円安が後押し外国人観光客の3カ月間の国内消費額が過去最高に

[取材/文責]鈴木林太郎

インバウンド需要が復活しつつあります。
日本を訪れる外国人旅行者の国内消費が急増し、2023年7月から9月までの3カ月間に、外国人観光客が日本で支出した金額は約1兆3900億円に達し、3カ月間の消費額としては、コロナ禍前の2019年4月-6月に記録した1兆2673億円を上回り、過去最高金額となりました。

​​​​​​インバウンド観光再燃、オーバーツーリズムとのバランスを模索

外国人旅行者数の増加の背景には、円安の進行が影響しています。
1人あたりの平均消費額は約21万1000円で、外国人旅行者による国内での支出が増加しています。特にフィリピン、韓国、シンガポールなどの国や地域から、観光客による消費額が大幅に増加し、フィリピンでは2019年の同期比(7月-9月)で2.18倍、韓国では2.09倍、シンガポールでは2倍となりました。
その一方、中国からの観光客は回復が鈍く、2023年8月に団体旅行が再開されたにもかかわらず、2019年の同期比(7月-9月)で40%減少していることが報告されています。
この結果、2023年1月-9月までの外国人による国内消費額は約3兆6000億円に達し、政府の目標である年間5兆円を上回るのか注目されています。

日本政府観光局によると、2023年9月に日本を訪れた外国人旅行者は推定で218万4300人と、コロナ禍前の2019年同月比で96%まで回復しました。
外国人旅行者による国内消費の増加の要因としては、円安の進行が購買意欲を高める結果となっています。
日本へ訪れる外国人は日本の文化に興味があり、日本関連の商品や体験を求めに訪れていることが多く、円安の恩恵により、高額な商品やサービスでも手の届きやすい状況になっています。
その結果、外国人観光客による国内での消費が急増しているようです。
実際、日本を訪れる外国人観光客のあいだで、包丁などの刃物が人気を集めています。
この背景には、高品質な日本の商品と日本食ブームが影響していると考えられます。

その一方、一部の地域ではオーバーツーリズムの影響が懸念されています。
オーバーツーリズムとは、特定の地域で、観光客の急増が地元住民の生活や自然環境に悪影響を及ぼし、観光客の満足度を著しく低下させるような状況を指します。
特に人気観光地では、地元住民の生活や環境への影響に配慮する慎重なアプローチが求められています。
オーバーツーリズムに該当する世界の観光地では、観光客の増加が交通機関の混雑、交通渋滞、ゴミの増加、騒音、生活環境の劣化などを引き起こし、地元住民の反発を招いたり、自然環境の保護に支障をきたすことがあり、ビーチの閉鎖などの措置が取られることがあります。

日本では、観光庁が2018年に「観光客の増加と地域住民の調和を図り、共存・共生を促進する方法について包括的に検討・推進する」という目的で「持続可能な観光推進本部」を設置しています。
今後、行政には、観光客を増やす努力と同様に、地域住民の声に耳を傾ける姿勢が重要になるでしょう。

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