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「相続争いはお金持ちの話でしょう」それは大いなる誤解です!

「相続争いはお金持ちの話でしょう」それは大いなる誤解です!

2019年6月25日

故人の高額な遺産をめぐる争いが、時々ニュースになります。それを横目に見ながら、「うちには、揉めるような財産はないから大丈夫」と思ってはいませんか? そういうあなたは、立派な「“争続”予備軍」かもしれません。財産は少額でも、相続は揉めることがある。論より証拠、まず「争いの現場」をのぞいてみましょう。

「少ない遺産」で、これだけ揉める

相続人が遺産の分け方を話し合う遺産分割協議がまとまらない場合、多くは家庭裁判所に「遺産分割調停」(※1)を申し立てて、解決を図ることになります。最高裁判所が公表する「司法統計」によると、2017年度に全国の家庭裁判所が扱った、この調停や審判(※2)=遺産分割事件は、1万2166件ありました。

 

その内訳で注目すべきは、次のデータです。グラフを見てください。調停が成立したケースについて、「そもそもいくらの遺産で揉めていたのか?」を示したものです。

 
遺産の価格
 

なんと、3分の1は、1000万円以下で調停にまでなってしまいました。5000万円以下まで広げると、実に75%を超えています。揉めているのだから、相続人は2人以上。仮に2人だとしても、相続税が発生するボーダーラインである基礎控除額は4200万円ですから、調停に持ち込まれた大半のケースは、相続税を支払う必要がないか、あっても僅かというレベルの遺産だと推測されるのです。ちなみに、相続人の数が増えるほど、このボーダーラインは上昇していきます。

 

何億円という遺産で揉めるケースが少ないのは、そもそもそんなに財産を残す人自体が、そんなにいないから。確かに、それは事実でしょう。ただし、「少ない遺産でも、揉める相続は揉める」ということは、この数字からはっきり見て取れるはずです。

 

では、その争いのために、どれだけの時間が費やされるのか? これも、次のグラフを見てください。

 
審理期間
 

半年以内にケリがつくのは、3分の1強。全体の3割は、1年を超えて揉め続けていることがわかります。審理の回数は、5回以内がおよそ64%、6~10回が24%で、長期化すれば、20回を超えます。しかも、17年度に調停が成立したのは6割強にとどまりました。この段階で物別れになると、次は裁判に訴え出て、白黒つけるといった方法しかなくなります。1年に何千件という相続が、遺産分割をめぐって“泥沼化”しているという現実は、しっかり認識しておくべきでしょう。

 
※1遺産分割調停
家事審判官(家裁の裁判官)と男女1名ずつの調停委員で構成される調停委員会が紛争当事者の間に立ち、話し合いで遺産分割の解決を図る。
※2審判
調停が不調に終わった場合に、家事審判員が職権で事実の調査などを行い、独断で遺産の分割を行うこと。

「争続」の背景に、「感情」あり

調停ということになれば、それに費やす時間やエネルギーは、小さなものではありません。にもかかわらず、親子や特に兄弟間で骨肉の争いになってしまうのは、なぜなのでしょうか?

 

「遺産が少なくても揉める」のは、すなわち「争う理由は、必ずしもお金ではない」ことを意味します。では何かといえば、ズバリ「感情」というのが、答えになるでしょう。親が亡くなり、いざ相続ということになると、様々な「気持ち」が表に出てくるのです。

 

「兄貴は学生時代に海外留学したのに、私は何もしてもらえなかった」 「父親の相続の時には自分が我慢したのだから、今度の母の相続では取り分が多いはずだ」 「この家は、同居して親の面倒をみていた自分たち夫婦がただでもらって当然」 「同居しながら、親のお金を使っただろう」

 

「感情的」という言葉があるくらい、いったん噴出した自分自身の心情に折り合いをつけるのは、難しいものです。その結果、お互いの感情はもつれ、当人たちでは、どうにもならないところまで、状況を深刻化させてしまうわけです。

 

あえて言えば、調停、ましてや裁判というところまで来てしまうと、もはや兄弟間の関係修復も困難になってしまうでしょう。第三者に強制的に遺産分割のやり方を決められたあげく、裁判費用などの出費が嵩んだだけで、誰一人得することはなかった、などということも十分起こり得ます。僅かな金額で意地を張り合ったために、そんな不幸な結果を招く。決して誇張した話ではありません。

争いを防ぐには、「事前の準備」しかない

そんなことにならないために、「うちの家族に限って、相続争いなど起こるはずがない」という思い込みは、一切捨てましょう。親は、子どものすべてを知っているわけではありません。兄弟姉妹同士でも、相手が自分のことを本心でどう思っているかなど、わかっていないのです。

 

その状態で、子どもたちがいきなり遺産分割の話を始めれば、想定外のトラブルが発生しやすくなるのは、当然でしょう。大事なのは、親が生前にきちんと相続の準備をしておくことです。最も有効なのは、遺産分割の方法を明示した遺言書の作成です。その上で、子どもたちにも、なぜそういう分け方をするのかを説明し、理解を得ておくのが理想的。誤解やわだかまりも、親が生きているうちならば、解消することが可能なはずです。

まとめ

「相続の争いは、税金をたくさん払うようなお金持ちの世界の話」というのは、まったくの誤解です。少額でも揉める、その原因は「感情」――という事実を踏まえて、きちんとした遺言書を残すなど、事前の準備を怠らないようにしましょう。

この記事の執筆者
相続財産センター編集部
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