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“隠し子”に確実に遺産を譲りたい それを可能にする「遺言認知」について解説

“隠し子”に確実に遺産を譲りたい それを可能にする「遺言認知」について解説

2024年6月12日

この記事の監修者
SSK税理士法人
代表 佐々木梨絵(税理士・1級ファイナンシャル・プランニング技能士)

婚姻関係にない女性との間に生まれた子どもと法的な親子関係を結ぶためには、認知が必要です。認知していれば、自分の死後、法定相続人として財産を渡すこともできます。しかし、家族に子の存在を知られたくないなどの理由で、それをためらうこともあるでしょう。そんな場合には、遺言書を作成することで、死後に父子関係を生じさせることが可能です。今回は、その「遺言認知」の方法、注意点などについて解説します。

遺言認知とは

そもそも認知とは

法律上の婚姻関係がある夫婦から生まれた子は、嫡出子(※)として戸籍上の届出が行われ、出生時から法律上の実父母関係が生じます。一方、婚姻関係にない男女の間に生まれた子は、事情が違います。母親とは出生の事実により親子関係が生まれるものの、父親が誰かは、法律上明確になっていないのです。

※嫡出子 法律上婚姻関係を結んでいる夫婦の間に生まれた子ども。法律上の婚姻関係を結んでいない男女の間に生まれた子どもを非嫡出子という。

この場合、父親が生まれた子を自分の子であると認める手続きを行うことによって、法律上の父親を定めることができます。これを父親による「認知」といいます。

遺言書で認知することができる

認知は、父親が生前に届け出ることで認められますが、何らかの事情でそれがしにくい場合には、遺言書を作成することで行うことができます。この遺言認知の場合には、父が亡くなってはじめて法律上の親子関係が生じることになります。

認知が相続に与える影響

認知した子は法定相続人となる

認知すると法的な親子関係が生まれるため、その子は父親が亡くなった際には、法定相続人になります。法定相続分(民法に定められた遺産の取得割合)などの権利は、嫡出子と変わりません。

実は、以前は非嫡出子の法定相続分は、嫡出子の1/2とされていました。しかし、自らの意志に関係なく非嫡出子として生まれた子どもの相続分を低くするのは合理的ではない、という理由から法改正が行われ、2013年9月5日以降に開始された相続では、嫡出子と「同等」となりました。

配偶者との間に子どもがいた場合、遺産は被相続人が認知した子どもと同等に分け合うことになります。

相続順位は「第1位」

また、相続では、配偶者は常に法定相続人ですが、他の相続人には第1位(亡くなった人の子ども)、第2位(父母)、第3位(兄弟姉妹)という順位があり、上位の人がいる場合には、相続人にはなれません。

父親が認知した子どもは、第1位の法定相続人です。例えば、その父親に、配偶者との間の子どもがおらず、父母もすでに他界していたら、普通は「配偶者と兄弟姉妹」が相続人となります。ところが、相続発生後に父親が認知していた子どもが現れた場合、兄弟姉妹は法定相続人ではなくなるわけです。

法定相続人の順位については
甥や姪に相続の権利が?知っておきたい「法定相続人」のこと|今知りたい!相続お役立ち情報 (all-senmonka.jp)

認知していなくても遺言書で財産を渡すことは可能

ところで、被相続人が遺産の分け方を記した遺言書を残せば、法定相続人以外の人に遺産を譲ることができます(※)。たとえ認知していない子どもであっても、例外ではありません。

※ただし、法定相続人には、必ず受け取れる遺産割合=遺留分がある。

記事監修者からのワンポイントアドバイス
遺言認知は、法定相続人の立場でより確実に相続させる、などの目的があります。また遺言認知をせずに遺言書で遺産を残した場合には、法定相続人から遺留分侵害額の請求をされるなどトラブルになることがあるので慎重な検討が必要です。
SSK税理士法人 代表 佐々木梨絵(税理士・1級ファイナンシャル・プランニング技能士)

遺言認知の方法

では、遺言認知のためにはどのような手続きが必要になるのでしょうか。以下にまとめました。

父親が有効な遺言書を作成する

子どもを認知する旨を明記した遺言書を作成します。併せて「母親の氏名」「子どもの住所、氏名、生年月日、本籍、戸籍筆頭者」を忘れずに記載するようにしましょう。

遺言書には、自分で書く「自筆証書遺言」、公証役場で公証人に作成・保管してもらう「公正証書遺言」、自分で作成したものを公証役場に持参し、その存在を証明してもらう「秘密証書遺言」の3種類があります。

遺言書は必要事項の記載漏れなどがあると、全体が無効になってしまいます。子どもの認知という重要な行為を含むだけに、より安全性の高い「公正証書遺言」がお勧めです。

遺言執行者が認知届を提出する

相続が発生したら、遺言執行者が父親の本籍地、子どもの本籍地、遺言執行者の住所地のいずれかの市区町村役場に遺言書の謄本などとともに、認知届を提出します。提出は、遺言執行者就任の日から10日以内に行う必要があります。

なお、遺言執行者とは、遺言者が亡くなった後、遺言の内容を実現するためにさまざまな手続きを実行する人をいいます。遺言認知では、認知の届出は遺言執行者が行う、とされています(戸籍法)。

子どもが法定相続人として相続に参加する

認知を受けた子どもは、法定相続人として相続に参加します。認知の旨を記した遺言書に遺産分割の方法について記載がない場合には、他の相続人とともに遺産分割協議を行うことになります。他の相続人が、遺言認知を受けた人を協議から排除することはできません。

遺言認知の注意点

父親の遺志を実現し、認知された子どもにもメリットがある遺言認知ですが、注意すべきこともあります。

家族とのトラブルを生む可能性がある

父親には生前に認知できなかった事情があるとはいえ、残された配偶者(妻)やその子どもなどの親族にとって、遺言認知された子どもは「相続になって突然現れたよその人」に映るはずです。場合によっては、相続分が減ったり、相続人でなくなったりすることから、トラブルになる可能性は、通常の相続よりも高いとみなくてはなりません。

記事監修者からのワンポイントアドバイス
父親が生前に認知できなかった事情があるとはいえ、このような相続トラブルを避けるためにも、生前に対策を考える・対策をすることが大事になります。
SSK税理士法人 代表 佐々木梨絵(税理士・1級ファイナンシャル・プランニング技能士)

認知には子どもの同意が要る場合がある

子どもが成人している場合、遺言認知には本人の同意が必要なことに注意しましょう。ただし、遺言書を作成する時点で承諾を得ておく必要はなく、遺言執行者が認知届を提出するときまでに得られればOKとされています。

あらかじめ遺言執行者を決めておく

さきほど述べたように、遺言認知の届け出は、遺言執行者でなければできません。遺言執行者は遺言書で指定することができますから、あらかじめ決めて、必ず記載するようにしましょう。

記事監修者からのワンポイントアドバイス
遺言書で指定されていない場合には、相続発生後に、相続人が家庭裁判所に遺言執行者選任の申し立てをしなくてはなりません。それだけ、手続きに時間がかかることになります。
SSK税理士法人 代表 佐々木梨絵(税理士・1級ファイナンシャル・プランニング技能士)

譲る財産を決めておく

遺言認知の結果、法定相続人になれば、法定相続分の遺産を相続することができます。ただし、遺産といっても現預金のほか、不動産、債権などいろいろなものがあります。遺言認知された子どもがいきなり遺産分割協議に参加して、「何をもらうか」で他の親族と話を始めた場合、争いの確率をさらに高める公算大です。

遺言書には、認知した子どもにどんな財産をいくら譲るのかも、明確に記載しておくことをお勧めします。

子や母親が求める認知もある

遺言認知について説明しましたが、認知にはこれ以外にもさまざまな種類があります。最後に簡単にみておきましょう。

父親の意志による「任意認知」

男性側の意思に基づいて行われる認知手続きで、遺言認知もこれに含まれます。

●胎児認知
子どもが生まれる前の胎児の段階で行う認知手続きです。認知には、母親の同意が必要になります。

●認知届による認知
父親が市区町村役場に認知届を提出することで、認知を行います。認知すると、その法的効力は子どもの出生時までさかのぼります。

●遺言認知

裁判などによる「強制認知」

けっこうあるのが、「実の父親が認知してくれない」というパターンです。そのような場合には、子どもや母親が、裁判所の手続きを通じて、父親に対して認知を求めることができます

●裁判認知
家庭裁判所に認知調停の申し立てを行います。調停が不成立の場合には、裁判所に訴えを起こすことができます。この裁判手続きでは、DNA鑑定などを通じて、裁判所が父子関係の有無についての判断を下すことになります。

●死後認知
すでに父が死亡している場合には、父親の死後3年以内に、検察官を相手に認知請求訴訟を起こす死後認知という手続きがあります。やはりDNA鑑定などを行って認知が認められれば、子どもは、出生時から父親の子どもであったとみなされます。

記事監修者 佐々木税理士からのワンポイントアドバイス

事情があり生前に認知が難しい場合、遺言書を使って子どもを認知する遺言認知という方法があります。ただ、遺言認知の場合は相続でトラブルを招きやすい、といった注意点もあります。父親の死後に家族以外の子がいることを知った他の親族は感情的になることもありますし、認知を受けた子は自分をよく思っていない親族と協議をする必要があるので大きなストレスになります。遺産分割協議が長引けば、相続税申告の期限に遺産分割が間に合わない可能性もあります。また認知症になると遺言書の作成ができなくなり、たとえ作成したとしても無効とされることもあります。
遺言認知は非常にデリケートでトラブルになりやすいので、遺言書を作成するときには、相続に詳しい専門家に相談した上で作成されることをおすすめします。

この記事の監修者
SSK税理士法人 代表 佐々木梨絵(税理士・1級ファイナンシャル・プランニング技能士)
お客様のセカンドパートナーとして、税務会計から節税対策、経営コンサルティングまで、事業を全面的にサポート。特に相続税、事業承継、農業税務を得意とし、徳島エリアの経営者を支える。
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この記事の執筆者
相続財産センター編集部
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