2023年の平均賃金が月31万8000円と2年連続で過去最高額を更新

厚生労働省は1月24日、2023年の賃金構造基本統計調査の速報値を公表し、一般労働者の平均賃金が月31万8300円で、2022年に続いて過去最高を記録したことが明らかになりました。
前年比で2.1%増加し、賃金の伸び率は1994年以来の29年ぶりの高水準となり、この速報値は厚生労働省が初めて公表したものです。
賃上げ幅が物価に追いついていない状況のなか若年層の賃金上昇が顕著に
調査対象は従業員5人以上の民間企業と10人以上の公共事業所からランダムに選ばれた7万8623カ所で行われ、速報では10人以上の民間企業について分析されました。対象者は正社員などのフルタイムで働く人で、賃金には残業代などは含まれず所定内給与のみが対象とされました。
過去数年間、平均賃金の伸びは前年比で0%台の微増にとどまっていましたが、2023年は前年比2.1%増加し、特に2022年からの大幅な伸びが見られました。これには物価の上昇が賃金の伸びを後押ししており、消費者物価指数(価格変動の大きい生鮮食品は除く)は2023年平均で3.1%上昇しました。ただし、賃金の増加幅は物価の伸びに追いついていないため、労働者はまだ十分な賃上げの利益を得ていない状況です。
年齢・学歴別でみると、特に34歳以下の若年層で賃金の伸びが顕著で、中でも25~29歳の大卒者は2.8%、高卒者は5.5%増加しました。これは近年の初任給の引き上げや、若手の賃金を手厚くする企業の動きが背景にあるとされています。その理由として、若手人材の採用競争が激しくなり、企業が優秀な若手社員を引きつけるための手段として初任給の引き上げを行っていることが考えられます。
少子化が進むなか、若手に有利な労働市場が今後も続くかもしれません。
全年齢階級において、大卒の50〜54歳を除き、学歴によらず賃上げが実現しています。企業規模別では、従業員が1,000人以上の大企業では平均34万6000円、10~99人の企業では29万4300円となっており、大半のケースで企業規模に比例して賃金が上がっています。特に50〜54歳で見ると、企業規模が大きいほど賃金の差が広がる傾向があります。
産業ごとの賃上げ率では、サービス業が6.4%増加し、金融・保険業が5.2%増加しています。建設業は残業時間の上限規制が迫る中で4.4%増加しました。ほとんどの業種が前年比で賃金が増加していますが、唯一教育・学習支援業だけが微減しています。
これらの動向を踏まえ、2023年の経済状況は賃金の増加とともに若年層や産業別での差異が顕著となっており、ビジネスパーソンにとってはキャリアや給与の選択に影響を与える可能性があります。これを踏まえて、企業や個々の職場において今後の労働環境や賃金政策に対する戦略的な検討が求められるでしょう。
とはいえ、経済全体のインフレが企業全体に均等に影響するわけではなく、業種や企業ごとに格差が生じることが予想されます。
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