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亡くなった親が税金を滞納していた!子どもに支払い義務はある?
2022年4月14日
被相続人(亡くなった人)が借金をしていた場合、その債務も相続の対象になる、すなわち相続人が弁済しなくてはならないということはご存知の方も多いと思います。では、税金の滞納があった場合、相続人はそれを引き継がなくてはならないのでしょうか?差押えが決まっていた財産はどうなる?今回は「滞納された税金の相続」について解説します。
被相続人が滞納していた税金の扱いは?
「亡くなったら支払い免除」にはならない
相続人には、被相続人が滞納していた税金の納付義務があるのか?答えは「イエス」です。
相続人は、借金と同じく“負の財産”として、それを相続しなくてはなりません。相続では、親や配偶者、子ども、祖父母のほか、兄弟姉妹や伯父(叔父)、伯母(叔母)などの相続人になるケースもあります。いずれの場合にせよ、もしそれらの被相続人に税金の滞納があった場合、納付する義務が承継されるのです。
相続の対象になるのは、所得税・贈与税・相続税・消費税(事業者だった場合)などの「国税」や、住民税・固定資産税・不動産取得税などの「地方税」全ての滞納分についてです。
納付義務の割合は相続人が決められる?
相続による財産の分割は、民法に定められた法定相続分に従って行われる場合もあれば、被相続人の遺言書や相続人の遺産分割協議によって決められることもあります。では被相続人の税金の滞納分についても、相続人の話し合いでその納付金額の割合を自由に決めることが可能なのでしょうか?
これについては、国税不服審判所(※)の次のような裁決があります。
共同相続人の納付義務の承継割合は、民法に規定する相続分の割合によることとなっており、たとえ遺産分割の協議で特定の相続人のみに相続させることとしても、納付義務の承継割合には影響を及ぼさない。(1970年11月6日裁決)
つまり、納付金額の割合は、原則として「どれだけの遺産をもらったのかに関係なく、法定相続分で決まる」ということです。正確には、「負担割合を遺産分割協議で決めることはできても、債権者(国や地方自治体)はそれとは関係なく、それぞれの相続人に法定相続分の割合に従って支払いを請求できる」ことになっています。
※国税不服審判所:国税に関する処分についての納税者の審査請求に対する裁決を行うことを目的に、1970年5月に設置された国の機関。
滞納した税金を放置するとどうなる?
納付期限を過ぎて税金を滞納すると、その日から延滞税(地方税は延滞金)というペナルティが課せられます。それも相続人が支払わなくてはならないのでしょうか?これもやはり「イエス」です。それどころか、もし税務署や自治体から督促状が来たのにそれを放置していると、電話や文書などによる「催告」、さらには相続人の財産の「差押え」という事態になる可能性があります。
すでに被相続人の財産の差押えが決定されていた場合には、当人が亡くなったからといって、その処分が解除されることもありません。例えば家の差押えが決まっていたら、相続人が税金の滞納分を完済するまで、それを避けることができないのです。
被相続人が税の滞納をしていた場合には、そうした「滞納処分」も継承することになります。“自分はきちんと納税している”という言い訳は、残念ながら通用しません。
被相続人が残した税金の滞納を支払わずに済む方法は?
相続財産には「プラスの財産」と、借金や説明してきた税の滞納などの「マイナスの財産」があり、その両方を相続することになります。差し引きプラスであれば特に問題ないのですが、問題はマイナスの財産が上回ってしまうケースです。そのような場合に通常取られる手段が「相続放棄」です。
相続放棄をすれば、納付義務も引き継がなくていい
「相続放棄」は、名前の通り相続を放棄する(相続人にならない)ことです。これが認められれば、被相続人の税金の滞納分を納付する必要はなくなります。ただし、相続放棄すると、マイナスだけでなくプラスの財産ももらうことができなくなることに注意しましょう。相続財産が本当にマイナスになるのかは、しっかり調べる必要があります。
相続放棄の手続きと注意点
相続放棄は、家庭裁判所に申述という手続きを行い、受理されれば認められます。ただし、この申述書の提出には「相続の開始を知ったときから3ヵ月まで」という期限があり、それを過ぎてしまうと放棄することができなくなります。
また、期限内に手続きを行ったとしても、被相続人の預金を引き出して使ったりすると、相続放棄が認められなかったり、「無効」になったりすることがありますので要注意です。
なお、相続人が受取人に指定されている生命保険金(死亡保険金)や遺族年金など「相続人固有の権利として受け取る財産」は相続財産には当たりません。そのため、受け取ったとしても、相続放棄には影響を与えない(=相続放棄できる)のです。
税金の支払いの「時効」には期待できる?
税金の支払い義務には、原則5年(贈与税は6年、不正があった場合には7年)という「時効」があります。滞納していても、この期間を過ぎれば納税免除となるのですが、その可能性はどれくらいあるのでしょうか?
これも残念ながら、「ほぼ0に近い」と考えてください。「税の公平」の観点から目を光らせる税務署の調査から逃れるのは困難で、相続が発生していたらなおさら詳しく調べられることになるはずです。時効に期待してダメもとで時間を稼いでいたりすると、さきほど述べた延滞税が嵩み、支払う税がより高額になるリスクがあります。
詳しくは『税金にも「時効」がある ならば「逃げ切れる」のか?』
まとめ
被相続人が税金を滞納していた場合、延滞税や「滞納処分」も含めて、相続人が引き継ぐことになります。相続放棄をすれば納付義務はなくなりますがプラスの財産も引き継げなくなること、相続放棄の手続きには期限があることなどに注意しましょう。迷う場合には、相続に詳しい税理士に相談するのがおすすめです。