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デジタル遺言制度とは?現行制度との違いとメリットは
2023年11月16日
日本でデジタル遺言制度を導入する可能性があるのをご存じでしょうか。今まで遺言と言えば紙で残す必要がありましたが、この制度が導入されれば、誰でもパソコンやスマホで遺言を残すことが可能です。
しかしデジタル遺言制度にはメリットだけでなく、解決すべき課題もあります。この記事ではデジタル遺言制度の内容だけでなく、メリットとその課題について解説します。
デジタル遺言制度とは
デジタル遺言制度とは、インターネット上で法的な効力がある遺言書を作成・保管できる制度です。2024年3月を目標に、2023年中に新制度の方向性を提言する研究会を立ち上げることになっています。現在制度としてあるのは、「自筆証書遺言」「公証人に作成を委嘱する公正証書遺言」「封書した遺言書を公証役場に持参する秘密証書遺言」です。その中でも多いのは「自筆証書遺言」です。
「自筆証書遺言」は本人が本文や作成日を書いて、署名・押印する必要があります。本人の自筆でなければ法的効力がありません。また法務局に預けて亡くなった後に遺言書を受け取る場合、用紙の大きさや余白など、細かい規定があります。
さらに遺言書を作成する場合、不動産や現在の預金などの財産を一覧にした財産目録も作成する必要があるため、ひとりで遺言書を作成することは困難です。そのため多くの人が弁護士などの専門家に頼っているのが現状です。
デジタル遺言制度では、今まで自筆で作成していた「自筆証書遺言」を、デジタルで作成できるようにする制度のため、専門家に頼らずフォーマットに沿って遺言書を作成できます。また遺言書をパソコンやスマホで作成してクラウド上に保存することが可能です。
海外でも紙以外での遺言書作成が進んでおり、米国は2019年に電子遺言書法を制定してデジタル遺言書を認めています。こうした世界的な動きも踏まえて、日本でもデジタル遺言制度の議論が始まっているわけです。
現行の遺言制度と何が違う?
デジタル遺言制度の議論がこれから始まりますが、現行の遺言制度と何が違うのでしょうか。ここでは現行制度との違いを3つ紹介します。
自筆でなくても可能
現行制度では自筆で遺言書を作成する必要がありました。一方デジタル遺言制度では、自筆でなくても遺言書が作成可能で、ネット上で顔を撮影するなどして本人が行ったことを確認する仕組みが検討されています。
パソコンやスマホがあれば遺言書の作成が可能になるため、自宅で簡単に遺言書を作成でき、遺言書を作成する人が増えると考えられています。
押印ではなく電子署名で可
デジタル遺言制度が始まれば、押印ではなく電子署名でも本人確認が可能です。電子署名で法的効力のある遺言書が作成できれば、手続きの簡素化につながります。現在、マイナポータルと連携することで手続きの簡素化されたものが多くあります。マイナポータルを利用すれば、電子署名での遺言書作成も可能になるかもしれません。
紙で保管する必要がない
現行制度の場合、自筆で作成した遺言書を保管する必要があります。その点、デジタル遺言書であれば、クラウド上に保存することが可能です。今までは紙をスキャンして保存する手間がかかっていましたが、デジタルであればそうした手間がかかりません。
また紙で保管しておく必要がないため、そのためのスペースがいりません。クラウド上で保存する場合、セキュリティが問題になりますが、ブロックチェーン技術を活用して改善を防止する方法が検討されているようです。
デジタル遺言制度のメリット
デジタル遺言制度が導入されるメリットとしては2つ考えられます。
複雑な手続きが必要ない
現行の制度では、遺言書の作成には専門家に依頼しなければ難しい現状があります。そのため遺言書を作成する人は少なくなっています。
たとえば平成29年度に法務省が行った「我が国における自筆証書による遺言に係る遺言書の作成・保管等に関するニーズ調査」によれば、55歳以上で自筆証書遺言を作成したことのある人は3.7%、公正証書遺言を作成したことのある人は3.1%とかなり少ない割合です。
出典:平成29年度法務省調査「我が国における自筆証書による遺言に係る遺言書の作成・保管等に関するニーズ調査」」
一方で遺産分割に関するトラブルは増えています。たとえば令和3年の司法統計によれば「遺言書の検認事件」数は以下のように増えています。
暦年 | 件数 |
---|---|
平成26年 | 16,843 |
平成27年 | 16,888 |
平成28年 | 17,205 |
平成29年 | 17,394 |
平成30年 | 17,487 |
令和元年 | 18,625 |
令和2年 | 18,277 |
令和3年 | 19,576 |
出典:令和3年 司法統計年報(家事編)
こうした現状の中で、遺言書の作成数を増やす必要性が叫ばれているわけです。デジタル遺言制度が始まることで、複雑な手続きが必要なくなり、スマホとパソコンがあれば誰でも遺言書を作成できるようになります。
専門家に頼る必要性も少なくなり、遺言書を作成する人が増え、相続トラブルが減る可能性も考えられています。
遺言書の紛失や改ざんリスクが少なくなる
遺言書を紙で保管していると、紛失したり改ざんされたりするリスクはあります。自筆証書遺言の場合、金庫に保管している人が多いようですが、それでも盗難にあう可能性はゼロではありません。
その点、クラウド上で保管していれば紛失リスクがありません。またブロックチェーン技術を活用することで、改ざん防止にもつながります。もちろん現行制度でもこうした紛失や改ざん防止をする方法はあります。
公正証書遺言であれば、正本と謄本が交付され、原本は公証役場に保管されるため、紛失や改ざんのリスクはありません。しかし公正証書遺言は費用もかかりますし、専門家に頼る必要があります。そのため公正証書遺言も作成のハードルは高いと言えるでしょう。
デジタル遺言制度の課題
ここまでデジタル遺言制度と現行制度の違い、デジタル遺言制度のメリットについて説明しました。デジタル遺言制度にはメリットが大きいですが、課題もあります。前述したようにアメリカなどデジタル遺言制度を導入している国は増えていますが、ドイツやフランスは認めていません。
デジタル遺言制度に対する反対理由としては、死後のため意思確認ができず、トラブルの増える可能性があることがあげられます。たとえば家族が勝手に遺言書を作ってしまう可能性も否定できません。
また本人が作ったとしても、それが家族に書かされたものであるケースも出てくるかもしれません。誰でも簡単に遺言書を作成できるため、こうしたリスクをいかに少なくするかが重要になってきます。
本人の意思が反映された遺言書であるかどうかをどのように確認するかの議論が必要です。本人の意思確認のため、遺言書の作成と同時に、本人の録音なども必要になる可能性もあります。まだ方向性は決まっていませんが、本人の意思確認の部分は重要な課題となるでしょう。
まとめ
ここまでデジタル遺言制度と現行制度の違い、デジタル遺言制度のメリットと課題について解説してきました。デジタル遺言制度の議論はこれから始まります。相続のトラブルが増えている中で、遺言制度の利用は必須です。
デジタル遺言制度が始まれば、遺言書作成のハードルは下がるはずです。一方で課題もあります。それらの課題をどのように解決していくのか、議論を見守っていきましょう。