【節税術3】「法人用クレジットカードを利用する」という節税術

[取材/文責]マネーイズム編集部

クレジットカードには、法人のカードと個人のカードの2種類があります。
法人カードのなかには、法人だけでなく個人事業主でも作れるカードもあり、「事業者向けのクレジットカード」だと言い換えることができます。
個人事業主の場合、個人用のクレジットカードでも十分だという方もいるかもしれませんが、個人事業主も法人カードを持つことで節税や節約にも役立ちます。
本記事では、個人事業主が法人カードを持つメリットや注意点、審査基準などについて解説していきます。

法人カードを持つ
節税メリット

法人用のクレジットカードを持つメリットは、主に以下の3つです。

  • ①ビジネスとプライベートの支払いを区別できる
  • ②経費の管理が楽になる
  • ③節約ができる
     ◆支払いの度にポイントやマイルが貯まる
     ◆ビジネスに特化した付帯サービスや優待が充実している
     ◆資金繰りを安定させられる
     ◆カードの利用限度額が大きい

経費精算の手間を減らせるだけでなく、ポイントやビジネス向けの優待などお得なメリットも多数あります。

節税メリット① ビジネスとプライベートの支払いを区別できる

ビジネス用に別のクレジットカードを持っていれば、プライベートとの支払いを区別できて便利です。プライベートとビジネスの支払いのどちらも1枚のカードで済ませてしまうと、後日確認するときに判別しづらくなってしまいます。経費になる支払いをする際はビジネス用のクレジットカードを必ず使うようにすれば、すぐに経費の詳細や総額が把握できるため、申告漏れを防ぐことにもつながります。

節税メリット② 経費の管理が楽になる

ビジネス用のクレジットカードを持てば、経費の管理が楽になります。例えば、経費精算システムとカードを連携させれば、カードを使うたびに自動で仕訳まで行うことができます。
また、通常の税務における紙の領収書での経費管理は煩雑になりがちで、経費の申告漏れなどに結び付いてしまうことも少なくありません。
法人クレジットカードを活用することで、経費の正確な管理が可能になり、申告漏れを防げることから、結果として節税につながります。

節税メリット③ 節約ができる

直接節税につながりませんが、クレジットカードを使うことでポイント還元が受けられるなど、いろいろな”節約”のメリットが受けられるのも特徴です。

支払いの度にポイントやマイルが貯まる

ビジネス用のクレジットカードを持っていれば、支払いの度にポイントやマイルが貯まってお得です。そのポイントやマイルを使って、事務用品や出張のための航空券を買えば、多少の経費削減ができます。
例えば、ポイント還元率1%のクレジットカードで月30万円分の仕入れをしたとしましょう。すると3,000円分のポイントが貯まります。このポイントを足りない事務用品や商品の仕入れなどに使えば、その分コストを下げられます。
開業したての個人事業主であれば、可能な限りコストは下げたほうがよいので、支払いはクレジットカードに統一するとお得です。

◆ビジネスに特化した付帯サービスや優待が充実している

個人事業主向けのクレジットカードのなかには、ビジネスに使える付帯サービスや優待が充実しているものがあります。実際にある付帯サービスや優待の例を挙げると、以下のようなものがあります。

  • 会計ソフトや福利厚生サービスを優待価格で使える
  • 出張時に空港内のラウンジが無料で利用できる
  • 接待で使える高級レストランのコースを1名分無料にできる
  • ビジネスに便利な指定サービスの支払いに利用でポイント還元率アップ

ビジネスに特化した付帯サービスや優待が充実しているカードを活用すれば、事業を有利に進めることが可能です。

◆資金繰りの改善に繋がる

個人事業主がクレジットカードを持っていれば、決済から実際の支払いを遅らせられるため、資金繰りを安定させることができます。決済から支払いまで約1カ月の期間があるので、キャッシュが減るタイミングを遅らせることが可能です。
開業したてだったり、まだ事業規模が小さかったりする個人事業主であれば、クレジットカードを活用して健全な資金繰りを行うとよいでしょう。

◆カードの利用限度額が大きい

法人カードは、個人カードよりも利用限度額が大きい傾向です。一般的な個人カードの利用限度が最大100万円前後ですが、個人事業主向けの法人カードであれば最大500万円程度のものも珍しくありません。ステータス性の高いカードになれば、そもそも上限が決められていないものもあります。
多額の仕入れが必要な事業をしている個人事業主でも、安心してクレジットカードで支払いができます。

法人カードを持つ際の
注意点

法人用のクレジットカードを持つデメリット・注意点は、主に以下の6つです。

  • ①個人カードに比べてポイント還元率が低め
  • ②年会費がかかる場合が多い
  • ③リボ払いや分割払いなどができない場合がある
  • ④クレジットカードを使ったら正しく記帳する必要がある
  • ⑤プライベートの支払いに使うと仕訳が面倒になる
  • ⑥1枚のクレジットカードを他の人と使いまわしてはいけない

個人用のクレジットカードと比べると、ポイント還元率や年会費などで少し劣ります。また、ビジネス用のカードとして利用するので、個人用との使い分けが重要です。

注意点① 個人用のクレジットカードに比べてポイント還元率が低め

法人カードのポイント還元率は、個人用のカードに比べて低めです。
個人用のカードのポイント還元率は1%が目安となりますが、法人向けのカードは0.5%が目安です。ポイント還元率の差が0.5%あると、仮に10万円分の支払いをした場合、もらえるポイント数は500ポイントも減ってしまいます。

注意点② 年会費がかかる場合が多い

法人カードは、個人カードに比べて年会費がかかる場合が多いです。年会費は経費にできますが、一定のコストになってしまいます。
とはいえ、法人向けのクレジットカードでも、「三井住友カード ビジネスオーナーズ」など、年会費が永年無料のものもあるので安心してください。少しでもコストを減らしたい法人オーナーは、年会費が永年無料のカードを選ぶとよいでしょう。

注意点③ リボ払いや分割払いができない場合がある

法人カードは、リボ払いや分割払いなどの一括払い以外の支払い方法に対応していない場合があります。決済と支払いのタイミングが違うとしても、一括払いしかできないと、逆に資金繰りが悪化してしまうかもしれません。
実際にクレジットカードを申し込む前に、どのような支払い方法が使えるか確認しておきましょう。

注意点④ クレジットカードを使ったら記帳の方法に注意が必要

法人カードを利用したら、個人事業主の場合は確定申告の申告方法にあわせて正しく記帳する必要があります。
具体的には白色申告をするのか、青色申告をするのかで変わります。白色申告をする場合は単式簿記、青色申告をする場合は複式簿記での記帳が必要です。

単式簿記:収支のみを記録する単純な記帳方法
複式簿記:借方と貸方を用いながら複数の勘定科目を使って行う記帳方法

単式簿記の記帳はシンプルですが、複式簿記は慣れていない場合手間がかかります。例えば、単式簿記であれば、以下のように取引の日付と金額、概要さえあれば問題ありません。

単式簿記:6月1日に7,000円のオフィス用品をクレジットカードで購入した

日付金額概要
6月1日7,000円オフィス用品

上記の形式で、取引を記録していくだけです。
しかし、複式簿記の場合は、取引の内容を借方と貸方に分け、勘定科目を用いて記帳する必要があります。また、カードの利用したタイミングと利用料金の引き落とし日のタイミングで、仕訳は別々にする必要があります。

複式簿記:6,000円のオフィス用品をでクレジットカードで決済した日

借方貸方
消耗品費6,000円未払金6,000円

複式簿記:クレジットカードの利用料金が普通預金の口座から引き落とされる日

借方貸方
未払金6,000円普通預金6,000円

複式簿記は多少面倒ですが、青色申告をすれば最大65万円の特別控除を受けられて節税につながります。個人事業主向けのクレジットカードを作って利用したら、複式簿記で記帳して青色申告をするのがおすすめです。
なお、法人カードの利用分が事業用口座から引き落とされる場合は、「未払金」として処理する必要はなく、以下のように仕訳を簡略化できます。

複式簿記:6,000円のオフィス用品をでクレジットカードで購入した日

借方貸方
消耗品費6,000円普通預金6,000円

ただし、引き落としが年をまたぐ場合は簡略化できないので注意してください。

注意点⑤ プライベートの支払いに使うと仕訳が面倒になる

法人向けのクレジットカードをプライベートの支払いに使ってしまった場合、仕訳が面倒になります。具体的には、その支払いだけ「事業主貸」という勘定科目で仕訳しなければいけません。
通常は「未払金」という勘定科目で済むにもかかわらず、一部だけ「事業主貸」にする必要がでてきます。個人事業主向けのクレジットカードは、プライベートの支払いに使わないようにしましょう。
逆に、個人カードを事業の支払いに使った場合は、「事業主借」で仕訳をしなければいけません。こちらも手間が増えてしまうので注意しましょう。

注意点⑥ 1枚のクレジットカードを他の人と使いまわしてはいけない

1枚のクレジットカードを、従業員などの他の人と使いまわさないようにしましょう。名義人以外がカードを利用してしまうと、カード会社との契約違反となる可能性があります。最悪、詐欺罪に問われるかもしれないので厳重に注意してください。
他の従業員にもカードを渡したい場合は、必ず追加カードを作成するようにしましょう。なお、従業員用のカードを作るのが有料だったり、作成可能な枚数が限られていたりすることもあるので、事前に確認しておくのがおすすめです。

法人向けクレジットカードの
審査基準

法人向けのクレジットカードの審査基準は、主に以下の3つが重要視されています。

  • 本人の信用情報
  • 営業年数
  • 業績や財務状況

本人の信用情報がみられるのは個人用のカードと同様です。ただし、他にも営業年数や業績、財務状況など、ビジネス用のカードならではの審査項目があります。
また、法人カードには、ビジネスカードとコーポレートカードの2種類があります。

◆ビジネスカード

  • 従業員20名未満を目安とした中小企業や個人事業主向けのカード
  • 個人用のカードよりも利用可能額が大きく、追加カードも発行可能
  • 事業主の信用情報が審査に大きく影響する

◆コーポレートカード

  • 従業員20名以上の企業や大企業向けのカード
  • ビジネスカードよりも利用可能額が大きく、追加カードも発行可能
  • 法人の財務状況や業績なども審査に大きく影響する

個人事業主の方であれば、ビジネスカードが選択肢に入ってくるので、次に解説する審査基準も参考しながら、検討してみてはいかがでしょうか。

基準① 本人の信用情報

ビジネスカードでは、事業主本人の信用情報が審査結果に大きく影響します。

信用情報:クレジットカードやカードローンなどの信用取引の申込履歴や利用履歴

信用情報に傷があると、クレジットカードの利用金額をしっかり支払ってくれないのではとカード会社に思われてしまい、審査に落ちる可能性が高くなります。
もし以下のようなことを過去にしてしまった経験がある方は、信用情報に傷がついているかもしれません。

  • クレジットカードやローンの支払いを延滞・未払いした
  • 携帯料金の分割払いを延滞した

本当に傷がついているか確認したい方は、インターネットから信用情報機関に開示請求をすれば知ることができます。

基準② 営業年数

個人事業主としての営業年数が長くなるほど、今後も安定して事業が続けられるとみなされて審査に有利に働きます。
とはいえ、開業したばかりだとしても、審査に通る可能性は十分あるので安心してください。開業間もなくても、ビジネスカードに申し込んでおくのをおすすめします。

基準③ 業績や財務状況

業績や財務状況が良い状態が続いていれば、クレジットカードの利用金額の支払いも滞りなく行われると思われて、審査が有利になります。
とはいえ、赤字が続いていたとしても、必ず審査に落ちるとは限りません。他の審査基準もみられるので、まずは一度申し込んでみるとよいでしょう。

この節税術に必要な
心構えとは

法人用クレジットカードを作るメリットは多数あります。経費管理が楽になるだけでなく、ポイントや付帯サービスなどで有利に事業を進めることも可能です。開業したてだからと身構えず、法人カードを上手に活用して円滑な節税を行っていきましょう。

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