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親の相続は2回ある。なぜ「二次相続」に注意が必要なのか?

親の相続は2回ある。なぜ「二次相続」に注意が必要なのか?

2022年2月8日

一般的に親の相続は、例えば「父が亡くなった10年後に母が他界した」のように、2回発生します。どちらもやるべきことは同じだろう、と考えるのは早計です。うっかりしていると、二次相続(2回目の相続)で高額の相続税を課せられる可能性があるのです。加えて、二次相続の難しさは「お金」の問題だけではありません。どのようなことに留意すべきなのか、ポイントをまとめました。

「最良の一次相続」は失敗のもと!?

相続税の節税策は?

相続税には、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という基礎控除額が設けられています。例えば、相続人が妻と子ども2人の計3人ならば、「3,000万円+600万円×3」=4,800万円となり、被相続人(亡くなった人。この場合は夫)の遺産がこの範囲内であれば、申告・納税は不要です(ただし、以下で説明する「小規模宅地等の特例」などを利用した結果、基礎控除額を下回る時には、申告が必要です)。

基礎控除額を超え、相続税の納税義務が発生した場合にも、次のような税の優遇措置や節税の手立てがあります。

●相続税の配偶者控除
被相続人の配偶者の相続に関しては、受け取る財産が「1億6,000万円」か「法定相続分相当額」のどちらか多い金額までは課税されません。

●小規模宅地等の特例
被相続人と同居していたなどの要件を満たせば、居住用、事業用に使っていた宅地の評価額を最大80%減額できます。自宅などの不動産は評価額が大きくなるため、それを8割カットできるこの特例の節税効果は絶大です。

●生命保険金と死亡退職金の非課税枠
それぞれ、「500万円×法定相続人の数」まで、非課税で受け取ることができます。

一次相続と二次相続では事情が変わる

節税できるのは嬉しいのですが、一次相続と二次相続では、その効果などに違いが出てくることに注意が必要です。

●二次相続では法定相続人が減る
二次相続では、「残った親」が亡くなるわけですから、相続人は1人減ります(他の相続人に変動がない場合)。最初に説明した基礎控除額は600万円、生命保険金・死亡退職金の非課税枠は500万円減額されることになります。

相続人が減る影響は、それだけではありません。相続税の計算は、各人が相続した金額に税率を掛けるのではなく、まず総額を出してから、それを実際の遺産の取り分に応じて負担する、という仕組みになっています。例えば、相続人が法定相続分に従って財産を分けたと仮定すると、そのそれぞれの相続額に累進税率(金額が大きくなるほど税率もアップ)を掛けた金額を合計して、算出します。相続人が減れば、1人当たりの相続額が増加→高い税率が適用となる可能性があり、合計の相続税を引き上げる要因になるということです。

例)相続税が課税される遺産の総額が6,000万円の場合
※遺産を均等に分けたと仮定

相続人の数 相続人1人あたりの取得分 課税される相続税の金額
3人 2,000万円 2,000万円×税率15%-控除額50万円=250万円
2人 3,000万円 3,000万円×税率20%-控除額200万円=400万円

●配偶者控除は使えない
控除額の大きい配偶者控除ですが、その配偶者がいなくなる二次相続では、残念ながら使えません。

●小規模宅地等の特例適用にもハードルが
一次相続で配偶者が自宅を相続する場合には、問題なくこの特例が適用されます。ただ、子どもなどの場合には、被相続人と同居していた、3年間借家住まいだった、などの要件を満たす必要があり、やはり二次相続で「問題化」する可能性があるでしょう。例えば、実家以外の場所に住んでいる相続人は、特例の対象外とされ、評価額がそのまま相続財産にカウントされることになります。

●二次相続で有効な「相次相続控除」とは
一方、二次相続では、「相次相続控除」という相続税の特例を使える場合があります。ただし、適用には、次の条件をすべて満たす必要があります。

  • ①控除の適用を受ける人が、被相続人の相続人であること。
  • ②前回の相続開始から今回の相続の開始まで10年以内であること。
  • ③前回の相続で、今回の相続の被相続人に相続税が課税されていること。


例えば、被相続人が、一次相続で配偶者控除などを使って相続税を支払っていなかった場合には、この控除は使えません。納税していても、相続から10年を過ぎていたら、やはり適用外です。

詳しくは https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4168.htm

相続は、一次、二次トータルで考える

最後に相続税を支払うのは子ども

一次、二次相続に説明したような差異があることなどから、一次相続で目いっぱい控除などを使って節税できたけれど、結果的に配偶者のもとに多くの財産が残り、二次相続の際の子どもの課税額が膨らんでしまった、ということが実際に起こり得ます。特に注意すべきは、簡単に多額の節税ができる配偶者控除です。考えてみれば、一次相続で配偶者控除を多く使うということは、「納税の先延ばし」にほかならないのです。

両親から子どもへの相続の場合、最終的に相続税を支払うのは、子どもです。そうした視点に立って、トータルな節税を心掛ける必要があります。

シミュレーションが不可欠

一般的に、特に高額な相続税が予想されるような相続では、一次相続で多少税金が増えても、できるだけ子どもに財産を譲っておくことを念頭に置くべきでしょう。とはいえ、最適なやり方は家族ごとに違います。財産の規模、子ども(相続人)の人数、親の残した自宅に住むのか、残された親の生活費の確保など、さまざまなファクターを考え併せて答えを出す必要があるからです。そのために求められるのが、納税額などの正確なシミュレーションです。

「争続」になりやすい二次相続

二次相続には、もう1つ見落としてはならないことがあります。一次相続では、どちらかの親が残っていて、相続のまとめ役、ないし子どもたちのお目付け役としての役割を果たします。ところが二次相続では、そうした存在が消え、兄弟姉妹同士が協議を行うことになるでしょう。それぞれの本音をぶつけやすい状況が生まれ、その結果、気づいたら骨肉の争いになっていた、といったケースが珍しくありません。

遺産分割の合意ができなければ、説明したような税の特例も基本的に使うことができず、税負担が大きくなります。そういった意味でも、一次相続の前から二次相続までを見通した遺産分割について、家族で話し合っておくのが理想的と言えるのです。

まとめ

相続においては、二次相続までトータルに見据えた遺産分割が、節税の鍵になります。重要なのは、家族の生活実態や将来を加味したシミュレーションです。相続財産が大きい場合には、相続に詳しい税理士などの専門家に相談することをお勧めします。

この記事の執筆者
相続財産センター編集部
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