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作りやすくなった「手書き」の遺言書 でも、相続人は意外に大変

作りやすくなった「手書き」の遺言書 でも、相続人は意外に大変

2019年10月4日

「自分が死んだら、財産はこう分けてほしい」。無用な相続争いを回避するためにも、きちんと遺言書を残すことは大切です。要件を満たしていれば、「手書き」(「自筆証書遺言書」)でも問題なし。しかも、2019年1月からは、その要件が緩和され、さらに作りやすくなりました。ただし、例えば「自筆」の遺言書は、相続人が勝手に開封してはいけないことをご存知でしょうか? あえて自筆証書遺言書のデメリット、リスクを確認しておきましょう。

さらに作成しやすくなった自筆証書遺言書

法的に有効な遺言書には、①「自筆証書遺言書」、②「公正証書遺言書」、③「秘密証書遺言書」の3種類があります。①は、中身を自分で書き、署名捺印したもの。それに対して②は、公証役場に出かけ、公証人に中身を伝えて書いてもらいます。③は、自分で書いた遺言書を公証役場に持参して、「遺言書があります」ということを証明してもらうやり方です。②の場合は、作成した遺言書を公証役場で保管してくれます。

手軽さで言えば、自筆証書遺言書が一番であることは明らか。作成の手数料も必要ありませんし、遺言の中身を公証人などの他人に知られることもありません。その手軽さをさらに高める法改正もありました。従来は、遺言書の全文、日付、氏名を自書する(自分で書く)必要がありました。しかし、財産の一部または全部の目録については、パソコンなどによる作成も認められるようになったのです。

この財産目録を手書きで作るというのが、なかなか大変で、間違いも起こりやすい作業でした。法改正により、自筆証書遺言書作成のハードルが、ぐんと低くなったのは事実。その施策の背景には、「積極的に遺言を書いて、相続トラブルを防ぎましょう」という当局の意向があります。老婆心ながら、今回自書以外が認められるのは、あくまで財産目録の部分。その他は引き続き自分で書かないと、自筆証書遺言書としての有効性が認められなくなりますから、注意してください。

自筆証書遺言書で必要になる家庭裁判所の「検印」とは?

さて、説明したように、遺言書を作る人にとっては手軽な「自筆」ですが、それを受け取る相続人も楽なのかというと、さにあらず。速やかに遺言書の内容を踏まえた遺産分割協議を始めることができる公正証書遺言書と違い、遺産分割をスムーズに進めるためには、けっこう面倒臭い手続きが必要になるのです。

被相続人(亡くなった人)の遺言書を、相続人の1人が他の相続人に黙って開封した。それがいけないことなのは、誰にでもわかるでしょう。でも、相続人全員が見ている前で開けるのならば、問題ないはず。いいえ、基本的にそれもNGなのです。

自筆証書遺言書、秘密証書遺言書が残された場合、相続人がまずやるべきことは、家庭裁判所への「検印」の申し立てです。遺言書の検印とは、相続人などの立会いの下で遺言書を開封し、遺言書の内容を確認する手続きのこと。遺言書の存在を明確にし、その後の偽造を防ぐためのものです。

この検印を受けるには、検印申立書のほかに、遺言者の出生から死亡までの戸籍や相続人全員の戸籍などを集めて、裁判所に提出する必要があります。書類に不備がなければ、相続人全員に遺言書検印日が通知されます。その日に全員が出向く必要はないのですが、申立人は欠席が許されません。

勝手に開けると罰則も!

正確に言うと、この裁判所による検印は、遺言書の内容の有効性にお墨付きを与えるものではありません。あくまでも、「こう書かれた遺言書が、確かにありましたよ」という証明なのです。ですから、検印後に遺言書の内容をめぐって争いになることもありえます。

また、検印がなければ遺産分割をしてはならない、という性格のものでもないのです。だったら、わざわざ裁判所に行く必要などないではないか、ということになりそうですが、遺産に不動産が含まれている場合、検印がないとその名義変更(相続登記)を行うことができません。被相続人の預貯金の口座は、相続人の誰かが勝手にお金を引き出したりしないよういったん凍結されますが、それを解除することも、解約することも認められません。

ですから、現実には、「自筆証書遺言書か秘密保持契約書は、速やかに裁判所に検印を申し立てる」必要が生じるわけです。なお、申立前に開封した場合、それで遺言書自体が無効になることはないのですが、罰則(5万円以下の過料)が課せられることを覚えておいてください。

以上は、ある意味「公的な」話なのですが、実際の相続では、それ以外にも、例えば次のような「自筆の遺言書ならではのデメリット」があるようです。被相続人の預貯金口座の凍結について述べましたが、必要書類なども含めて、その解除の「難易度」は、実は金融機関によって異なります。この分野に詳しい税理士によれば、「裁判所の検印を受けた遺言書があればスムーズに凍結解除するところがあれば、自筆である(公正証書遺言書ではない)ことを理由に、なかなかそれに応じない金融機関もある」のだそう。公証人の保証がある遺言書と、自分で書いたものには、社会的な信用度に差があるということなのでしょう。

良し悪しは別に、そういう現実があることは、認識しておくべきでしょう。自筆証書遺言書には、それ以外にも、偽造・変造がされやすい、相続人が発見できなかった、日付や押印なども含めて、書式に不備や誤りがあるために無効になってしまう――といったリスクがあります。どの種類の遺言書を作成するのかは、作りやすさとそうしたリスクを天秤にかけて考える必要がありそうです。

まとめ

原則として、自筆証書遺言書は作りやすいけれど、相続人にはけっこう大変な思いをさせることもあります。公正証書遺言書は、その反対。遺言を書く際には、そうしたファクターも頭に入れて、最適と思える方法を選びましょう。

この記事の執筆者
相続財産センター編集部
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