- 相続に強い税理士を探す >
- 今知りたい!相続お役立ち情報 >
- 仏壇や仏具は相続税が非課税!“税金対策”として活用できるって本当?
仏壇や仏具は相続税が非課税!“税金対策”として活用できるって本当?
2022年2月22日
相続税を気にされている人の中には、「仏壇や仏具を購入すれば対策になる」という話を聞いたことのある方がいらっしゃるのではないでしょうか。確かにそれらの“財産”には、原則として相続税がかかりません。ただし、課税対象となる場合や、税金ばかりに目を奪われていると陥りやすい“落とし穴”もありますので、注意が必要です。今回は、仏壇・仏具などによる節税のポイントを解説します。
仏壇や仏具はなぜ相続税対策になるのか?
相続税の仕組みを知る
相続税は、被相続人(亡くなった人)の残した相続財産にかかる税金で、それを取得した人に支払い義務が生じます。この財産は、「現金、預貯金、有価証券、宝石、土地、家屋などのほか貸付金、特許権、著作権など金銭に見積もることができる経済的価値のある全てのもの」(国税庁ホームページ)を言います。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/shinkoku/sozoku/sozoku.htm
ただし、すべての相続が課税対象になるわけではなく、相続財産が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という「基礎控除」の範囲内であれば、相続税は発生しません。例えば、法定相続人が「配偶者と子ども2人」の計3人であれば、4,800万円までは非課税になるのです。
相続財産が上の基礎控除を上回る場合には、基礎控除を差し引いた課税遺産総額に課税されることになります。実は相続税の計算方法は少し複雑で、今回は割愛しますが、いずれにしても財産額が大きくなるほど税率自体も高まっていく「累進課税」になっているのがポイントです。相続財産額を、できれば非課税の基礎控除の範囲に収める・課税される場合にもできるだけ低い税率にとどめることが非常に重要な意味を持つわけです。
国税庁が認めた相続税非課税
その相続財産の減額に、仏壇や仏具の購入は効果があります。さきほど相続財産の定義を記しましたが、国税庁は例外として「相続税がかからない財産」を認めていて、そのうちの1つに「墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしている物」が含まれているからです。
例えば、被相続人が生前にこれらを100万円購入すれば、現預金は100万円減ります。購入した仏壇や仏具は非課税ですから、相続財産は100万円まるまる減額することができるわけです。
仏壇、仏具はなぜ非課税なのか?
ところで、相続税が非課税になる財産には、このほか「宗教、慈善、学術、その他公益を目的とする事業を行う一定の個人などが相続や遺贈によって取得した財産で公益を目的とする事業に使われることが確実なもの」や「相続によって取得したとみなされる生命保険金のうち500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分」などがあるのですが、そもそもどうして仏壇や仏具に税金が課せられないのでしょうか?
これらは、「ご先祖を祭る」という宗教的・精神的な領域に属する「祭祀財産」です。それは「経済的価値」とは無関係なので課税はしない、と理解すればいいでしょう。次に述べますが、裏を返すと「経済的価値を追求した」と認められる場合などには、課税対象とされる可能性があることに注意しなくてはなりません。
要注意!相続税対策にならないこともある
「被相続人本人が、生前に購入する」のが条件
説明したように、仏壇や仏具を購入して相続財産を減らせば、相続税対策になります。ただ、この場合の相続財産というのは、あくまでも相続発生時(被相続人がなくなった時点)のものである点に注意が必要です。相続発生後に、相続予定の現金から被相続人が代金を支払って購入しても、税金が減額されることはありません。あくまでも被相続人本人が生前に買って、現金を減らしておくことが必要なのです。
また、買い方にも気をつけましょう。税金対策になるからと高額の仏具などをローンで購入した場合、万が一支払いの途中で亡くなってしまっても、残債は債務控除(※)の対象とはなりません。つまり、残りのローンを相続人が支払うことになり、やはり節税効果が殺がれてしまうのです。「節税対策としての仏壇、仏具は、生前に現金で購入する」のが、基本と言えるでしょう。
※相続税の債務控除:被相続人に借入金などの債務があった場合には、遺産総額からそれを差し引き、納付する相続税額の負担を減らすことができる。
非課税にならない仏壇や仏具もある
もう1つ気をつけたいのが、たとえ本人が生前に購入した仏壇や仏具であっても、課税されるケースがあるという点です。仏壇や仏具などを相続税非課税とした、さきほどの国税庁の「例外規定」には、「ただし、骨とう的価値があるなど投資の対象となるものや商品として所有しているものは相続税がかかります」という但し書きがあるのです。
これらと祭祀財産との線をどこで引くのかについて明確な定めはありませんが、例えば常識の範囲を超えた高額で華美なもの、純金製の仏具など換金性の高いものなどは、税務署に通常の財産として認定され、課税される可能性があるでしょう。相続税対策として購入を考えるのならば、こうしたものは避けるのが無難です。
節税にはなったけれど……
とはいえ、課税/非課税はグレーゾーンでもあります。仮に豪華な金の装飾が施された仏具を、後の換金目的で購入し、非課税が認められたとします。しかし、トータルで経済的なメリットが得られるかどうかは、また別の問題であることにも注意が必要です。
こうした装飾品には、価格に工賃などのコストが反映されており、同じ重さの金に比べればそもそも非常に割高な買い物です。仏壇や仏具の市場は限られるうえ、売る時には中古品になるでしょう。売価が購入価格を大きく下回り、結果的には相続税を支払った方がマシだった…ということにならない保証はありません。
このように見てみると、相続税対策として仏壇や仏具を購入するメリットは、実際にはかなり限定されることがわかります。考えてみれば、祭祀財産を経済的な相続税対策に積極的に使うということ自体、矛盾しているとも言えます。むしろ、先祖代々の仏壇が痛んできたので買い替えるような場合には、必ず相続財産を減らしたい人が生前に購入して節税しましょう…といったスタンスで考えるのが「正解」と言えそうです。
まとめ
相続においては、二次相続までトータルに見据えた遺産分割が、節税の鍵になります。重要なのは、家族の生活実態や将来を加味したシミュレーション。相続財産が大きい場合には、相続に詳しい税理士などの専門家に相談することをお勧めします。