中堅企業の新たな定義日本経済に波及効果をもたらす

[取材/文責]鈴木林太郎

政府は従業員数が2,000人以下の企業を、法的に「中堅企業」と規定する方針です。
これにより要件を満たせば、投資やM&Aにおける税制上の優遇を享受できる可能性が生まれ、中小企業にとって重要な展開となりそうです。

成長促進に向けた法的枠組みの改革

2024年1月に行われる通常国会において、産業競争力強化法などの関連法の改正案が提出される見込みです。この提案は中堅企業の成長と発展をサポートする重要な一歩と期待されます。
実はこれまで中堅企業は明確に定義されていませんでしたが、一般的に中堅企業は資本金1億円以上10億円未満の企業を指していました。

新しい法案によれば、中堅企業の定義が2,000人以下の従業員を持つ企業となり、これには約9,800の事業者が該当する見込みです。さらに、そのなかには上場企業を含む約1,400社も含まれています。これに関連して、中堅企業への公的な支援を実施するために、以下の要件が設定される予定です。

高品質な雇用の創出

∟賃金状況を含む詳細な雇用情報が提供され、従業員がより充実感を感じ、企業の成長に貢献することが求められます。

将来の成長への投資

∟企業は新たなプロジェクトや技術の開発に積極的に取り組むことが求められ、競争力を強化し、継続的な成長を促します。

中長期の経営ビジョンと管理体制

∟企業は将来へのビジョンをより明確に示し、戦略的な方針を設ける必要があります。また、経営体制の効率性を向上させ、適切な管理体制を確立することが求められます。

新しい政策には、設備投資やM&Aによる経営資源の集約を促進する税制上の優遇措置も含まれ、これにより中堅企業は持続可能な成長を達成しやすくなります。

従来の中小企業支援政策は、1963年に制定した中小企業基本法に基づいています。
企業は業種に応じて、資本金や従業員数が定義されてきました。

たとえば製造業の場合、資本金3億円以下で従業員300人以下の企業に対して、様々な補助金や信用保証などの支援制度が設けられてきました。
その一方、現行法では従業員数が300人以上の場合、トヨタ自動車やソニーグループなどと同じ大企業と位置づけられてしまい、充分な支援を受けられないことから、それを望まない中小企業の経営者も一定数存在します。

ちなみに、アジア地域では2010年代から中堅企業が国内経済に与える波及効果に注目し、それに基づいた政策が導入されています。韓国は中堅企業の定義を法的に規定し、2030年までに1万社の企業を育成し、輸出額2000億ドル(およそ30兆円)を達成することを目標とした集中支援プランを展開しています。
同様に、台湾も中堅企業の成長を促進するための計画を策定しています。

企業活動基本調査によれば、従業員数が増えるほど、労働生産性も向上することが示されています。中堅企業は、小規模事業者が廃業する際の重要な受け皿としての役割を果たし、経済の新陳代謝を促進する期待が寄せられています。

国内の中堅企業に焦点を当てると、過去10年で国内で18.9兆円、海外で11.3兆円の成長を実現しました。

今後も成長目覚ましい中堅企業を増やし、国内での資金投資や人材育成の機会が拡大することで、国内経済のさらなる波及効果が期待されます。

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