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自筆証書遺言書保管制度とは?メリットや利用方法をくわしく解説

自筆証書遺言書保管制度とは?メリットや利用方法をくわしく解説

2023年8月9日

「大切な人に財産を残したい」「大事な家族が相続で争うことのないようしたい」などの想いから、遺言書を準備したいと考える人もいるでしょう。より手軽に作成できるのが自筆証書遺言ですが、紛失や改ざんなどリスクもあります。今回は、遺言書を法務局に預けられる自筆証書遺言書保管制度についてくわしく解説します。

自筆証書遺言書保管制度とは?

遺言書には、遺言者が手書きで書く「自筆証書遺言」と公正役場の公証人が作成する「公正証書遺言」があります。またあまり利用されていませんが、内容は秘密にして存在だけを公証役場で証明してもらう「秘密証書遺言」もあります。

自筆証書遺言書保管制度とは、手書きで書いた遺言書を法務局で保管してもらえる制度です。遺言書をそのまま保管するだけでなく、画像データとしても保管されます。2020年7月から制度がスタートしました。

自筆証書遺言は手軽な一方で、要件の不備から無効になってしまったり、紛失したりするリスクがあります。

自筆証書遺言書保管制度を利用すれば、手軽さというメリットは残しつつリスクを小さく抑えることが可能です。

自筆証書遺言書保管制度を利用するメリットと注意点

自筆証書遺言書保管制度のメリットは以下のとおりです。

自筆証書遺言書保管制度を利用するときのメリット

メリット➀ 形式的なルールを守っているかチェックしてもらえる

遺言書には形式があり、要件を満たしていないと無効になってしまいます。自筆証書遺言書保管制度を利用すれば、形式的なルールを守っているかチェックが受けられます。法務局では民法に定める形式の遺言書しか預かれませんので、法務局職員が形式に適合するか外形的な確認をするのです。間違っていた場合は指摘を受け、訂正できます。安心して遺言書が書けます。

メリット② 家庭裁判所の検認が不要になる

通常、遺言書は、遺言者が亡くなったあと家庭裁判所に提出して検認を受けなければなりません。家庭裁判所による検認とは、相続人に遺言書の存在や内容を知らせるとともに内容を明確にして偽造や改ざんを防ぐための手続きを言います。

自筆証書遺言書保管制度を利用すれば、この検認は必要ありません。相続手続きは検認を終えてからでないと行えないことになっています。自筆証書遺言書保管制度には、検認が不要になることで速やかに相続が行えるメリットがあります。

メリット➂ 偽造や改ざんを防ぐことができる

相続人の誰かが都合の良い内容に書き換えてしまう場合も考えられます。自筆証書遺言書保管制度では法務局でしっかり遺言書を管理してもらえますから、偽造や改ざんの心配がなくなります。また、自宅で保管するのと違って紛失や盗難の心配もありません。

メリット④ 遺言書を発見してもらいやすくなる

法務局が遺言者の死亡を確認すると、指定した相続人に通知が行きます。通知によって遺言書の存在が明らかになります。

自筆証書遺言書保管制度を利用するときの注意点

メリットの多い自筆証書遺言書保管制度ですが、注意点もあります。制度を検討されている方は、以下の点に注意してください。

注意点➀ 本人が法務局に行かなければならない

自筆証書遺言書保管制度を利用する場合は、本人が法務局に行って申請しなければなりません。例えばケガや病気で法務局に行けない場合、代理人による申請はできないため制度は利用できなくなります。

注意点② 決められた様式で遺言書を作成しなければならない

自筆証書遺言書保管制度を利用する場合、以下の様式で遺言書を作成する必要があります。

  • ・A4サイズの片面のみに記載
  • ・上部5mm、下部10mm、右5mm、左20mmの余白が必要
  • ・各ページにページ番号を記載
  • ・ホチキスなどでとじ合わせない
注意点➂ 遺言書の内容まで確認するものではない

自筆証書遺言書保管制度では、形式のチェックが行われるのは前述したとおりです。しかし、遺言書の内容までは確認してもらえませんので注意してください。内容が法的に有効かどうかは、自分で確認する必要があります。

注意点④ 若干だが費用がかかる

自筆証書遺言書保管制度を利用するには、保管手数料として3,900円かかります。なお、公正証書遺言書も公正役場で保管してもらえますが、最低でも5,000円の手数料が必要です。比較すると安くはなりますが、無料ではない点に注意しましょう。

遺言書保管制度の利用方法

実際に自筆証書遺言書保管制度を利用したい場合、どのような流れで行えばいいのでしょうか。手順を説明していきます。

ステップ➀ 遺言書を作成

まず遺言書を作成します。前章で説明した様式を守って作成してください。

ステップ② 法務局に予約

次の3つの場所を管轄する法務局から、遺言書を保管する法務局を選びます。

  • ・遺言者の住所地
  • ・遺言者の本籍地
  • ・遺言者が所有する不動産の所在地

ただし遺言書が保管できるのは、遺言書保管所と呼ばれる特定の法務局のみです。例えば東京の場合だと、本局、板橋出張所、八王子支局、府中支局、西多摩支局が遺言書保管所になります。また、法務局に行く際は予約が必要な点にも注意が必要です。

ステップ③ 保管申請

予約日までに申請書を準備しましょう。申請書の様式は、法務省ホームページでも確認できます。また、遺言書と申請書に加え以下のものを準備し、法務局で保管申請します。

  • ・本人確認書類(官公庁発行の顔写真付きの身分証明書)
  • ・本籍および戸籍の筆頭者の記載がある住民票の写しなど
  • ・3,900円分の収入印紙
  • ・遺言書が外国語で記載されている場合は日本語による翻訳文
ステップ④ 保管証の受取り

無事申請が終わると、遺言者の氏名や生年月日、保管した法務局の名称、保管番号が書かれた保管証が渡されます。保管証は再発行できないので、しっかり管理してください。

自筆証書遺言書保管制度利用後にできること

ここで、自筆証書遺言書保管制度の利用後に可能な手続きを説明します。

自筆証書遺言書保管制度利用後に遺言者ができること

遺言者は制度の利用後、遺言書を閲覧することができます。閲覧する場合は保管料とは別に手数料が必要です。例えば原本を閲覧する場合だと、1,700円の手数料がかかります。

また保管の撤回も可能です。申請の撤回をすることで、遺言書を返してもらうことができます。さらに遺言者の氏名、住所等に変更があった場合には、変更の届出を行う必要があります。

相続人は遺言者が亡くなったあとに遺言書を閲覧できる

相続人は、遺言者が亡くなったあとはじめて遺言書を閲覧できます。遺言書はデータでも保管されていますから、最寄りの法務局で内容を確認することが可能です。確認には顔写真付きの本人確認書類や法定相続情報一覧図、相続人がわかる遺言者の戸籍などが必要ですので、予約とあわせて準備しておきましょう。相続人の誰かが遺言書を閲覧すると、ほかの相続人に遺言書が保管されていることが通知されます。

まとめ

自筆証書遺言書保管制度は、手軽でありつつも自分の意思をしっかり伝えられる制度です。紛失や盗難、改ざんの心配もありませんし、形式をチェックしてもらえることから無効になるリスクも小さくなります。遺言書は、大事な人への想いがこもった大切な文書です。安心して任せられる自筆証書遺言書保管制度の利用を考えてみてはいかがでしょうか。

この記事の執筆者
渡邉身衣子
東証1部上場企業法務部の経験を経て金融ライターとして独立する。ビジネス実務法務検定2級を取得済み。難しくなりがちな金融・税金・法律をやわらかく解説します。
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