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節税のための生前贈与ができなくなる!?検討が進む「相続税・贈与税の一体化」を解説

節税のための生前贈与ができなくなる!?検討が進む「相続税・贈与税の一体化」を解説

2021年11月8日

年に110万円までなら、子どもなどに贈与しても税金はかからない――。実際にこの仕組み(贈与税の基礎控除)を使って贈与を行っている人も少なくないでしょう。この生前贈与は、相続時の財産を減らす=相続税を抑えるのにも有効なのですが、今その「廃止」が検討されているのをご存知でしょうか? 早ければ来年(2022年)度中の法改正も視野に入る「相続税と贈与税の一体化」について解説します。

相続税と贈与税をおさらい

ある人の財産を存命中に渡されたら「(生前)贈与」、亡くなって受け継げば「相続」です。所得があったり(所得税など)、消費したり(消費税)した時と同様、いずれも一定額を超えると税金がかかってきます。実は贈与税は相続税を補完するものと位置づけられているのですが、税率などには違いがあります。概要をおさらいしておきましょう。

相続税は「累進課税」

相続税には、基礎控除(「3,000万円+600万円×法定相続人の数」)があります。例えば相続人が配偶者と子ども2人の計3人ならば、上の式に当てはめ、被相続人(亡くなった人)の遺産が4,800万円までなら、相続税はかかりません。

遺産がこれを超えると相続税が課税されるのですが、この税は累進課税と言って、譲られる財産が大きくなるにつれて税率もアップしていきます。多額の相続を受ける人に多くの税金を負担してもらい、資産の再分配を図るのが目的です。

贈与税には「暦年課税」と「相続時精算課税」がある

●贈与税の歴年課税

一般に「生前贈与」と言われるのは、「暦年贈与」です。最初に申し上げておけば、今回見直しの対象として取り上げられているのは、この暦年贈与です。

暦年贈与の場合、贈与税は、毎年1月1日~12月31日までに譲り受けた財産の合計額から110万円を差し引いた残りの金額(課税価額)に、税率を掛けて算出します。税率は、課税価格200万円以下は10%、200万円超~400万円以下は15%のように、やはり累進課税になっていて、最高税率は4,500万円超の55%です。同じ金額を渡す場合には、基本的に相続税よりも高い税率がかかってきます。

ただし、今触れたように、贈与額が年間に110万円以内であれば、贈与税はかかりません。申告の必要もないのです。まとまった贈与をしたい場合には、この「非課税枠」を使って、何年もかけて渡していくという方法が、節税策の定番として用いられるわけです。

●相続時精算課税

贈与には、このほか受贈者(贈与を受ける人)が2,500万円まで贈与税非課税で贈与を受け(2,500万円を越えた分には、一律20%課税)、贈与者が亡くなった時に他の相続財産と合計した金額から相続税額を計算し、一括して相続税として納税する「相続時精算課税」があります。とりあえず免除してもらった贈与税を、後に相続税で清算することになります。

なぜ今「相続税と贈与税の一体化」なのか?

「本格的な検討」に言及

贈与税は相続税を補完すると言いましたが、その仕組みを大きく見直そうという「改革」が進行中なのです。2020年末に発表された21年度税制改正大綱には、「資産移転の時期の選択に中立的な相続税・贈与税に向けた検討」として、次のような指摘が盛り込まれました。

「諸外国では、一定期間の贈与や相続を累積して課税すること等により、(略)意図的な税負担の回避も防止されるような工夫が講じられている」 「今後、こうした諸外国の制度を参考にしつつ、相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、(略)格差の固定化の防止等に留意しつつ、資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める」

具体的にどのような検討がなされているのかは、「参考」にする海外の状況を見れば、おのずと明らかでしょう。

「一体課税」が標準の欧米諸国

アメリカでは、「遺産課税方式」といって、相続が発生すると、その時点での財産に過去の贈与分をすべて合算し、遺産税(相続税)が計算されます(一生累積課税)。また、ドイツやフランスは「遺産取得課税方式」で、相続財産に相続発生前の一定期間内(ドイツ10年、フランス15年)の贈与額を加算して、相続税を計算します。

いずれも相続税と贈与税は統合されていて、資産を譲るタイミングに関係なく、同じように課税されます。従って、「相続対策として少しずつ生前贈与を行う」といった節税策は、講じようがありません。

なお、日本でも相続前3年間の贈与に関しては、相続財産に「持ち戻し」(加算)されて、相続税を計算し課税されます。

「富裕層の節税対策」がターゲット

相続税と贈与税の一体化は、ひとことで言えば、「基礎控除を活用した贈与によって財産を減らし、将来の相続税を減額する」という形の節税(税負担回避)にブレーキをかけるのが目的です。さきほどの暦年贈与は、贈る相手が何人であっても、それぞれに110万円の基礎控除が適用されます。つまり、贈与する期間が長く、例えば子や孫など財産を渡す相手が多ければ、それだけ大きな節税メリットを得られることになるわけです。

議論されている「改革」は、所有する財産の大きな富裕層をターゲットにしたものと言っていいでしょう。課税方法を現行の「贈与税か相続税か」から「資産を渡すときには、必ず相続税」という形に作り替え、今まで以上に資産家、高所得者にしっかり税を負担してもらおう、というのが「大綱」から読み取れる目的です。

「贈与税の見直し」にどう対処すべきか

贈与の節税効果はなくなる?

今後注目されるのは、来年度の税制改正に向けた具体的な論議の行方です。もし相続税・贈与税の一体化が税制改正法案に盛り込まれた場合には、早ければ22年度中に国会で成立・施行される可能性もあります。

一方で、一気に贈与の節税効果をゼロにするのは難しいのではないか、という見方もあります。実際には、このやり方で生前贈与を行っているのは、富裕層の人たちだけではありません。改革を急げば、影響が広範囲に及ぶ可能性があります。

そこで、もう1つ可能性として指摘されているのが、さきほど説明した「相続前3年間」という「持ち戻し期間」の延長です。当然、延長期間が長くなれば、その分節税効果は薄れることになります。

いずれにしても、近い将来、現状に比べて「生前贈与による節税」が難しくなるのは確かなようです。

「急いで贈与」は正しいか?

では、渡したい財産がある場合には、どう行動すべきでしょうか? この先、制度が見直されるのは必至の状況ですから、節税効果が期待できる贈与については、早めに実行するのがいい、という考え方が成り立ちます。

ただし、「今のうちに、できるだけ多く渡してしまおう」と考えるのは、待ってください。さきほども述べたように、渡すのが同じ金額でも、税率は相続税よりも贈与税のほうが高く設定されています。節税できるのは「少しずつ渡していく」場合に限られることに、注意しましょう。

まとめ

贈与税の暦年贈与などを見直し、相続税と一体化させようという論議が、国レベルで本格化しています。今後、生前贈与による節税は、徐々に難しくなることが予想されます。子や孫にどのように資産を渡したらいいのか、迷ったら早めに税のプロである税理士と相談してみることをお勧めします。

この記事の執筆者
相続財産センター編集部
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