2024年4月より年金支給額2.7%引き上げも実質的には目減りに
厚生労働省は、1月19日に2024年度の公的年金の支給額を前年度に比べて2.7%引き上げることを発表しました。この増額は物価や賃金の伸びを反映したもので、2年連続の増額となり、伸び率はバブル経済の影響があった1993年度以来の高さとなります。
年金財政の健全化を目指す「マクロ経済スライド」とは何か?
公的年金の支給額は、物価と賃金の変動に応じて毎年度改定されます。
ただ、ここで重要となってくるのが「マクロ経済スライド」(*1)という制度です。この制度は、将来の年金給付水準の持続可能性を確保するために2004年に導入されました。
2024年度の改定においても、マクロ経済スライドが2年連続で適用されることから、本来の改定率となる2020年度から2022年度の名目賃金変動率である3.1%から0.4ポイント低く抑えられ、実質的には目減りとなるようです。
68歳以下の場合、厚生年金を受け取る夫婦2人のモデル世帯(*2)では、月額が6001円増の約23万483円、自営業者などが加入する国民年金は、68歳以下で1,750円増の月額6万8000円、69歳以上で1758円増の月額6万7,808円となります。
保険料を支払う現役世代の減少により、今後も年金は実質的に目減りしていく見通しです。これを受け、厚生労働省は2024年度中に5年ぶりに実施する「財務検証」の結果を踏まえ、年金の給付水準の低下を抑える制度改正の検討を進めるとしています。
今回の年金額の改定について、有識者は「高齢者の年金が目減りし、苦しい状況にあることを認識しつつ、将来現役世代が受け取る年金の目減りを抑えるための対策が必要」と指摘しています。また今後の制度見直しに必要な点として、世代間と世代内のバランスを保つために、「マクロ経済スライド」による年金財政の健全化と、パートなどで働く人を厚生年金に加入しやすくするなどの措置が重要であるといいます。さらに個人が老後に備えるためには、平均寿命が伸びていることもあり、働けるうちは働き、ゆくゆくは健康状態が悪くなるリスクを考慮しつつ、税制優遇を活用し、若いうちから準備をしていくことを勧めています。
将来にわたって信頼される年金制度の実現には、世代間の公平性を保ちつつ、制度の健全化が鍵となります。
※2 モデル世帯:夫が40年間厚生年金に加入して平均的な収入(賞与を含む月額換算で43万9000円)を得て、妻は40年間専業主婦である世帯のことを指します。
▼参照サイト
厚生年金、2年連続増額 24年度は2.7%増の月23万円【日本経済新聞社】
年金支給額を2・7%引き上げ、バブル期並み高水準…厚生年金はモデル世帯で月23万483円【読売新聞オンライン】
マクロ経済スライド【日本年金機構】
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