巨頭であるSBI証券と楽天証券が、9月30日以降、日本株の取引手数料を無料にすると発表しました。SBIは4年前から手数料ゼロ化の計画を進めており、楽天もこれに追随する形となりました。この決定まで両者の駆け引きが続き、公正取引委員会が介入する事態となりましたが、調査の結果、手数料の無料化が許可されました。
公正取引委員会が了承、証券業界再編の幕開け
SBI証券と楽天証券の手数料無料化に対する公正取引員会の調査は、今年の春ごろに始まったといわれています。調査のきっかけは証券会社からの通報で、通常、顧客から日本株の注文があった場合、証券会社は取引参加者として東証に手数料を支払いますが、これを全て証券会社が負担することで、他の事業者の活動が難しくなる不当廉売※の疑いが浮上しました。
しかし、公正取引委員会は手数料の無料化によって、他の事業者に対する不当な競争を引き起こすものではないと判断したようです。
なぜなら証券会社は、投資信託、外国株、債券など幅広い金融商品を提供しており、今回、一部の商品を無料提供することについて、他の競合事業者に対して大きな影響を及ぼすとまで断言できないとの判断を下したようです。
SBIは手数料ゼロを「恒久的なもの」と位置付け、投資の民主化を掲げていますが、一部では競合他社を駆逐する戦略とも考えられています。
この手数料ゼロ化には業界再編が生じ、SBI証券と楽天証券が他社に追随したなかで、収益の穴を外国為替証拠金(FX)や暗号資産(仮想通貨)取引などで補う予定ですが、その持続可能性には疑問の声もあります。
とはいえ、実際の状況としては、ライバル排除の意図があるとみられます。
手数料ゼロ化の波は日本よりも米国の方が早く、2013年に米国で設立されたロビンフッド・マーケッツが提供する証券取引アプリ「ロビンフッド」は、証券取引手数料なしで売買できます。
特に若い投資家から支持を受けて、ロビンフッド現象と呼ばれる株式投資ブームが米国で巻き起こりました。こうした盛り上がりを見せる最中にロビンフッド事件が発生します。
これはユーザーが資産運用の知識を持たないまま投機的に株式市場に参加し、米国に住む20歳のトレーダーがオプション取引で約73万ドルを失ったと勘違いして、自殺した出来事です。
こうした動きのなかで、米国大手のネット証券企業であるチャールズ・シュワブが2019年に売買手数料の無料化を宣言し、他の証券会社も追随せざるを得ず、業界全体で再編が起きました。
現状、国内のネット証券最大手のSBI証券に追随したのは楽天証券のみですが、今後、米国と同じように日本でも業界再編が進むことが予想されます。
ちなみにSBI証券の日本株への依存度は約1割、楽天証券の日本株への依存度は約2割ですが、特に楽天証券は親会社である楽天グループの資金調達のため、楽天証券自体を上場させる準備中であることから、日本株の手数料ゼロ化による大きな減収の決断には迷いがあったようです。
日本でも証券業界における手数料ゼロ化の時代が幕を開けるなか、今後の展開が注目されます。
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