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スタートした消費税のインボイス制度 相続で事業を承継したらどうなる? どうすべき?

スタートした消費税のインボイス制度 相続で事業を承継したらどうなる? どうすべき?

2023年12月19日

2023年10月から、消費税のインボイス制度がスタートしました。インボイス発行事業者になるためには登録が必要ですが、相続で事業を受け継いだ場合には、どのような扱いになるのでしょうか。課税事業者になるのかならないのかなど、ケースに応じて必要になる手続きなどと併せて解説します。

インボイス制度とは

最初に、インボイス制度についておさらいしておきましょう。

制度の概要

インボイス(適格請求書)は、消費税が課税される取引の際に発行される請求書(領収書、納品書なども含む)のことで、物やサービスの“売り手”が“買い手”に対して、正確な適用税率や消費税額などを伝えるために発行します。売り手の事業者は、そこに「適用税率」「消費税額」などとともに、自分に割り当てられた「登録番号」を記載します。

制度開始後は、買い手が消費税の仕入税額控除(後述します)を受けるためには、原則として売り手からこのインボイスの交付を受け、それを保存することが条件になりました。

一方、売り手がインボイスを交付できるようにするためには、税務署に対して「適格請求書発行事業者」の登録申請を行い、登録番号を取得する必要があります。買い手に対して交付したインボイスの写しは、やはり保存しなくてはなりません。

インボイス導入による事業への影響

制度の開始により、事務作業量やコストが増えたほか、買い手、売り手双方の事業に影響を与えました。最大の問題は、仕入税額控除の扱いです。

買い手は、原則として適格請求書発行事業者の登録を行った事業者(インボイスを発行できる事業者)相手の仕入や経費の支出でなければ、仕入税額控除ができなくなりました。「仕入税額控除」は、消費税を納める際に、自分が仕入れなどで支払った消費税額を差し引ける仕組みです。仕入先がインボイスを発行できなければ、その取引で負担した消費税は控除できなくなったわけです。

一方の売り手は、消費税の免税事業者の場合、インボイス登録をすべきかどうか、選択を迫られることになりました。消費税は、課税売上高(※)が1,000万円以下の場合、支払いを免除されます。ただし、インボイスを発行できるのは、課税事業者のみ。免税事業者のままだと、仕入税額控除ができない買い手から、最悪取引を打ち切られるかもしれない立場に置かれたのです。

※課税売上高:売上高から、取引先から支払われた消費税の金額を除いた金額。

売上が1,000万円以下でも、課税事業者を選択し、インボイス登録をすることは可能です。しかし、そうすると、従来免除されていた消費税の納税義務が課せられることになります。

相続で事業を引き継いだ場合、消費税はどうなる?

ここからは、本題の「インボイス制度(消費税)と相続」についてみていきます。

今も説明したように、消費税はすべての事業者が納税義務を負うものではありません。では、免税事業者の相続人(事業を行っていない人も含みます)が、相続によって被相続人(亡くなった人)の事業を承継した場合、相続人の納税義務はどうなるのでしょうか? まずは、この点から説明します。

消費税の納税義務の判定方法は?

「消費税は、課税売上高が1,000万円以下ならば課税されない」といいましたが、その売上の判定は「基準期間」の実績で行われます。

「基準期間」とは、原則として個人事業者ではその年の前々年、法人ではその事業年度の前々年を指します。例えば、2022年(度)の課税売上高が700万円だったなら、2024年(度)は免税事業者(前述のように、課税事業者を選択することはできます)、1,300万円だったら課税事業者――ということになるわけです。

相続があった年の納税義務

相続があった年の相続人の消費税納税義務については、次のように判定されます。

(1)相続があった年の基準期間(例えば、2024年に相続が発生した場合には、基準期間は2022年)における「被相続人の課税売上高」が1,000万円を超える場合
⇒相続があった日の翌日からその年の12月31日までの間の納税義務は免除されません。

(2)相続があった年の基準期間における「被相続人の課税売上高」が1,000万円以下である場合
⇒相続があった年の納税義務が免除されます。ただし、この場合であっても、相続人が課税事業者を選択しているときは、納税義務は免除されません。

相続があった年の翌年または翌々年

相続のあった年は、翌々年の基準期間ということになります。

(1)相続があった年の翌年または翌々年の基準期間における「被相続人の課税売上高(※)と相続人の課税売上高との合計額」が1,000万円を超える場合

⇒相続があった年の翌年または翌々年の納税義務は、免除されません。

(2)相続があった年の翌年または翌々年の基準期間における「被相続人の課税売上高(※)と相続人の課税売上高との合計額」が1,000万円以下である場合

⇒相続があった年の翌年または翌々年の納税義務は、免除されます。ただし、この場合であっても、相続人が課税事業者を選択しているときは、納税義務は免除されません。

※被相続人に複数の相続人がある場合には、被相続人の事業を相続人のうち1人が事実上承継しているとしても、当該相続財産が実際に分割実行されるまでの間は被相続人の事業を承継する相続人は確定していないため、各相続人が共同して被相続人の事業を承継したものとして取り扱う。

課税事業者の事業を相続で引き継いだ場合、必要な手続きは?

次に、相続でインボイス発行事業者(消費税課税事業者)の事業を引き継いだ場合に、どのような手続きが必要になるのか、順を追って説明します。

亡くなった人の登録の効力は最長4カ月

インボイス発行事業者が亡くなった場合、その相続人は、税務署に「適格請求書発行事業者の死亡届出書」を提出する必要があります。原則として「届出書の提出日の翌日」または「死亡した日の翌日から4カ月を経過した日」のいずれか早い日に、被相続人のインボイス登録の効力は失われます。

また、前項でも触れたように、インボイス発行事業者だった被相続人の事業を相続により引き継いだ場合には、相続人は自分がインボイス発行事業者でなかったとしても、被相続人の消費税の納税義務を承継することになります。相続人は、「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から4ヵ月を経過した日の前日」までに、消費税申告書を提出し納税しなくてはなりません。

以降の手続きは、「相続人がインボイス発行事業者になるのか・ならないのか」によって変わります。

相続人がインボイス発行事業者登録を受けるケース

インボイス発行事業者の地位は、相続人に引き継がれません。このため、事業を承継したうえでインボイス発行事業者になろうとする場合には、相続人はあらためて税務署に登録申請書を提出し、登録を受ける必要があります。

さきほど、被相続人のインボイス登録の失効について説明しましたが、これには、「相続により事業を承継した相続人がインボイス発行事業者の登録を受けた日の前日」または「被相続人の亡くなった日の翌日から4カ月を経過した日」のいずれか早い日までの期間については、その相続人をインボイス発行事業者とみなす、という措置が設けられています。この「みなし登録期間」の間は、被相続人の登録番号を相続人のものとして使用することができるのです。逆に言えば、空白期間なくインボイス発行事業者として事業を承継するためには、この期間中に登録を終えなくてはなりません。

相続人がインボイス発行事業者登録を受けないケース

引き継いだ時点で事業が免税事業者の要件を満たし、インボイス発行事業者にならない場合には、特に手続きなどは不要です。

ただし、その場合でも、今のみなし登録期間(この場合、「被相続人の亡くなった日の翌日から4カ月を経過した日まで」)については、インボイス登録事業者と「みなされる」ことには注意が必要です。この期間は、消費税の課税事業者として申告・納税が必要であるのと同時に、消費税を預かる売上が発生した場合には、取引先に対してインボイス発行の義務も負います。

まとめ

消費税免税事業者がインボイス導入後に課税事業者になるべきかどうかは、取引先との関係なども踏まえた判断が必要になるでしょう。相続で事業承継した場合には、「みなし登録期間」の間に登録を済ませれば、空白期間を設けずにインボイス発行事業者として事業を継続することができます。

この記事の執筆者
相続財産センター編集部
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