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あなたもいつかは「当事者」に 知っておきたい相続の流れ
2019年6月28日
相続税の申告は、被相続人が亡くなってから10ヵ月以内にしなくてはならない――。例えばあなたは、そんな決まりをご存知でしょうか? 人口の高齢化が進むにつれて増える相続。争いになったり、余計な税金を納める羽目になったりしないために、まずはその大まかな流れを理解しておくことが大切です。わかりやすく解説しましょう。
実は大事な「事前の準備」
この表にもあるように、実は相続は、被相続人(遺産を渡す人)が亡くなる前から「始まって」いるのです。それどころか、相続に詳しい税理士などの専門家は、「生前の準備が、相続をスムーズに進めるための最大のポイント」と口を揃えるほど。では、どんな準備が必要になるのでしょうか?
相続税対策
大きな資産を持っている場合には、相続税対策が必要になります。これを怠ると、子どもに遺産を渡せたのはいいけれど、彼らが税負担で大変な思いをすることになるかもしれません。税金の支払いは現金が基本ですから、不動産をもらったのはいいけれど、税金の原資が足りなくて右往左往、などということが起こり得るわけです。
相続税を減額する方法はいくつかありますが、遺産を渡したい人に直接渡して、なおかつ節税になるというメリットがあるのが、「生前贈与」です。年間110万円までなら無税で渡せますし、多少オーバーするくらいなら、大した税額にはならないでしょう。「資産を移す時間」がある場合には、とても有効な相続対策になります。
遺言書の作成
遺産を渡す人にとってもう1つ大事なのが、その分け方をはっきり決めて、意思を伝えておくこと。「争続」を防ぐためにも、きちんとした「遺言書」を書いておくべきというのが、やはり専門家の一致した意見です。
相続の手続きには、期限もある
生前の対策が被相続人の役目なら、その被相続人が亡くなって相続が発生してからは、相続人(遺産を受け取る人)の仕事になります。
死亡届の提出、葬儀
市区町村役場に、死亡後7日以内に提出する必要があります。その際に発行される火葬許可証を葬儀社に持参し、速やかに葬儀、火葬を行います。
遺言書の有無の確認
さきほど遺言書に触れましたが、これが残されているか否かで、手続きも含めた相続の進め方は、ガラリと違ってきます。遺産分割というと、「配偶者1/2、子どもが1/2」といった「法定相続分」が頭に浮かぶかもしれませんが、もし被相続人の遺言書があれば、そこに書かれている中身が優先します。そういう法的効力を持つ遺言書ですから、相続人は、まずその有無を調べなくてはなりません。
故人が使っていた机の奥から、封筒に入った遺言書(「自筆証書遺言書」)が出てきても、勝手に開封してはいけません。その場合には、相続人全員が家庭裁判所に出向いて、開封、確認のうえ証明書をもらう「検認」という手続きが必要になるのです。
また、被相続人が公証役場に行って公証人に代筆、保管してもらう「公正証書遺言書」を作成している可能性もあります。公証役場で申請すれば、遺言書の有無を検索することができますから、調べてみましょう。
法定相続人の調査・確認
遺言書が残されていなかった場合には、相続人(正確には、民法に定められた「法定相続人」)が話し合って、遺産の分け方を決めなくてはなりません(「遺産分割協議」)。この協議には相続人全員の参加が不可欠なので、「誰が相続人なのか」を調べる必要が出てきます。例えば、兄弟が合意しても、被相続人が秘かに認知していた子どもが名乗りを上げたら、協議はやり直し。被相続人の、生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍謄本などを精査し、相続人を確定させなければならないのです。
相続放棄・限定承認
財産だけでなく、被相続人の残した借金や負債も相続の対象になることをご存知でしょうか。相続人は遺産を受け取るどころか、返済を肩代わりしなくてはなりません。そういう場合には、「相続放棄」の手続きを取れば、返済の義務を免れることができます。ただし、プラスの財産についても、一切を放棄することになります。
これに対して、借金の債権者などに必要な支払いをして残金を相続できるのが、「限定承認」です。相続放棄が1人でもできるのに対し、こちらは相続人の「全員参加」が条件になります。
注意すべきは、これらの手続きには、「相続の開始を知った日(通常は被相続人の死亡を知った日)から3ヵ月以内」という期限が区切られていること。この3ヵ月を「熟慮期間」と言って、財産の評価に時間がかかるといった理由で延長を申し出ることはできますが、期限が過ぎたら、相続を承認したと判断されてしまいます。相続放棄などを考えるのならば、素早い行動が求められるわけです。
被相続人の所得税申告
被相続人が個人事業を営んでいて、確定申告の義務を負っていた場合などには、「準確定申告」と言って、相続人が代わって申告、納税しなくてはなりません。これにも期限があって、「死亡後4ヵ月」となっています。通常の確定申告(事業年度の翌年の2月16日~3月15日)と異なることに要注意で、これを過ぎると延滞税などがかかってくる恐れがあります。
遺産分割協議
繰り返しになりますが、被相続人の有効な遺言書が残されていた場合、問題がなければ、遺産はそこに書かれた内容通りに分けられることになります。一方、遺言書がない場合には、「遺産分割協議」をしなくてはなりません。ちなみに、遺言書があっても、相続人が遺産分割協議を開き、全員の合意のもとに、遺言書の中身とは違う形で遺産を分け合うことは可能です。
遺産分割協議がまとまると、「遺産分割協議書」が作成されます。相続人は、それぞれこの「協議書」を証明書にして、預貯金の払い戻しや、不動産の名義変更といった相続手続きを進めていくことになるのです。
不動産の名義変更
相続手続きには、基本的に期限は設けられていませんが、特別の事情がない限り、できるだけ速やかに進めるべきでしょう。特に気をつけたいのが、不動産です。名義変更(相続登記)はいつでもできるのですが、だからといって何十年も放置するのは、トラブルの元です。結局変更しないまま、子どもに相続することになってしまったら最悪。実際、そのように何代も経過したために、誰の土地なのか判然としなくなってしまうケースが、少なからずあるのです。不動産を相続したら、「特に問題はないから」とそのままにするのはやめ、早めに登記を行いましょう。
相続税の申告期限は10ヵ月
相続税の申告・納付
遺産を相続したら、すべての人に相続税の申告義務が生じるわけではありません。相続税には、「3000万円+600万円×法定相続人の数」という基礎控除があり、遺産がこの額を下回れば、課税されることはないのです。
相続税の申告期限は、「相続人の死亡を知った日の翌日から10ヵ月」と定められています。この場合の申告期限とは、税務署にいくら支払うのかの書類を提出するだけでなく、納税も済ませることを意味しています。期限を過ぎると、やはり延滞税などが課せられることになります。
遺産分割協議が未了の場合は……
遺産分割協議が「10ヵ月」で終わる保証はありません。実際には、それを過ぎても揉め続けることが、少なくないわけです。ただし、その場合にも、相続税が発生する場合には、申告期限が来た時点で、法定相続分に従っていったん納税する必要があります。
その後、引き続き協議を続けて、合意ができた時には、その内容で税務署に対して「更正請求」という手続きをすれば、相続税を再計算することができます。払い過ぎた相続人がいれば還付を受け、反対に足りなかった人は追加分を支払うことで、一件落着。残念ながら相続人同士では結論を出すことができなかったら、裁判所による「遺産分割調停」や、さらには正式な裁判で決着をつけることになります。
まとめ
相続になれば、相続人にはやることがいっぱい。しかも、今回示したのは、あくまでもアウトラインで、説明しきれないことが数多くあります。不明、不安な点を感じたら、相続に強い税理士などの専門家に相談してみたらいかがでしょうか。