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2024年4月から「相続登記」が義務化へ!法改正以前の不動産も対象に!
2022年9月26日
昨年、「相続登記」の義務づけなどを内容とした「民法等の一部を改正する法律」「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が国会で成立しました。全国で増え続けている「所有者不明土地」対策を目的としたものですが、登記を怠ると10万円以下の過料の対象となることなどが、盛り込まれています。また、法改正以前の不動産も対象となる点にも、注意が必要。「不動産相続」のどこが変わるのか、注意点は何かについて解説します。
相続登記とは?
不動産を相続したら必要な手続き
今回の法改正のメインである「相続登記」とは、そもそもどういうものなのでしょうか?
被相続人(亡くなった人)から自宅、アパートなどの不動産を相続したら、その名義を相続人名に変更する必要があります。この名義変更登記手続きが「相続登記」です。
相続登記の申請は、対象不動産の所在地を管轄する法務局で行います。相続する不動産が複数の地域にある場合には、それぞれの不動産の所在地を管轄する法務局ごとに申請しなければなりません。
相続登記しないデメリット
相続登記は“必要”ですが、現在のところ義務ではありません。24年4月1日から義務化されるのには、後述するように国や地方自治体、あるいは民間企業レベルでの土地の管理や利用上の問題が背景にあります。同時に、個人(相続人)にとっても、相続登記をしないと(過去の相続で相続登記が行われていないと)、次のようなデメリットが生じます。
デメリット1:売却できない相続した不動産を売却して現金化するためには、相続登記が必要です。登記簿で相続人の名義であることが確認できない土地や家屋を購入する人は、まずいません。
デメリット2:不動産を担保に借金できない土地を担保に金融機関から借り入れを行おうと思っても、同じ理由でNGです。例えば、相続対策で賃貸アパートを建設するため、土地を抵当に入れて借り入れを希望しても、以前の相続のときに正しい名義変更が行われていなかったために断られる、といったことも起こり得ます。
デメリット3:土地の利用も不可
賃貸物件を建てるときには、ハウスメーカーや不動産業者が土地の権利者を確認します。登記簿で正しい名義人が確認できないのでは、彼らも二の足を踏むでしょう。結局、土地は利用することができず、“宝の持ち腐れ”になってしまします。
裏を返せば、不動産の売却や利活用などが念頭になく、今のようなデメリットが実感できないケースで相続登記の「サボタージュ」が繰り返され、それが所有者不明土地の増加につながる結果を生んだといえるでしょう。
制度改正の中身を解説
それでは、今回の法改正で具体的に何が変わるのか、みていきましょう。ポイントは3つあります。
不動産登記制度の見直し(所有者不明土地の発生予防)⇒相続登記義務化は24年4月1日施行
◆3年以内の相続登記の申請を義務化
相続で不動産を取得した人には、その取得を知った日から3年以内に相続登記申請を行うことが義務付けられます。もし正当な理由なく登記をしないと、10万円以下の過料(国や公共団体が国民に課す金銭納付命令)の対象となってしまいます。相続人が遺言で財産を譲り受けた場合も同様です。
ここでいう「正当な理由」(これがあれば過料は課せられない)は、
- ● 数次相続(※)が発生して相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本などの必要な資料の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要する
- ● 遺言の有効性や遺産の範囲などが争われている
- ● 申請義務を負う相続人自身に重病などの事情がある
※数次相続:被相続人の遺産相続が開始された後、遺産分割協議や相続登記を行わないうちに相続人の1人が死亡してしまい、次の遺産相続が開始されること。
◆法改正以前の不動産相続にも適用
親の相続はすでに終わっているから、うちは関係ない…とはなりません。この相続登記義務化は、法改正後に発生した相続のみならず、法改正以前から相続登記をしていない不動産についても適用されるのです。
同時に、相続登記の期限は、「“取得を知った日”または“施行日”のいずれか遅い日」です。例えば、被相続人が山林などを所有していたことに気づかず、法改正後に相続していたことを知った場合には、「改正法の施行日」ではなく、「不動産の相続を初めて知った日から3年以内」に相続登記する義務を負うことになります。
◆協議が長引く場合には「相続人申告登記」を行う
遺産分割協議がまとまらず、3年以内に相続登記が困難になった場合に適用できる「相続人申告登記」という制度が新設されます。相続人であることを法務局(登記官)に届け出れば、相続登記を行わなくても過料は発生しません。
ただし、後日に遺産分割協議が成立し、不動産を相続する相続人が決まった場合には、遺産分割の日から3年以内にその名義変更登記を行う必要があります。
◆登記の一部が簡略化される
特定の相続人が、被相続人の遺言(遺贈)により不動産を取得した場合、法定相続人全員の協力がないと、名義変更手続きができませんでした。しかし改正後は、不動産の遺贈を受ける相続人が単独で相続登記できようになります。
◆「住所変更届登記」も義務化される⇒26年4月までに施行
ここまでは相続登記の話でしたが、登記上の所有者の住所などが変わった場合に行われる「住所変更登記」も義務化されます。不動産所有者の現在の居所がわからないことも、所有者不明土地増加の原因とされているからです。併せて、登記官が住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)から取得した情報に基づき、職権的に変更登記を行う方策が導入されます。
住所変更届登記については、変更があった日から2年以内に変更の登記を申請しなければならず、正当な理由がなくこれに違反すると、5万円以下の過料の対象となります。
土地を手放すための制度の創設(所有者不明土地の発生予防)⇒23年4月27日施行
地方を中心に「相続したくない土地」も増えていて、これも所有者不明土地が発生する一因になっています。その対策として、手放したい土地を国が引き取る「相続土地国庫帰属制度」が創設されます。 相続(遺言による場合を含む)によって土地の所有権を取得した相続人が、法務大臣の承認により土地を手放して国庫に帰属させることを可能にするというものですが、どんな土地でも引き取ってくれるわけではなく、以下のような場合はNGです。
- ● 建物、工作物、車両等がある土地
- ● 担保権などの権利が設定されている土地
- ● 通路など他人に使用される予定の土地
- ● 土壌汚染や埋設物がある土地
- ● 境界が明らかでない土地
- ● 危険な崖がある土地
また、ただというわけにもいきません。審査手数料のほか、国庫への帰属について承認を受けた場合は、負担金(10年分の土地管理費相当額)を納付する必要があります。具体的な金額や算定方法は、今後政令で定められる予定になっていますが、現状の国有地の標準的な管理費用(10年分)は、粗放的な管理で足りる原野約20万円、市街地の宅地(200㎡)約80万円とされています。
土地利用に関連する民法の規律の見直し(土地利用の円滑化)⇒23年4月1日施行
所有者不明土地などの利用を促進するため、次のような民法の改正が行われます。
(1)財産管理制度の見直し
● 「所有者不明土地・建物の管理制度」の創設
個々の所有者不明土地・建物の管理に特化した新たな財産管理制度を創設。裁判所が管理命令を発令し、管理人を選任(裁判所の許可があれば売却も可)
●「管理不全土地・建物の管理制度」の創設
所有者が土地・建物を管理せずこれを放置していることで他人の権利が侵害される恐れがある場合に、管理人の選任を可能にする制度を創設する
(2)共有制度の見直し
● 裁判所の関与の下で、不明共有者等に対して公告等をした上で、残りの共有者の同意で、共有物の変更行為や管理行為を可能にする制度を創設する
● 裁判所の関与の下で、不明共有者の持分の価額に相当する額の金銭の供託により、不明共有者の共有持分を取得して不動産の共有関係を解消する仕組みを創設する
(3)相続制度の見直し
相続開始から10年を経過したときは、個別案件ごとに異なる具体的相続分による分割の利益を消滅させ、画一的な法定相続分で簡明に遺産分割を行う仕組みを創設する
関連:「遺産分割協議の期限が10年に制限? 法改正の中身を解説します」マネーイズム
「現状を放置」は許されない?
九州より広い!?所有者不明土地
「所有者不明土地」とは、「不動産登記簿等の所有者台帳により、所有者が直ちに判明しない、又は判明しても所有者に連絡がつかない土地」をいいます。2016年時点で九州より広い約410万haに達していると推計され、状況を放置すれば、40年には北海道の面積に迫る720万haに達する恐れがあるといわれます。
こうした土地は、公共事業や民間の土地取引の妨げになるばかりでなく、地震や豪雨といった災害からの復旧の足かせにもなるため、大きな社会問題となっているのです。
所有者がわからなくなる原因は、「相続登記の不備」が66%、「氏名や住所などの変更登記の不備」が34%を占めており(2017年国交省調査)、多くは相続に起因しています。そうした現状を踏まえて打ち出されたのが、説明してきた「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し」です。
不動産の「未登記」には早急に対応を!
法務局が住基ネットの活用をうたっていること一つとっても、国は“本気”です。登記しなくても困ることはないから、と放置しておくことは許されなくなる、と考えるべきでしょう。
相続登記は、相続から時間が経つほど困難性が増します。特に、数代に渡って名義変更が行われなかったような物件については、正確な所有者を把握することがどんどん難しくなってしまうのです。子どもの代に重荷を背負わせないためにも、相続登記を行っていない、あるいは登記したかどうか曖昧な不動産を持っている場合などには、対策を急ぎましょう。
登記には、法務局への申請書と必要書類の提出とともに、登録免許税の納付が必要です。不明な点は、相続に詳しい司法書士や税理士などの専門家に相談しましょう。
まとめ
2024年4月から、相続から3年以内の相続登記が義務化され、正当な理由なく怠った場合には、過料が課せられます。法改正以前の相続にも適用されますから、対象となる不動産を所有する場合には、専門家に相談して対策を急ぐようにしましょう。また、今後相続で不動産を取得した場合には、相続登記をお忘れなく。