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相続には「財産目録」が必要? 作成の目的やその方法、注意点などを解説

相続には「財産目録」が必要? 作成の目的やその方法、注意点などを解説

2024年8月7日 
最終更新日:2024年9月11日

この記事の監修者
河鍋公認会計士・税理士事務所
代表 河鍋 優寛(税理士・公認会計士)

「財産目録」とは、その名の通り被相続人(亡くなった人)の財産(遺産)を一覧にした文書です。現金や不動産といった遺産の種類と、それぞれの残高、価格を記載したものと考えてください。プラスの財産だけでなく、借金などマイナスの財産もリストアップしなくてはなりません。財産目録が必要になる場面、作成方法や注意点などを解説します。

財産目録は「誰」が「何のため」に作るか

正しくは「相続財産の目録」

財産目録は、正式には「相続財産の目録」といいます(民法1011条)。法律に明記されているとはいえ、相続で作成が義務づけられているわけではありません。遺言書を作る場合でも、そこに遺産の分け方を書けば、わざわざ別にリストを付ける必要はないケースも多いでしょう。

しかし、財産目録の作成が「必須」になる相続もあります。そこまでいかなくても、作っておけば、後述するようなメリットがあり、「争続」を避ける手立てにもなります。

財産目録を作れる人は?

ところで、財産目録は誰が作成できるのでしょうか? これにも特に決まりはないのですが、通常は相続に関係する①被相続人か②相続人ということになるでしょう。

①被相続人が作成する

被相続人が遺言書とともに財産目録を用意することで、遺産分割についての意志をより明確に伝えることができ、相続人もスムーズに手続きを進めることができます。

②相続人が作成する

被相続人が遺言書を残しておらず、遺産の内容が不明確な場合には、相続人が財産をリストアップし、遺産分割や相続税の納税(課税される場合)を行っていく必要があります。

なお、相続では、遺言書で「遺言執行者」(被相続人の残した遺言書の内容を実現するために、必要な手続きなどを行う人)が選任されることがあります。遺言執行者は、財産目録を作成し、各相続人に送付しなくてはならないことになっています。

遺言執行者についてはこちらの記事:遺言の中身を確実に実行「遺言執行者」を知っていますか?

財産目録はどう使われる? 作成のメリットは

財産目録作成の必要性、メリットについて、詳しくみていきましょう。

財産の中身が明確になり、相続税対策に活用できる

遺産額が大きい場合に気になるのが、相続税です。節税のためには、例えば一部の財産を生前贈与する、現金を不動産に換えておく、といった手立てがありますが、財産の中身が明確になっていることが前提です。きちんとした財産目録の作成は、有効な相続税対策の武器になります。

記事監修者からのワンポイントアドバイス
私が相続セミナーに登壇する際には相続税対策の重要性について話しますが、すべては「遺産の種類と金額」を知ることから始まります。
逆に言えば、これが分からないと我々税理士のアドバイスも効果が薄いものになってしまいますので特に重要です。
河鍋公認会計士・税理士事務所 代表 河鍋 優寛(税理士・公認会計士)

相続税の申告に役立つ

そもそも相続税には、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という基礎控除額があり、遺産総額がこの金額以下ならば、原則として申告・納税の必要はありません。生前に財産目録を作成することで、納税の必要があるのかどうかが明確になります。

相続税が発生する場合、申告・納税は、相続開始から10ヵ月以内に行うよう定められています。被相続人の死後に、その財産を相続人が1から調べるのは、骨の折れる作業です。財産目録があれば、遺産の調査に時間がかかって次に述べる遺産分割協議が進まず、申告が期限に間に合わなかった、などの事態を防ぐことができるはずです。

遺産分割協議が円滑に進む

被相続人が遺言書を残さなかった場合には、相続人が遺産分割協議で遺産の分け方を決めます。遺産の中身が明確になっていなければ、まずその内容を調べて、財産目録を作成することになります。それがないと、遺産分割も相続税支払いの必要性の判断もできません。

仮に被相続人が遺言書を作成していなくても、正確な財産目録を残していれば、話は違います。相続人は、その内容に基づいて、速やかに「分け方」の話し合いに入ることが可能です。いたずらに協議に時間がかかることでトラブルを生むリスクも、軽減することができるでしょう。

「相続放棄」の判断材料になる

被相続人が借金などを残して亡くなった場合、相続人は、それを受け継がなくてはなりません。その金額がプラスの財産を上回るようなケースでは、「相続放棄」により、マイナスの財産の引き継ぎを回避することも可能です。ただし、相続放棄すると、プラスの財産も相続できず、一度認められると撤回もできません。プラス・マイナスの判断には、正確性が求められます。

財産目録には、借金などのマイナスの財産も記載されます。プラス・マイナスそれぞれの財産の種類や金額が明確にされますから、比較検討が容易になります。

相続放棄についてはこちらの記事:被相続人の負債は「相続放棄」でチャラに でもそこには、大きなリスクも

財産目録の作成方法

決まった書式はない

相続の際の財産目録については、特定の書式が決められているわけではありません。説明したような財産目録の目的が果たせるよう、以下のような内容を記載するのがいいでしょう。

なお、自筆証書遺言書に財産目録を添付する場合、以前は遺言書も目録も自筆(手書き)以外「不可」でしたが、現在は財産目録をパソコンで作成することが認められています。

財産目録に書くべき内容

財産目録には、遺産の種類、評価(金額)を具体的に記載する必要があります。

●預貯金

「金融機関の名称」や「本支店名」「種別」「口座番号」「残高」の情報が必須です。手元に通帳のないネット銀行も忘れずに記載します。

●不動産

家や土地などの不動産については、土地と建物に分けて、それぞれ記載します。

例えば自宅の場合

・土地:「所在」「地番」「地目(宅地)」「地積」「評価額」
・建物:「所在」「家屋番号」「種類(居宅)」「構造(瓦葺屋根2階建)」「床面積」「評価額」

といった内容になります。

●有価証券

財産に上場株式などの有価証券がある場合は、「銘柄」や「保有株式数」「評価額(時価)」に加え、「証券会社名」「口座番号」も記載しておきます。

一方、非上場株(自社株)の場合は、評価額の算定が容易ではありません。この分野に詳しい税理士などの専門家に相談すべきでしょう。

●自動車や貴金属などの財産

自動車がある場合には、車検証を基に「登録番号」「車体番号」「登録年式」「評価額」を記載します。

また、価値のある骨董品や美術品、宝石や貴金属などについても、「製造番号」などのそれぞれを特定できる情報、「評価額」を記載します。

●生命保険(死亡保険)の保険金

被相続人の死亡に伴い支払われる生命保険金は、受取人固有のもので、民法上の相続財産ではありませんが、相続税の課税対象になります。念のため財産目録に記載しておくといいでしょう。

記事監修者からのワンポイントアドバイス
特に不動産の場合は、被相続人の占有だけでなく他人と共有になっている財産もあります。特に賃貸に出している集合住宅などの場合は賃借状況で評価額が変わることになりますので、利用状況や権利関係も明確にすることをお勧めします。
河鍋公認会計士・税理士事務所 代表 河鍋 優寛(税理士・公認会計士)

マイナスの財産も記載する

財産目録には、マイナスの財産も漏れなく記載しなくてはなりません。カードローンなど金銭の借り入れのほか、住宅ローンなどの残高も負債です。

これらについては、「債権者名」「種別(○○銀行カードローン)」「借入金額」「残高」を記載します。

また、次のようなものもマイナスの財産ですから、注意しましょう。

・家賃の未払い分
・医療機関の治療費の未払い分
・施設使用料の未払い分
・税金の未納分
・クレジットカード利用分

財産目録の作成、利用についての注意点

説明したように、相続の際に多くのメリットがある財産目録ですが、内容に問題があったりすると、逆に揉め事の原因になるかもしれません。注意すべき点をまとめました。

記載漏れのないように

まず気をつけたいのが、すべての財産を漏れなくリストアップすることです。高額の財産が抜け落ちていたりすれば、遺産分割協議のやり直しが必要になるかもしれません。繰り返しになりますが、財産目録には、マイナスの財産も正確に記載しましょう。

記事監修者からのワンポイントアドバイス
形式面では、PCで作成する場合などの自署でない財産目録の場合は毎葉に作成者の署名押印が必要であることに注意です。また、作成日も書き漏れがないようにしましょう。
河鍋公認会計士・税理士事務所 代表 河鍋 優寛(税理士・公認会計士)

必要に応じて再チェックを

相続税対策に役立てたりするためには、財産を譲る人が生前に、なるべく早い段階で目録をつくるのが理想です。ただし、相続になり遺産分割を行うときには、財産の状況が変わっていることもあるでしょう(例えば預貯金の目減り、不動産価格の変動など)。作成から時間が経っているような場合には、あらためてチェックする必要があります。

不動産は「評価額」と「実勢価格」の違いに注意

土地や建物は、相続税の申告においては、通常「路線価」や「固定資産税評価額」を基準に「評価額」を計算します。この評価額は、実際の取引価格よりも大幅に安くなるのが普通です。

この金額のズレは、相続税の減額には有利に働くのですが、遺産分割においては問題となる可能性があります。評価額で不動産を相続した人は、実際にはそれより多くの財産を取得していることになるからです。評価額と実際の取引価格を併記しておけば、より完璧な財産目録といえるでしょう。

疑問があれば自ら調査する

被相続人や他の相続人が財産目録を作成した場合、その内容を信用できないこともあるでしょう。そのようなときには、自分で調査して、あらためて財産目録をつくることも可能です。相続人は、遺産分割の際に、被相続人の遺産について、ある程度まで調べることができます。

まとめ

財産目録には、スムーズな遺産分割を可能にするなどのメリットがあります。特に遺産が高額になる、財産の種類が多いといったケースでは、作成したほうがいいでしょう。

ただし、中身が正確で、円滑な相続に役立つものでなくては意味がありません。必要に応じて、相続に詳しい税理士などのサポートをお勧めします。

記事監修者 河鍋税理士からのワンポイントアドバイス

財産目録は被相続人が生前に作成する場合や、相続開始後に相続人が作成する場合の双方において役立ちます。ただし、遺産内容の把握が出来ていることや形式面をクリアしていることが大切です。

被相続人の遺産が多いケースや金融機関口座・不動産を多数保有しているケースでは財産目録の作成も煩雑になりがちです。

これに加えて、名義預金や生前贈与加算も相続財産に加算して相続税を算定する必要がありますので、財産目録にこれらが載っていない場合、遺産分割協議や相続税申告上は留意しましょう。

少しでも不安に感じられた場合や財産目録作成に関するアドバイスをお求めの方は、相続税の専門家である税理士にご相談されることをお勧めします。

この記事の監修者
河鍋公認会計士・税理士事務所 代表 河鍋 優寛(税理士・公認会計士)
大手監査法人、税理士法人で会計監査、相続税申告を数多く担当し、独立。物腰が柔らかく、真面目な30代の若手代表が運営しており、"気軽に"そして"気楽に"相談できる事務所を目指す。個人・法人の税務顧問はもちろん、資産税や株式上場支援まで幅広くサービス提供しており、顧客のベストパートナーとしてあり続ける会計事務所。
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この記事の執筆者
相続財産センター編集部
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