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「相続関係説明図」の必要性とメリット、作成の方法について解説

「相続関係説明図」の必要性とメリット、作成の方法について解説

2022年9月13日

「相続関係説明図」と聞いても、初耳だという方が多いのではないでしょうか。ひとことで言えば、被相続人(亡くなった人)と相続人を一覧にした「家系図」のようなものなのですが、実際にはどのように使われるのでしょうか?また、相続になったら、必ず作らなくてはならないものなのか?今回は、相続関係説明図の作成の方法も含めて解説します。

相続関係説明図とは?

必須ではないが、場合によっては必要

相続関係説明図は、被相続人と全ての相続人の関係性を一目で分かるように表した書類(図面)です。一般にイメージする家系図との違いは、各人の住所や生年月日といった相続手続きの必要事項が、併せて記されることです。

この相続関係説明図は、相続に必ず必要になる書類ではありません。「場合によっては提出を求められることがある」「相続の中身によっては作成するメリットが大きい」という性格のものなのです。

自由に作成可能

また、特に決まった書式もなく、誰でも自由に作成することができます。後述するように、不動産の相続登記(名義変更)などの際に利用されますが、「どうせ必要な作業の延長線上のもの」ともいえ、この書類の作成のためだけに大きなエネルギーを費やさなくてはならないということも、基本的にありません。

相続関係説明図の提出先、作成のメリットは?

どんな手続きに使うのか?

では、この相続関係説明図は、具体的に相続のどんな手続きで使われるのでしょうか? 具体的に説明します。
(1)不動産の相続登記
被相続人の不動産を相続した場合は、相続登記をしなくてはなりません。登記の際には、法務局に被相続人と相続人全員の戸籍謄本、新しく名義人になる人の住民票などを提出する必要がありますが、併せて相続関係説明図を添付することで、後述のようなメリットがあります。

(2)預貯金口座の解約や名義変更
被相続人の預貯金口座は、相続人の誰かが勝手に引き出したりすることができないよう、一時的に「凍結」されます。凍結解除して口座の解約・出金や名義変更を行うためには、各金融機関の求める必要書類を揃えて手続する必要があります。必要書類は金融機関によって異なりますが、被相続人と相続人の戸籍謄本は必須です。金融機関によっては、相続関係説明図の提出も要求されることがあります。相続登記同様、任意で提出することもできます。

(3)税理士や弁護士などの専門家に依頼する際
相続税の申告を税理士に依頼するときや、弁護士に遺産分割に関する代理人を依頼する際などにも、相続関係説明図を求められることがあります。

(4)家庭裁判所による調停や裁判
相続人による遺産分割協議がまとまらない場合、家庭裁判所による遺産分割調停を申し立てることができます。それでも解決に至らなければ、裁判で争うことも可能です。そうした場合に、裁判所から相続関係説明図の提出を求められることがあります。

 相続関係説明図作成の2つのメリット

この書類を用意するメリットは、大きく2つあります。

1つ目のメリットは、上の(1)と(2)に関連するもので、相続関係説明図を提出すると、被相続人と相続人全員の戸籍謄本を全て返してもらえることです。これらを提出が必要な手続きごとに揃えるには、時間や手間がかかるほか手数料もかさみます。返却してもらえれば、それを他の手続きで“再利用”することができるわけです。

もう1つは、相続人の人数が多い場合などに、すばやく視認できる図面があれば、それぞれの関係性が分かりやすく、間違いも起こりにくいことです。一度作成しておけば、二次相続(※)などの際にも活用することができます。

逆に言えば、戸籍謄本の提出が必要となる不動産の相続がなく、被相続人の銀行口座も限られていて、相続人もわずか…というようなケースでは、無理して作成するメリットはあまりないといえるでしょう。
※一次相続、二次相続 両親の相続のうち、先に亡くなった親の相続が「一次相続」、残った親の相続が「二次相続」。

相続関係説明図作成の方法

何を記載するのか?

最初に述べたように、相続関係説明図には決まった書式はなく、記載事項が決まっているわけでもないのですが、法務局や金融機関などが知りたい事柄(戸籍謄本を返却しても問題のない情報)が書かれていなければ意味がありません。「記載すべき事項」は、以下のような点です。

対象 記載すべき事項
被相続人 氏名、住所、死亡日
相続人 氏名、出生日、現在の住所

以下に記載例を載せておきますので、参考にしてください。

引用:法務局公式ホームページより

配偶者は二重線、子どもなどその他の相続人は、一本線でつなぐのがいいでしょう。書式は「自由」ですので、縦書きでもかまいません。続柄や電話番号などを記載しておけばより丁寧で、自分たちも連絡を取り合うのに便利かもしれません。

この相続関係説明図は、相続人のうちの誰かが代表して作成するのが普通です。通常は、不動産を受け継ぐことになる人などがその役目を担うわけですが、相続人の間で事前に相続関係説明図を作成するか否か、作る場合には誰に任せるのかを話し合って決めるのがいいでしょう。なお、作成には他の相続人の同意は必要ありません。必要とする人が“勝手に”作成することもできます。

作成に際して揃えるべき書類

相続関係説明図の作成自体は、何も資料がなくても不可能ではないかもしれません。例えば、他の相続人の住所は教えてもらえば分かります。ただ、この書類が戸籍謄本の代わりになるような性格を持つ以上、以下の書類を揃えたうえで、正確な情報を記入すべきでしょう。なお、これらは相続登記などの際に必要になるものです。

  • ● 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本など一式
  • ● 被相続人の最後の住所を証明する住民票(除票)または戸籍の附票
  • ● 全ての相続人の戸籍謄本または戸籍抄本
  • ● 全ての相続人の住民票または戸籍の附表
ちなみに、戸籍は
  1. ① 本人が、本籍として記載されている住所がある役場の窓口で直接取得
  2. ② 本人からの委任状を持った代理人が、窓口で取得
  3. ③ 本人が死亡している場合は、本人との親族関係が確認できる資料(戸籍など)を持った親族が、窓口で取得
  4. ④ 郵送で請求、取り寄せる(本人死亡の場合でも可能)
  5. ⑤ コンビニのマルチコピー機でプリントアウト(マイナンバーカードが必要、対応していない市町村もある)
のいずれかの方法で取得できます。

「法定相続情報一覧図」との違いは?

公的書類か否か

実は説明してきた相続関係説明図と似たものに、「法定相続情報一覧図」があります。やはり被相続人と相続人全員の関係を表した図面なのですが、両者には以下に述べるような違いがあります。

    相続関係説明図
  • ● 公的な書類ではなく、記載内容は基本的に自由
  • ● 相続関係説明図を提出すれば、被相続人と相続人の戸籍謄本を返してもらえる
    法定相続情報一覧図
  • ● 法務省の「法定相続情報証明制度」によって公的に認証され、記載内容には決まりがある
  • ● 認証を受けた法定相続情報一覧図があれば、戸籍謄本の提出は不要になる

法定相続情報一覧図の記載内容は、以下の通りです。

対象 記載すべき事項
相続人 氏名、最後の住所、最後の本籍、生年月日及び死亡年月日
相続人 氏名、住所、生年月日及び続柄

どう使い分ける?

法定相続情報一覧図を作成するためには、法務局の認証を受ける必要があります。相続人が法務局に必要書類(戸籍謄本、除籍謄本、住民票など)と持参した一覧図を提出し、登記官が内容確認のうえ、法定相続情報一覧図として保管します。相続人は、必要に応じて写しの交付を受けることができるのです。

例えば、被相続人が数多くの金融機関に口座を持っていた場合、この書類があれば、いちいち戸籍謄本を提出することなく、解約手続きなどを一気に同時並行で進めることができるでしょう。戸籍謄本の提出先が少ない相続では、わざわざ法務局の認証を受けて書類を作成する必要性は低いといえます。

まとめ

不動産の相続登記や、被相続人の預貯金口座の解約などの際に、相続関係説明図を活用すれば、多くの戸籍謄本を取得する手間やコストを省くことができます。法務局から認証を受ける法定相続情報一覧図もありますから、それぞれのケースでメリットのある方を選ぶようにしましょう。

この記事の執筆者
相続財産センター編集部
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