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相続税対策の基本15選!生前にできる対策と相続発生後にできる方法まとめ【税理士監修】
2024年11月26日
- この記事の監修者
- 松井信行公認会計士・税理士事務所
所長 松井 信行
相続税の節税対策は誰もが避けて通れない重要な課題です。しかし、具体的にどのような対策があり、いつから始めればよいのか悩む方も多いはずです。本記事では、相続税対策の基本から実践的な方法まで、生前対策と相続発生後の対策に分けて詳しく解説していきます。
相続税対策の基本とは
相続税の基礎控除額と節税の目的
相続税の基礎控除額とは、相続財産から控除できる金額のことで、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。たとえば、配偶者と子供2人の場合、基礎控除額は4,800万円(3,000万円+600万円×3人)となります。相続税対策の目的は、この基礎控除額を考慮しながら、相続人の税負担を適正な範囲で軽減することにあります。
生前対策と相続発生後対策の違い
生前対策は、計画的に資産を移転・活用することで将来の相続税を抑制する方法です。一方、相続発生後の対策は、法律で定められた各種特例や控除を適切に活用して、実際の相続税額を軽減する方法となります。効果的な相続税対策には、両方の視点から総合的に検討することが重要です。
生前にできる相続税対策10選
暦年贈与の活用(年間110万円までの非課税枠)
毎年110万円まで贈与税が非課税となる暦年贈与は、最も基本的な相続税対策です。20年間継続すれば2,200万円の資産移転が可能で、受贈者の数だけ活用できるため、計画的な実施で大きな節税効果が期待できます。
贈与を活用する際の重要なポイントとして、以下の点に注意が必要です。
- 贈与契約書の作成など、適切な手続きの実施
- 贈与する側の老後の生活資金の確保
- 贈与を受けた側の資産管理方法の事前確認
教育資金や結婚資金の贈与特例
教育資金の一括贈与は1,500万円まで、結婚・子育て資金の一括贈与は1,000万円まで非課税となります。孫の将来のための資金準備と節税を同時に実現できる効果的な方法です。
教育資金の贈与では、学校等への支払いが対象となり、使用状況の記録と領収書の保管が必要です。また、結婚・子育て資金についても、結婚式費用や育児関連費用など、使途が限定されることに注意が必要です。ただし、通常の贈与とは別枠で設定されているため、有効な相続税対策の手段となります。
生命保険の非課税枠の活用
死亡保険金の相続税非課税枠は「500万円×法定相続人の数」です。生命保険は、相続資金の確保と節税効果を両立できる有効な手段となります。
契約の際は、保険料の支払いが贈与税の対象となる場合があることや、保障内容と保険料のバランスを考慮する必要があります。また、契約者、被保険者、受取人の組み合わせによって税務上の取り扱いが異なるため、慎重な検討が重要です。
賃貸不動産の活用による評価減効果
賃貸不動産は、収益還元法により評価額が低く算定される特徴があります。適切な物件選定と管理により、相続税評価額を抑えながら収益も得られる対策となります。
物件選定の際は、立地や将来性はもちろん、以下の点についても十分な検討が必要です。
- 物件の収益性と維持管理費用のバランス
- 将来の相続時における評価方法の確認
- 賃貸経営の手間と管理体制の整備
配偶者への居住用不動産の贈与(配偶者控除)
婚姻期間20年以上の場合、配偶者への居住用不動産の贈与は2,000万円まで非課税となります。配偶者の生活基盤を確保しながら、相続財産を減らすことができます。
この制度を活用する際は、贈与後の居住継続が要件となるため、配偶者の健康状態や今後の居住予定を考慮する必要があります。また、贈与後は固定資産税などの諸経費の負担者が変更となることにも注意が必要です。配偶者の収入状況や資産状況を踏まえた上で、贈与の時期や範囲を検討しましょう。
小規模宅地等の特例の活用
自宅や事業用地は、要件を満たせば最大80%の評価減が可能です。生前から居住や事業の実態を整えることで、将来の相続税負担を大きく軽減できます。
特例の適用を確実にするためには、以下の準備が重要です。
- 不動産の登記や契約関係書類の整備
- 居住や事業の実態を示す証拠書類の保管
- 将来の相続人との同居や事業承継の計画策定
相続時精算課税制度の利用
60歳以上の親から20歳以上の子・孫への贈与で、2,500万円までの特別控除が適用されます。将来の相続税額から贈与税額が控除される特徴があり、計画的な資産移転に適しています。
この制度は、贈与時点で財産を移転できることに加え、将来の資産価値上昇分を移転できる可能性があるメリットがあります。ただし、一度この制度を選択すると暦年贈与への変更はできないため、贈与者と受贈者の年齢要件や相続までの期間を考慮した慎重な判断が必要です。
墓地や仏具など非課税財産の取得
墓地、仏壇、位牌などは相続税が非課税となります。これらの財産を生前に購入することで、課税対象となる相続財産を減らすことができます。
ただし、非課税となるのは実際に祭祀の用に供するものであり、通常必要と認められる範囲内である必要があります。購入時の領収書等は適切に保管し、将来の相続時に備えることが重要です。相続税対策としてだけでなく、家族の意向も踏まえた検討が望ましいでしょう。
養子縁組の活用(法定相続人を増やす)
法定相続人が増えることで基礎控除額が増加します。ただし、相続税対策のみを目的とした養子縁組は認められないため、実質的な親子関係の構築が必要です。
養子縁組を検討する際は、以下の点について十分な検討が必要です。
- 家族関係全体への影響
- 扶養義務の発生と将来の負担
- 相続人間での理解と合意形成
財産の分割や整理の計画(争族対策として)
生前に財産の分割方針を明確にし、遺言書を作成することで、相続人間のトラブルを防ぎ、スムーズな相続を実現できます。これにより、余計な費用や税負担を抑制することも可能です。
特に重要なのは、相続人間での十分なコミュニケーションです。財産の現状や分割の基本方針について、できるだけ早い段階から情報共有を行うことをお勧めします。必要に応じて専門家の関与を得ながら、遺言書の作成や財産の整理を進めていくことで、将来の紛争リスクを軽減することができます。
- 記事監修者からのワンポイントアドバイス
- 生前対策に挙げられている「暦年課税制度(暦年贈与)」と「相続時精算課税制度」は、いずれも2024(令和6)年1月1日以後に行う贈与から改正がなされています。
暦年課税制度では、生前に被相続人が贈与した財産のうち相続時の相続財産に加算される期間が相続開始前3年以内から7年以内に延長されました。
一方、相続時精算課税制度では、従前になかった基礎控除(110万円/年)が暦年課税制度の基礎控除とは別に新たに設けられ、その基礎控除分については贈与時に非課税となる上、相続時にも精算する必要がない(相続財産に加えない)ことになりました。
このため、生前贈与にどちらの制度を利用するのが得策かは、贈与者(贈与をする人)の年齢や受贈者(贈与を受ける人)との関係によっても変わってきますので、今まで以上に熟慮して選択する必要があります。 - 松井信行公認会計士・税理士事務所
所長 松井 信行
相続発生後でも間に合う相続税対策5選
配偶者の税額軽減の適用
配偶者は法定相続分または1億6,000万円までの財産を相続税なしで取得できます。この特例を適切に活用することで、実質的な相続税負担を大きく軽減できます。
配偶者の税額軽減を効果的に活用するためには、以下の点に注意が必要です。
- 相続する財産の選択(現金や換金性の高い資産の優先検討)
- 申告手続きに必要な書類の準備
- 配偶者の今後の生活設計を踏まえた判断
小規模宅地等の特例の適用
相続した居住用宅地や事業用地について、条件を満たせば最大80%の評価減が可能です。申告期限までに適切な選択と手続きを行うことが重要です。
この特例を適用する際は、以下のような実務的な対応が必要となります。
- 相続開始時から申告期限までの居住・事業継続の確認
- 適用対象となる宅地の選定
- 必要書類の収集と期限内申告の準備
特に、複数の土地が対象となる場合は、どの土地に特例を適用するかの選択が節税額に大きく影響します。相続人間での十分な協議と、専門家への相談を踏まえた判断が望ましいでしょう。
未分割財産の申告と申告期限後3年以内の分割見込書の提出
相続財産の分割が決まらない場合、とりあえずの申告を行い、その後3年以内に実際の分割を確定させることができます。これにより、慎重な検討時間を確保できます。
この制度のメリットは、以下の点にあります。
- 相続人間での慎重な協議時間の確保
- 財産評価や分割方法の詳細な検討が可能
- 相続税の納税を遅延なく行える
ただし、申告時点での法定相続分で仮の申告を行う必要があり、最終的な分割が確定した際には、更正の請求または修正申告が必要となることに注意が必要です。
物納制度の利用(現金納付が困難な場合)
相続税の納付が困難な場合、不動産などの現物での納付が認められます。ただし、物納できる財産には制限があり、事前の審査も必要です。
物納を検討する際は、財産の管理状況や収益性が審査の重要なポイントとなります。物納が許可されるまでの手続きには一定の時間を要するため、早めの検討と準備が重要です。なお、物納財産は時価で評価され、相続税額との差額は現金で納付する必要があります。
特定の相続財産について専門家に相談し、最適な対応を選択
美術品や事業用資産など、評価が難しい財産については、専門家の助言を得ながら最適な評価方法や対応を選択することで、適切な節税が可能です。
特に慎重な検討が必要なケースとして、以下のようなものがあります。
- 事業承継が絡む相続案件
- 不動産の評価方法の選択が必要なケース
- 相続人間で意見の相違があるケース
このような場合、税理士や弁護士など、複数の専門家との連携が必要となることもあります。相続開始後できるだけ早い段階での相談を心がけ、適切な対応を検討していくことが重要です。
相続税対策の注意点
過度な節税策のリスクと老後資金の確保
節税対策を行う際は、自身の老後の生活資金を十分に確保することが重要です。過度な資産移転は、将来の生活に支障をきたす可能性があります。
特に気をつけるべきポイントとして、以下のような項目があります。
- 平均寿命を考慮した生活費の見積もり
- 医療費や介護費用の予備費の確保
- 年金収入と生活費のバランス
生前贈与は効果的な節税対策ですが、資産を手放してしまうと、予期せぬ支出が必要になった際に対応が困難になる可能性があります。また、将来の税制改正により、新たな対策が必要となることも考えられます。そのため、ある程度の資産は手元に残しておくことを推奨します。
専門家への相談の重要性(税理士や弁護士)
相続税対策は法律や税制の理解が不可欠です。税理士や弁護士などの専門家に相談し、自身の状況に最適な対策を選択することが重要です。
専門家に相談することで得られる主なメリットとして、以下のようなものがあります。
- 最新の税制に基づいた具体的なアドバイス
- 家族状況や資産状況に応じた総合的な提案
- 相続税対策と事業承継の両立
特に相続税対策は、一度実施すると変更が難しい選択も多くあります。たとえば、相続時精算課税制度を選択した場合は暦年贈与に戻すことができません。また、不動産取得や養子縁組なども、安易な判断は避けるべきです。そのため、実施前に専門家の意見を聞き、慎重に判断することをお勧めします。
なお、税理士と弁護士では専門分野が異なります。税理士は税務の専門家として具体的な節税方法を提案し、弁護士は法的な観点から遺言作成や相続手続きをサポートします。案件によっては両方の専門家に相談することで、より適切な対策を講じることができます。
相続税対策は一度の相談で終わりではありません。税制改正や家族状況の変化に応じて、定期的に見直しを行うことが望ましいでしょう。専門家との継続的な関係を築き、状況の変化に応じて適切なアドバイスを受けることをお勧めします。
- 記事監修者からのワンポイントアドバイス
- 相続が生じた際、遺族が行わなければならないことには相続税の申告以外にも葬儀の執行から行政機関等への各種手続きまで様々なものがあります。
その中で遺族が最初に直面する問題は、被相続人(亡くなられた方)が生前どのような財産を保有していたかがよく分からないということです。
そのため、自宅に遺された書類の中から通帳や保険証券など必要なものを探し出し、あるいは行政機関や金融機関に問い合わせ被相続人の財産を一つずつ確認・整理しなければなりません。
遺族にこのような負担を掛けないためには生前に遺言書を作成しておかれるのが理想ですが、そうでなければ簡単な財産目録を遺しておくか、最近はスマホのパスワードやネット上で契約したサービスのログインIDなどの情報も含めて一覧形式でノートに纏めておかれるのが良いでしょう。 - 松井信行公認会計士・税理士事務所
所長 松井 信行
まとめ
計画的な準備と定期的な見直しの重要性
相続税対策は早期に開始することで、様々な選択肢を検討できる余地が生まれます。生前贈与や不動産活用など、時間をかけて効果を発揮する対策も多いため、早めの準備が重要です。また、税制改正や家族状況の変化に応じて、定期的に対策を見直すことで、より効果的な資産承継が可能となります。
バランスの取れた対策の実施
相続税の節税は重要ですが、贈与者の老後の生活設計や受贈者の資産管理能力なども考慮する必要があります。過度な節税策を避け、将来の不測の事態にも対応できる余裕を持った計画を立てることが大切です。特に、資産の流動性や収益性のバランス、相続人それぞれの状況を踏まえた対策を選択しましょう。
家族と専門家を交えた総合的な検討
相続税対策の成功には、家族間での十分な理解と合意が不可欠です。また、税理士や弁護士など専門家の知見を活用することで、より確実な対策を実施することができます。特に、事業承継が絡む場合や複雑な資産構成の場合は、専門家との連携が重要となります。
相続税対策は、単なる税負担の軽減だけでなく、次世代への円滑な資産承継を実現するための重要な取り組みです。本記事で紹介した様々な方法の中から、ご自身の状況に適した対策を選択し、計画的に準備を進めていくことをお勧めします。具体的な進め方については、早めに専門家に相談し、適切なアドバイスを得ることから始めてはいかがでしょうか。
- この記事の監修者
- 松井信行公認会計士・税理士事務所
所長 松井 信行
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