- 相続に強い税理士を探す >
- 今知りたい!相続お役立ち情報 >
- 甥や姪に相続の権利が?知っておきたい「法定相続人」のこと
甥や姪に相続の権利が?知っておきたい「法定相続人」のこと
2019年5月28日
父親が亡くなって相続になったら、遺産は配偶者である妻が1/2、子どもたちが1/2ずつで分ける――。遺産分割に関するこの「公式」は、ほとんどの人が知っているでしょう。では、亡くなった人に配偶者も子どももいなかったら? 相続人になれる親族の範囲って? 今回は、民法に定められた相続の権利を持つ人=「法定相続人」について整理してみました。
法定相続人には「順位」がある
まず、クイズです。次の人たちのうち、法定相続人(以下、相続人)になる資格があるのは、誰でしょう?
- ①孫
- ②ひ孫
- ③兄弟姉妹
- ④甥や姪
- ⑤いとこ
- ⑥別れた前妻
- ⑦別れた前妻の子
- ⑧愛人
- ⑨愛人の子
答えは、「⑤いとこ、⑥別れた前妻、⑧愛人」以外の人でした。⑥と⑧が相続人になれないのは、「相続人は配偶者と血族(※1)」という大原則があるからです。例えば、事実上本妻に近い愛人であっても、血族ではありませんから、相続人ではないのです。
今の原則の言い方を変えると、「被相続人(亡くなった人)に配偶者がいた場合は、必ず相続人になる」ということになります。なおかつ、「被相続人の血族は、優先順位が高い順に相続人になる」と決まっています。この順位には、第1順位(子ども)、第2順位(親)、第3順位(兄弟姉妹)まであって、先の順位の相続人が1人でもいたら、後の順位の血族は相続人にはなれません。そして、相続人の資格がある親族は、この第3順位の人たちまで。ですから、それに含まれない⑤は対象外ということになるわけです。
民法は、相続人とともに、その遺産の取り分=法定相続分も定めています。それも含めて、(表)にしました。
相続順位 | 続柄 | 法定相続分 | ||
---|---|---|---|---|
ケース1 | ケース2 | ケース3 | ||
常に相続 | 配偶者 | 1/2 | 2/3 | 3/4 |
第一順位 | 子供 | 1/2 | - | - |
第二順位 | 直系尊属 (父母や祖父母など) | - | 1/3 | - |
第三順位 | 兄弟姉妹 | - | - | 1/4 |
「代襲相続」で、孫も相続人になる
あらためて、相続人は誰か? そのポイントをみていきましょう。
◆配偶者は、必ず相続人になる
相続人の順位は関係ありません。なお、法定相続分は、血族が第1順位のとき=1/2、第2順位のとき=2/3、第3順位のとき=3/4と決まっています。
◆第1順位は「下」へ
被相続人に子どもがいれば、最優先の相続人となります。ただし、この「子ども」は、配偶者との間に生まれた「嫡出子」だけではありません。まず、配偶者以外の人との間に生まれた「非嫡出子」には、同じように相続人になる権利があります。かつては父親の認知が必要でしたが、今は認知されていなくても、DNA鑑定による「死後認知」で実子と認められれば、OKになりました。
また「養子」も、実子とまったく同等の扱いになります。このため、相続対策として、孫などを養子にすることもあります。相続人の数が多いほど、相続税の基礎控除額(※2)が上がり、結果的に相続税が減免されるからです。さらに、相続発生時に母親のお腹にいた「胎児」も相続人です。つまり、第1順位の子どもは、4種類いることになるわけです。
ここで注意する必要があるのは、「代襲相続」です。相続人になるはずだった子どもが、被相続人よりも先に亡くなっていた場合、その子に子ども=被相続人からみて孫がいたら、代わりに相続人になる権利があるのです。この代襲相続は、孫がなくなっていたらその子ども=ひ孫、さらにその子ども……と、脈々と続いていきます。
◆第2順位は「上」へ
第1順位に該当する相続人がまったくいないときには、被相続人の父母や祖父母が相続人となります。
◆第3順位は「横」へ
第2順位の血族もいなかった場合には、被相続人の兄弟姉妹に相続人の権利が生まれます。そしてこの場合にも、代襲相続が認められます。例えば、先に亡くなっていた兄に子どもがいた場合には、相続人として認められるのです。被相続人から見ると甥、姪に当たる人。想定される相続人の中では、血のつながりから言っても、日常的な交流という点から見ても、最も遠い存在と言えるでしょう。なお、この代襲は1代限りで、甥、姪の子どもが相続人になることはできません。
法定相続分には従わなくてもいい
甥や姪への相続というのは、かなりレアケースにも感じられますが、少子化の進行もあって、「ありえない」ことではなくなっています。もしかしたら、あなたの築いた財産が、想像もしていなかった人たちの手に渡ることになるかもしれません。反対に、尽くしてくれた内縁の妻には、一銭も残すことができない可能性もあります。
では、いったいどうしたらいいのでしょうか? 実は、説明してきた相続人に対する法の定めは、「遺産は必ずこうやって分けなさい」という性格のものではありません。逆に「被相続人の意思が示されていないときには、こう分けることにする」というルールだと考えればいいでしょう。「被相続人の意思」を示すもの、すなわち有効な遺言書があれば、渡したい人に財産を渡すことができるのです。例えば、「内縁の妻Aに全財産を譲る」という遺言書も、法的には有効。相続人ではないはずのAさんも、晴れて遺産を受け取ることができます(※3)。
兄弟姉妹に甥や姪を含めて、遺産分割協議を行うことが想定されるような場合には、特に遺産を渡す側の明確な意思を事前に示しておく必要があるかもしれません。どちらかといえば疎遠な者同士の話し合いは、予期せぬトラブルを生みやすいからです。
まとめ
「自分の相続人はいったい誰なのか」をきちんと認識しておくことは、意に反する相続にしないためにも、相続人たちの無用な争いを避けるためにも、大事なことなのです。遺言書を書く場合にも、それを踏まえた内容にする必要があるでしょう。