円安値上げが加速,円安と値上げの関係性や品目数の値上げランキングを紹介
2023年は円安が急速に進んだ年だと言えます。
というのも、2023年1月1日時点のドル円は、1ドル132円であったのに対し、11月には最高151円まで円安が進んだからです。
そこで本記事では、円安と値上げの関係性や、円安による値上げの影響を受けやすい食料品・受けにくい食料品などを紹介します。
※記事の内容は2023年11月末時点の情報を元に作成したものであり、現在の内容と異なる場合があります。
円安とは
円安とは、日本円の価値が他国の通貨に比べて低い状態のことです。1ドル130円を基準とした場合、1ドル100円は「円高」、1ドル150円では「円安」になります。
例えば、アメリカへ旅行する際に、10万円を米ドルに両替するとしましょう。
1ドル100円の円高時であれば、1,000ドル受け取れますが、1ドル150円の円安時である場合は、およそ666ドルしか受け取れません。
このように、日本円の価値が下がる「円安」は、海外へ旅行をする際に多額の費用がかかったり、海外からの仕入れ額が高騰したりなど、日本人にとってさまざまな問題が発生する状態であると言えます。
円安が続いている理由
日本の円安が続いている大きな理由としては、「日本とアメリカの金利差」にあります。
日本とアメリカは、両国とも長い間金融緩和を実施してきましたが、アメリカは2022年3月に金融引き締めに転換したことで、日本とアメリカの間で金利差が開きました。
そもそも「金融緩和」とは、日銀のような中央銀行が金利を下げたり、各民間金融機関の国債を購入したりすることを指します。
そうすることで、民間企業が多額の資金を調達でき、企業や個人が銀行から借入しやすくなり、市場に出回るお金が増えるのです。
一方で、「金融引き締め」は、中央銀行が金利を上げることで、民間金融機関の資金力を抑えることで、企業や個人が借入しにくくなり、市場に出回るお金を減らす施策のことです。
金融引き締めは、景気や物価の上昇を抑えることを目的とします。
また、金融緩和が続いて金利が下がると、その国の銀行に預けている利益も少なくなります。そのため、金利の低い日本円を売って、金利の高い米ドルを購入する人が増え、円の価値が下落するのです。
円安と値上げの関係性
円安と値上げには、大きな関係性があります。
というのも、円安になると、海外から輸入する食料品や原材料、エネルギー資源などの仕入れ額が上がるため、店頭に並ぶ商品も必然的に値上がりするからです。
こちらでは、2023年度における円安と食料品の値上げについて見ていきましょう。
円安などによる為替要因の値上げ割合
まずは、円安が急速に進んだ2023年で、各品目・各企業における値上げを受けた割合について紹介します。
「東京商工リサーチ」が調査した結果によると、1月から10月における海外・為替要因による値上げ割合の推移は、以下のとおりです。
品目 | 企業 | |
---|---|---|
1月 | 41.28% | 29.58% |
2月 | 10.91% | 20.00% |
3月 | 12.77% | 20.37% |
4月 | 27.82% | 23.53% |
5月 | 18.76% | 27.59% |
6月 | 8.45% | 18.60% |
7月 | 9.33% | 10.00% |
8月 | 43.17% | 37.50% |
9月 | 27.98% | 25.00% |
10月 | 44.81% | 53.85% |
調査の結果から、6月、7月に円安などの為替による値上げの影響を受けた品目・企業の割合は減少しました。しかし、8月以降は、品目・企業ともに値上げの影響を大きく受けていることが分かります。
たしかに、6月、7月の月中平均ドル円相場が141円ほどであるのに対し、8月の月中平均ドル円相場は145円ほどまで上昇しています。
また、10月の月中平均ドル円相場が150円台まで上昇したことで、品目、企業ともに円安による値上げの影響を大きく受けました。
値上げ理由の1位は「原材料」の高騰
2023年に値上げした3万1,848品を対象に、各品目の値上げ理由についてまとめられています。
順位 | 値上げ理由 | 対象品目数 |
---|---|---|
1位 | 原材料 | 2万9,684品 |
2位 | 資源・燃料 | 2万6,165品 |
3位 | 物流 | 2万1,095品 |
4位 | 資材・包材 | 1万9,416品 |
5位 | 為替 | 4,037品 |
6位 | 人件費 | 2,905品 |
2023年に値上げした品目で最も多かった理由は、「原材料」の高騰です。また、第2位は、「資源・燃料」となりました。
「原材料」や「資源・燃料」は、海外からの仕入れに頼っている企業も多く、円安などによる輸入額の増加が大きな影響を受けたと言えます。
また、原材料の値上げ理由の1つには、小麦製品や飼料価格の急騰で、各大手食料品会社が「小麦製品」や「乳製品」を値上げしたことが関係しているとのことです。
2023年における分類別の値上げ品目数ランキング
2023年の値上げ品目数ランキングは、以下のとおりです。
順位 | 品目 | 品数 |
---|---|---|
1位 | 調味料 | 9,327品 |
2位 | 加工食品 | 7,955品 |
3位 | 飲料・酒 | 5,760品 |
4位 | 冷凍食品 | 2,577品 |
5位 | 菓子 | 2,144品 |
6位 | パン・小麦粉等 | 1,758品 |
7位 | 乳製品 | 1,314品 |
値上がりした品目を分類別にすると、最も多いのが「調味料」で、第2位が「加工食品」であることが分かりました。
値上がりした調味料の多くには、輸入原料とされる「ごま」に関連する中華調味料や香辛料などが多いことから、円安による輸入額の増加が「調味料」の値上げに関係していると言えるでしょう。
円安でも値上げしない食料品一覧
円安は、必ずしもすべての食料品の値上げにつながるわけではありません。円安時でも値上げしない食料品もありますので、確認してみてください。
円安でも値上げしない食料品は、以下のとおりです。
●梅干し
●干ししいたけ
●かつお節
●アルコール飲料
●緑茶
●果実ジュース
円安に影響されにくい食料品としては、主に国内で生産・加工される食品が該当します。
なぜなら、円安による値上げは、海外から輸入する原材料の価格が高騰した結果、商品の生産コストが増加するからです。
したがって、海外からの輸入に頼らない「干しのり」「梅干し」「緑茶」など、国内で生産・加工されている食料品は、円安の影響を受けにくい傾向にあります。
円安で値上げの影響を受けやすい食料品一覧
一方で、円安時に値上がりしやすい食料品は、海外からの輸入に頼っている食料品です。
2022年の農林水産物輸入で特に多い品目は、次のとおりでした。
●豚肉
●牛肉
●鶏肉
●コーヒー生豆
●アルコール飲料
●冷凍野菜
海外から多く輸入されている品目には、「豚肉」「牛肉」「鶏肉」などの肉類や、「コーヒー生豆」「冷凍野菜」などがあります。
これらの食料品は、円安になると海外から輸入する際の価格が上昇するため、円安時には値上がりしやすい食料品だと言えます。
まとめ
今回は、円安による値上げについて、円安と値上げの関係性や、値上げの影響を受けやすい食料品・受けにくい食料品などを紹介しました。
結論としては、円安は日本円の価値が他国の通貨と比べて下がっている状態であることから、海外からの輸入に頼っている食料品は、値上げの影響を受けやすいです。
また、2022年における日本の食料自給率はおよそ38%であり、国内における食料消費の半数以上を海外からの輸入に頼っている状態です。
そのため、円安の長期化は、日本で販売されるさまざまな食料品の値上げに大きな影響を及ぼすと言えるでしょう。
▼参照サイト
農林水産物輸出入概況【農林水産省】
知ってる?日本の食料事情 2022【農林水産省】
“円安値上げ”の割合が拡大 値上げメーカーの53.8%を占める【東京商工リサーチ】
米ドル対円相場(仲値)一覧表 (2023年)【七十七銀行】
神奈川横浜市を中心に活動しているWebライターの澤田です。2023年3月にFP3級を取得、2023年7月にFP2級を取得しました。新しく身につけた専門知識を活かし、あなたの悩みを解決できるわかりやすい記事を目指しています。
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