スタートアップ躍進の福岡県福岡市5年連続最高の開業率を達成

[取材/文責]鈴木林太郎

福岡県福岡市のスタートアップ企業が注目を集めています。
2012年から福岡市は「スタートアップ都市宣言」を掲げ、主要都市において5年連続で最高の開業率を誇っています。
福岡にはコンパクトで住みやすい環境があり、さらに官庁と民間企業が協力して手厚い支援策を提供していることやアジアとの地理的な近さが、多くの移住者や企業を引き寄せています。

アジアの玄関口で繁栄する起業の地

そもそも「スタートアップ」とは、通常の起業に加えて、新しいビジネスモデルによってイノベーションを起こし、短期間で急速な成長を目指す取り組みです。
そのためには、従来の概念を覆すような価値観や斬新なアイデアを事業化する必要があります。

全国的にも高い開業率を誇り、ベンチャーの気質が根付いている福岡市では、これらの素養を早くから育んできました。
実際、スタートアップ支援は、福岡市の成長戦略の中核的な要素と位置づけられています。

たとえば、2017年4月に創業初期段階にある起業者の事業拡大や成功を支援する目的とする市内3カ所のインキュベート施設やスタートアップカフェをまとめ、大名エリアにあるかつての小学校の場所に「Fukuoka Growth Next(FGN)」と呼ばれるスタートアップ支援施設を開設しました。

福岡市には、スタートアップ資金という、これから事業を始める方などを対象とした融資制度(創業支援資金)があります。
東京よりも福岡の方が手厚い支援を得られることに魅力を感じて、本社を移した企業があるなど、複数の企業が入居しています。

また、福岡市および県は新興企業の発展を支援するため、専門家が企業とともに進める「アクセラレーションプログラム」に注力しています。このプログラムへの参加を通じて、これらの企業はベンチャーキャピタル(VC)や潜在的な顧客との重要なコネクションを築いています。

※ベンチャーキャピタルとは、新興の成長段階にある企業やスタートアップに資金を提供するための投資ファンドや投資家のことを指します。

 

福岡はアジアの玄関口であり、その立地に魅力を感じて、福岡を選んだ企業も増加しています。たとえば、台湾を中心にチャット型営業支援ツールを提供するOneAI(ワンエーアイ)は、福岡のビジネス環境に魅力を感じて本社を移転しました。このような企業の成功例が増えつつあり、福岡市は新興支援の実績を積み重ねながら、アジアとの近さを活かし、多様な背景を持つ人々が才能を発揮できる街づくりに注力しています。

こうした取り組みが功を奏し、福岡市は2022年度において、雇用保険適用事業所数の前年比増加を示す「開業率」が5.3%となりました。
これは政令市を含む21大都市の中で5年連続で最も高い水準を記録しています。
福岡市は起業家を支援するためにFGNなどの仕組みを整備し、また「ピッチコンテスト」などを通じて企業や投資家を呼び込む取り組みを行ってきました。

過去10年にわたり、福岡は新興企業のサポートにおいて成功を収めてきました。
これまでの実績を踏まえつつ、今後はアジアとの近接性を最大限に活かし、スタートアップ企業をどれだけ成長させるかが焦点となります。
産学官の協働を促進する福岡地域戦略推進協議会(FDC)は、11月9日に福岡市において、「高度人材(外国人)の快適な生活環境の提供」などの政策提言を行いました。
次の10年では、多様なバックグラウンドを持つ人々が、自らの才能を最大限に発揮できる街づくりがさらに重要視されます。

福岡市は引き続き、産学官の協働を促進し、未来の起業家や企業が育まれる環境づくりに注力していくことから、さらに注目されることが予想されます。

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