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認知症で口座が凍結されたらどうなる? 事前準備も併せて解説

認知症で口座が凍結されたらどうなる? 事前準備も併せて解説

2023年9月27日

認知症になると、本人の銀行口座が凍結され、家族でもお金の引き出しができなくなってしまうのをご存知でしょうか。当然、介護費用なども、その口座からは引き出しや引き落としができません。万が一、口座が凍結されてしまった場合、その状態を解除することは可能なのでしょうか? そうした事態で困らないように、事前に検討すべき準備についても解説します。

認知症による「口座の凍結」とは

「凍結」が行われるケース

預金者が認知症であることを知ると、銀行などの金融機関は、当人の口座の取引(引き出し、引き落とし、振込など)を停止します。口座への入金もできません。これが、口座の「凍結」です。

ただし、認知症といっても、軽度~重度まで症状は様々です。以下に説明するのは、原則として、認知症によって法的な「意思能力」(自分の行為によってどのような法律的な結果が生じるか判断できる能力)を失った場合、と考えてください。

この口座の「凍結」は、口座そのものがなくなる「解約」とは違うのですが、元通りに使えるようにするためには、決まった手続きを踏む必要があります。

  • 口座の凍結は、一般的に、

  • ・債務整理の対象になる場合
  • ・口座が不正取引に利用された場合
  • ・名義人が死亡した場合
  • そして、今回のテーマである

  • ・名義人が認知症であると認められた場合
  • などに行われます。

凍結解除の方法は後ほど説明しますが、認知症を理由に凍結された場合は、他のケースに比べ、再びお金を引き出せるようにするためのハードルが高いといえます。

そもそも認知症になるとなぜ口座が凍結されるのか

認知症の人の口座の凍結が行われるのは、ひとことで言えば、預けられた本人の財産を守るためです。高齢者をターゲットとした詐欺が社会問題になっていますが、認知症を患っている場合は、なおさらそのリスクが高まります。詐欺までいかなくても、本人が意図しない契約を結び、出金してしまうといったことも考えられるでしょう。口座の凍結は、そうしたことを防止するための処置なのです。

いったん凍結されると、たとえ子どものような家族であっても、口座に手をつけることはできなくなります。認知症の親の口座から勝手にお金を引き出して使う、といった行為がないとはいえないからにほかなりません。

●金融機関が判断した
  • 例えば、金融機関が

  • ・キャッシュカードや通帳、印鑑を頻繁に紛失する
  • ・同じ内容の確認のために、何度も窓口にやって来る
  • ・逆に1人で店舗に来られない
  • ・書類に住所や生年月日を正確に記載できない
  • ・事実無根の行員の不正を追及する
  • といった、認知症特有の状況を認めた場合には、口座が凍結される可能性があります。

●家族による「申告」

金融機関が、本人の家族の言動で認知症の発症を知ることもあります。よくあるのが、口座が凍結されるという事実を知らずに、認知症になった家族の代わりに金融取引の手続きなどで窓口を訪れた際に、その事実を明かすというパターンです。家族の側に悪意はなかったとしても、さきほど説明したように、お金の引き出しなどはできなくなってしまいます。

裏を返せば、金融機関に知られさえしなければ、認知症の家族のキャッシュカードを使って、出金を行うことなどは可能です。ただし、そもそも暗証番号を聞いていなければ、カードは使えません。破損した場合などには、原則として本人による再発行手続きが必要になります。

凍結されるのは銀行口座だけではない

認知症によって凍結されるのは、一般の金融機関の口座だけではないことにも注意が必要です。以下のような金融資産も凍結の対象なのです。

  • 不動産:自宅や所有する賃貸アパートなどの売却はもとより、リフォーム契約、賃貸契約などもできなくなる
  • 株式や有価証券:売却、すなわち換金ができなくなる
  • 生命保険:解約などができなくなる

口座の凍結を解除するには

「成年後見制度」を活用する

認知症になったことを理由に凍結された金融機関の口座を、確実に解除できる唯一の方法といっていいのが、国の「成年後見制度」の活用です(不動産などの金融資産についても同様です)。認知症や精神障害などで判断能力の不十分な人たちを保護、支援するための制度で、財産管理などの方法、担い手の選び方により、大きく2つの仕組みがあります。

  1. ①財産管理などを家庭裁判所が選任した成年後見人が行う(法定後見)
  2. ②本人が判断能力のあるうちに選任しておいた親族などの任意後見人が行う(任意後見)

このうち、口座凍結の「事後」に利用できるのは、①の法定後見に限られます。

この制度を使えば、金融機関などは凍結解除に応じるのですが、以下のようなデメリットもあります。

  • ・裁判所への提出書類が多く、手続きが煩雑なだけでなく時間がかかる
  • ・成年後見人に親族が選ばれるとは限らない(実際には弁護士などの第三者が選ばれることが多く、月々の出費が発生する)
  • ・本人の財産は家庭裁判所の監督下に置かれるため、親族が柔軟に活用することが難しくなる

金融機関と話し合い、対応してもらう

認知症が理由の口座凍結に関しては、以前はこの成年後見制度を使うしか方法がありませんでした。しかし、認知症患者の増加に伴い、こうしたケースも多発するようになったことから、金融機関の姿勢にも一定の変化が見られます。

全国銀行協会(全銀協)は、2021年にこの問題への対処方法に関する新たな指針を発表しました。そこでは、「本人の医療費等の支払い手続きを親族等が代わりにする行為など、本人の利益に適合することが明らかである場合に限り、(預金引き出しなどの)依頼に応じることが考えられる」といった方向性が示されました。実際に口座が凍結された場合には、まず金融機関と相談すべきでしょう。

ただし、これはあくまでも業界団体が示した「指針」であり、法的拘束力はありません。あくまで成年後見制度の利用が原則、というスタンスに変化はなく、「認知症の親の預金は、引き出し可能になった」ということではありませんから、注意してください。

事前にできる対策は

では、こうした口座凍結を防ぐ方法はあるのでしょうか?

任意後見制度を活用する

有効な対策の1つは、さきほどの成年後見制度の②「任意後見制度」の利用です。認知症になる前に、任意後見人を事前に指定しておくことができるのが、①による事後の対策との違いです。この方法ならば、後見人を確実に家族に指定して、自分の財産を管理してもらうことができます。

ただし、制度の利用に当たっては、やはり家庭裁判所での手続きが必要です。また、②の仕組みでは、任意後見人を監督する弁護士などの任意後見監督人(裁判所が選任)をつけなくてはなりません。資金の使い方などは一定の請願が避けられず、月々の報酬も発生します。

「家族信託」を活用する

家族信託とは、簡単にいうと、自分の老後や介護時に備え、保有する不動産や預貯金などを信頼できる家族に託し、管理・処分を任せる財産管理の方法のことです。委託者(親など)が、受託者(財産を管理する人)と信託契約を結ぶことで成立します。成年後見制度に比べると、柔軟な財産管理が可能になるメリットがあります。

ただし、管理できるのは財産だけで、施設入所の契約や公的な書類申請などの法律行為に関しては、成年後見制度の利用が必要になる場合もあります。また、契約によっては数十年にわたって家族を束縛する可能性があることにも、注意が必要です。

まとめ

家族が認知症になると、銀行口座をはじめとする金融財産が凍結され、その解除には大きなエネルギーが必要になる可能性があります。そういう可能性を考え、できるだけ介護者などの負担にならない対策を立てておくことが望ましいといえます

この記事の執筆者
相続財産センター編集部
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