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相続割合を決める時は「寄与分」に注意!相続税にも影響あり?
2021年11月5日
目 次
相続時遺産を分割するには、遺言状がなければ相続人間で遺産分割協議を行うことになります。
全相続人に対し本当の意味での「公平」な遺産分割を行うためには、ときに相続人が故人の生存中に故人のためにした行為を考慮する必要が出てきます。法律的にも認められているこの「寄与分制度」につき、相続税との関係をも踏まえて以下に詳しく解説していきます。
「寄与分」は相続人の故人への貢献度
「寄与」とは、ある相続人が被相続人に対して生前様々な貢献をしていた場合に認められる考え方です。寄与分制度とは、他の共同相続人よりも貢献してきた分を相続額に上乗せできるというものです。(民法第904条の2)。寄与分制度は相続人間の公平が図れる
ここで、亡くなった被相続人に子が2人いた場合を例としてみましょう。1人は親の近くで日々面倒を見て施設入所の費用を持ち、最期まで献身的に世話をしていたとします。一方で、もう1人は遠くに住み、親の面倒も世話に必要な費用の捻出も全くしてこなかった場合はどうでしょうか。
心情的に、遺産を法定相続分とおりに等分するのは公平でないと感じられることが多いでしょう。寄与分制度は、相続人の貢献度を相続分に上乗せすることで、少しでも公平感を図るためにある制度なのです。
寄与が認められる場合とは
上述の民法904条の2では、寄与を行ったと認められる者として以下の4つを挙げています。- ①労務の提供をした者
- ②財務の提供をした者
- ③療養看護をした者
- ④その他の方法により財産の維持又は増加について特別の寄与を特別な働きした者
各々を具体的にみていきましょう。
- ①故人の事業を手伝っていた者は、故人の財産形成に貢献したとされます。ただし寄与として認められるのは、無償か、給与が一般的にみてかなり少額である場合のみです。
- ②故人の入院費、施設入所費の負担や、故人の債務を肩代わりして返済しているなど、金銭による貢献をした者です。
- ③長く故人の介護を献身的に行ってきた場合に寄与とされます。必要に応じて買い物など身の回りの世話をしていた程度では寄与とは言えないことがあります。
- ④「特別」と言えるには「故人の生前に財産管理を無償で行っていた」「生活費を全面的に負担していた」など、故人の財産形成に明らかに貢献していた事実が必要です。
寄与分はどう計算するか
寄与行為は①~④のどの場合であっても、いくら上乗せするべきかの額を明確に算定しなければなりません。もちろん遺産分割協議において相続人内で話がまとまれば、額がいくらになろうと問題はありません。しかし、他の共同相続人に「寄与分など認めない」と言われれば、裁判所に調停を申し立てるしかありません。
その場合の目安として、例えば
- ①なら寄与者が本来受け取るべき年間額×労務年数
- ②なら寄与者が負担した額
- ③なら介護人を雇った場合の日当×介護日数
を基礎として考えることになります。
ただし実際には故人と同居していて浮いた生活費や貨幣価値の変動などを考慮するため、額の算定はかなり複雑になります。
寄与分は請求する必要がある
共同相続人は、どの相続人がどれだけ故人に寄与してきたかは分からないので、寄与者はまず自分の貢献度を具体的に他の相続人に説明しなければなりません。いかに故人の事業を手伝って発展継続を可能にしたか、いくら費用を負担したかなどの貢献度を、資料や領収書などの証拠により証明する必要があるのです。協議がまとまらず裁判所での調停に移ったとしても、これらの証拠がなければ寄与分が言い分通り認められることは難しいでしょう。新たな制度「特別寄与料」とは
寄与分制度が有効に利用されれば確かに相続人間の不公平間の是正には役立つことでしょう。しかし、法定相続人でなくても故人に多大な寄与を行った者がいた場合、その貢献に報いることもまた、公平を期するために必要ではないでしょうか。「特別寄与料制度」はそのために生まれた新たな制度なのです。
法定相続人でなくても寄与分が請求できる制度
ご存じのように被相続人の子は第一順位の法定相続人ですが、子の配偶者は相続人にはなりません(民法第887条)。相続人となれるのは被相続人の直系のみで姻族は含まれないからです。しかし夫の母(義母)を献身的に介護してきた妻が、義母が亡くなった時既に夫も亡くなっていた結果、一銭も遺産を貰えないというのは余りにも不公平過ぎるといえます。そこで、2019年のいわゆる「民法大改正」の際、新たに加わったのが「長男の嫁」などを想定した特別寄与料制度です。(民法第1050条)
ただし、特別の寄与が認められる要件は、相続人の寄与制度と比べると極めて限定的で、「労務を提供した場合」のみとなります。基本「無償の療養看護」に対する見返りと考えてよいでしょう。
内縁の妻は「特別の寄与」が認められる?
それでは様々な事情により、未入籍のまま内縁の夫の親の看護・介護をつとめた内縁の妻にも特別寄与料制度が認められるでしょうか。答えは「ノー」です。前述の民法第1050条は、本制度が適用される範囲を「法定相続人ではない親族」に限定しています。親族は一般的に「6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族」をいうので、戸籍上何のかかわりもない内縁関係者は請求者に含まれないのです。
したがって、亡き子の内縁の妻の貢献に報いたい場合、親は生前贈与、もしくは遺言書を作成して遺贈するしかありません。注意が必要です。
寄与分を考慮した相続分の計算方法
寄与分が認められた場合、相続人間の相続分はどう計算するかを知っておきましょう。寄与分相当額さえ決まればあとはさほど複雑ではありません。寄与分がある場合の相続分の計算式
まず被相続人の財産総額から寄与分相当額を差し引き、残額を各相続人に法定相続分で分割します。最後に寄与者が寄与相当額を受け取ります。すなわち、寄与分を受け取る側の相続分は
(相続開始時の相続財産の価額-寄与分額)×相続分+寄与分額=相続分
となり、一方、寄与行為をしていない相続人は
(遺産総額-寄与分)×法定相続分=相続分
となります。
寄与分がある相続分の具体例
被相続人の遺産総額が6,000万円、相続人が子3人(A、B、C)とします。法定相続分はそれぞれ2,000万円ですが、Aが1,000万円、Bが500万円寄与したと認められた場合、寄与相当額は計1,500万円となります。つまり、
Aは(6,000万-1,500万)×1/3+1,000万=2,500万円
Bは(6,000万-1,500万)×1/3+500万=2,000万円
Cは(6,000万-1,500万)×1/3=1,500万円
がそれぞれ相続分となります。
寄与分がある場合相続税はどうなる?
寄与者や特別寄与者であっても、自身の相続分に関しては相続税の対象となります。寄与行為に関しては相続人間の主観の相違などから話し合いが長引くことも予想されますが、相続税の納付期限(相続開始から10カ月)には十分注意しましょう。相続人間での税金計算方法
寄与分はすべて被相続人の財産から差引や受取を行うため、相続財産の総額は変わらず、納税すべき額も変わりません。ただ個人の相続分と、それに伴う各相続人の納税額が変わるだけです。上の例でいえば、相続税の対象となるのは6,000万-(3,000万+600×3)=1,200万で、
相続税額は1,200万×15%-50万=130万円です。
そして各人の相続分(A…5/12、B…4/12、C…3/12)に応じて税額を負担することになります。
特別寄与者も相続税納税義務はある?
特別寄与者であっても財産を受け取ることに違いはなく、課税の対象となります。特別寄与制度の開設時に相続(遺贈)と考えるか、単に贈与と考え贈与税の対象とするかが議論となり、結果として遺贈とみなされ相続税の対象となりました(相続税法第4条第2項)。したがって特別寄与者の相続税額は通常の法定相続税額の2割増しとなります。まとめ
寄与分・特別寄与分は、生前故人に貢献した相続人や親族に対し、せめて相続分を多くすることで相続人間の不公平感を埋めるための制度です。親の世話を子が見るのは当然と考えること確かには立派ですが、他にも兄弟姉妹がいるにもかかわらず、自身が一手に費用負担や介護のすべてを背負うことまで当然と考える必要はありません。せっかくの制度なのですから相続時に堂々と主張してください。そのためには日頃からしっかり記録をつけ資料を残しておくことが大切です。▼参考URL
- https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
- https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm
- https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm
- https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000073
- https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4157.htm