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遺族が受け取る「死亡退職金」にかかる税金は?計算方法も解説

遺族が受け取る「死亡退職金」にかかる税金は?計算方法も解説

2023年9月20日

サラリーマンが退職して退職金を受け取ると、本人に所得税が課税されます。 では、在職中に亡くなって、会社から遺族に「死亡退職金」が支払われた場合、税金はどうなるのでしょうか。その計算方法も併せて解説します。

死亡退職金とは

死亡退職金は、労働者の死亡による退職を機に発生する退職金で、亡くなった本人の代わりに遺族に対して支払われます。死亡退職金の制度を定めるのは企業の任意で、支払う義務はありません。また、「死亡手当金」や「功労金」といった名目で、同様の金銭を支払う制度を設ける企業もあります。

死亡退職金の支払いには、亡くなった人の功労の対価とする、遺族の生活を保障する、などの意義があります。

相続財産とみなされる死亡退職金の範囲

「みなし相続財産」になる

人が亡くなると、相続が発生し、被相続人(亡くなった人)の財産の額によって相続税が課税されます。相続税の課税のベースになる財産には、預貯金や不動産のように被相続人の持っていたものを直接もらい受ける「民法上の財産(本来の財産)」と、被相続人の死亡が原因で間接的に受け取る「みなし相続財産」があります。

死亡退職金は、原則として後者の「みなし相続財産」になります。退職金は、亡くなった人が勤めていた会社から支払われるものなので、直接的な相続財産ではありません。しかし、本来であれば被相続人の財産になるはずだったお金であり、それを代わりに受け取ったものとみなして、税法上、相続財産として扱われる(課税対象とする)ことになるわけです。

代表的なみなし相続財産に、生命保険の死亡保険金があります。保険金は、受取人固有の権利であり、本来の財産のような遺産分割の対象にはなりません。死亡退職金も、企業の退職給与規定などで遺族が受取人として指定されていることが一般的で、やはり受取人固有の権利とされます。つまり、「相続税の課税対象にはなるが、遺産分割の対象にはならない」のです。

相続財産とみなされる死亡退職金の範囲

もう少し詳しくみていきましょう。税法上、相続財産とみなされる死亡退職金には、次のようなものが該当します。

● 被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したもの

具体的には
(1)死亡退職で支給される金額が被相続人の死亡後3年以内に確定したもの
(2)生前に退職していて、支給される金額が被相続人の死亡後3年以内に確定したもの
が該当します。

死亡後3年を超えて受け取った場合は、相違続税ではなく、「一時所得」として所得税の課税対象になります。

● 受け取る名目にかかわらず、実質的に被相続人の死亡退職金として支給された金品で、現物で支給された場合も含まれる

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死亡退職金には非課税枠がある

この死亡退職金には、非課税限度額が設けられており、受け取った全額が相続税の対象となるわけではありません。すべての相続人(相続を放棄した人や相続権を失った人は含まれません)が取得した死亡退職金を合計した額が非課税限度額以下のときは、課税されません。

死亡退職金の非課税限度額は、「500万円×法定相続人の数」です。

例えば、法定相続人が3人ならば、「500万円×3=1,500万円」が非課税限度額になります。受け取った死亡退職金の合計がこれ以下ならば非課税、超えたらその金額が、相続税の課税対象となります。

ここでの注意点が4つあります。

  • ・相続人以外の人が取得した死亡退職金には、非課税の適用はありません。
  • ・遺言者の本籍地
  • ・法定相続人の数は、相続の放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数をいいます。/li>
  • ・法定相続人の中に養子がいる場合の法定相続人の数に含める養子の数は、実子がいるときは1人、実子がいないときは2人までとなります。

具体的な計算方法

相続人が受け取った死亡退職金の相続税課税対象額を、次の事例で計算してみましょう。

死亡退職金の受取人 受取金額
A配偶者 2,000万円
B長男 1,000万円
C長女(相続を放棄) 500万円
(1)非課税限度額の計算

500万円×3人=1,500万円

※Cは相続放棄しているが、ここでは法定相続人の数に加える

(2)各相続人の非課税額の計算

「非課税限度額×その相続人が受け取った死亡退職金の金額÷すべての相続人が受け取った死亡退職金の金額」で求めます。

※「すべての相続人が受け取った死亡退職金の金額」には、相続放棄したCの金額は含めない

A 1,500万円×2,000万円÷(2,000万円+1,000万円)≒1,000万円
B 1,500万円×1,000万円÷(2,000万円+1,000万円)≒500万円
C 相続放棄しているため、非課税金額は0円

(3)各相続人の課税対象額(相続税の課税価格に算入)

死亡退職金受取額 非課税金額 A 2,000万円 - 1,000万円= 1,000万円
B 1,000万円 - 500万円= 500万円
C 500万円 - 0円= 500万円

死亡退職金についての注意事項

受取人が指定されていないときの扱い

最初に述べたように、多くの場合、死亡退職金の受取人は、企業の退職給与規定等で指定されています(遺族の中での受取人の順位が定められていることもあります)。受取人の指定がない場合は、相続人による遺産分割協議などで分割方法を決定することになります。

指定された受取人以外の人が受け取ったら?

例えば、被相続人の妻が受取人に指定されている死亡退職金を、遺産分割協議で長男が受け取ることにした場合、税金はどうなるのでしょうか。このケースでは、妻にはみなし相続財産を受け取ったとして、非課税限度額を超えていれば相続税が課税されます(遺産分割の対象にはならない)。一方、長男には、母親から死亡退職金相当額を贈与により取得したとして、贈与税が課税されることになります。

相続放棄しても、死亡退職金を受け取ることはできる

相続放棄は、被相続人が多額の借金を残していた場合などに、プラスの財産も含めて相続しないことをいいます。ただ、その財産に、みなし相続財産である死亡退職金は含まれません。受取人固有の権利ですから、仮に相続放棄していたとしても受け取ることができるのです。

「弔慰金」にも相続税はかかるのか

被相続人の死亡によって受ける弔慰金や花輪代、葬祭料などについては、通常相続税の対象になることはありません。ただし、以下のようなケースは、相続税の課税対象になるとされています。

①被相続人の雇用主などから弔慰金などの名目で受け取った金銭などのうち、実質上退職手当金等に該当すると認められる部分

②上記以外の部分については、次に掲げる金額を弔慰金等に相当する金額とし、その金額を超える部分に相当する金額
・ 被相続人の死亡が業務上の死亡であるとき:被相続人の死亡当時の普通給与の3年分に相当する額
・ 被相続人の死亡が業務上の死亡でないとき:被相続人の死亡当時の普通給与の半年分に相当する額

まとめ

突然家計の担い手を失った家族にとって、死亡退職金は大きな助けになりますが、非課税限度額を超える部分は、相続税の課税対象になることに留意しましょう。不明な点がある場合などには、税の専門家である税理士に相談してみることをお勧めします。

この記事の執筆者
渡邉身衣子
東証1部上場企業法務部の経験を経て金融ライターとして独立する。ビジネス実務法務検定2級を取得済み。難しくなりがちな金融・税金・法律をやわらかく解説します。
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