個人事業を法人化したいので、税務や会計の専門家に相談してみよう。そう思ってネットで検索すると、そこには「〇〇税理士事務所」、「△△税理士法人」、さらには「××会計事務所」と、いろんな「組織」が出てきます。
それぞれどう違うのか、どこに依頼するのがいいのか、わかりやすく解説します。
目 次
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「会計事務所」≒「税理士事務所」
まずは「会計事務所」から解説します。
ネット上などでは、「会計事務所」と「税理士事務所」は同じで、単に呼び方の違いでしかないという指摘がほとんどです。
確かに、会計事務所というのは「通称」のようなもので、両者の組織や提供できるサービス・仕事の中身に基本的な差異はありません。ただ、あえて言えば次のような違いがあります。
所長が税理士か公認会計士か
「税理士事務所」は100%税理士が開業していますが、「会計事務所」は公認会計士が開いている場合がある、ということです(「公認会計士事務所」を名乗ることが多い)。
会計士の中には、監査法人で企業決算の監査に携わり、正式に資格を取得した後に個人事務所を開いて独立する人がいます。その場合も税理士業務が中心になりますが(※)、会計士の知識を生かして、経営コンサルタント的な業務やM&Aなどに力点を置くケースもあります。裏を返すと、税務にはあまり強くない先生がいるかもしれません。
どちらが自分のニーズに合うのかは、事務所の名称にとらわれず、その人の資格や経験に注目して検討すべきでしょう。
「税理士事務所」と「税理士法人」はどう違う?
「税理士事務所」と「税理士法人」の違いは、「個人事業主」か「法人」かにあります。
この点は一般の事業と同じことで、個人で働いて所得税を払うか・法人運営で法人税を納めるか、であり、仕事の中身自体に違いが生まれるわけではないのです。
数で比較すれば、「税理士事務所」が圧倒的に多いのが現状です。また、「仕事の中身は変わらない」と言いましたが、事務所の運営には違いがあります。その点が選択の判断材料になることもあるでしょう。
税理士法人は万一の時も安心?
税理士法人は、2001年の税理士法改正でつくられました。税理士法人にするためには、2人以上の税理士が在籍している必要があります。普通の会社の役員に当たる人を社員と言い、社員は税理士でなくてはなりません。また、税理士法人になれば、必ず税理士を配置することを条件に支店展開をすることができます。
また、個人事務所では、税理士の所長が亡くなったり、業務を行えなくなったりすれば、その時点で事務所の看板を掲げ続けることができなくなります。事故や急病などのアクシデントであっても、事務所を閉じなくてはならないケースがあるわけです。小規模事務所でも、上記のようなトラブルやスタッフの離脱により、業務に支障が出ることもあります。
その点、税理士法人であれば、代表者に何かがあっても、組織自体は存続させること自体は可能です。
税理士事務所は個性が強く出ることも
両者の違いは、法律上の問題だけではありません。
一般に、個人事務所では所長の能力や得意分野・やる気・人格といったものが、事務所の仕事内容や雰囲気に色濃く反映されています。
一方税理士法人の場合は、組織化され、業務の分担も進んでいます。ただ、実際の業務は担当スタッフが行う、ということも少なくありません。
どちらが良いか・悪いかは、顧問契約をして実際に業務を依頼してからでないと分からないのですが、契約の前に業務の詳細な流れを確認しておく必要があります。
「税理士事務所」と「税理士法人」どちらを選ぶべきか?
説明してきた点も踏まえて、税理士事務所と税理士法人それぞれのメリットを挙げれば、一般的に次のようになるでしょう。
税理士事務所のメリット
- 税理士本人に対応してもらえる。
- 税理士の得意分野について、キメ細かなアドバイスがもらえる。
- アットホームな雰囲気で、相談がしやすい。
税理士法人のメリット
- さまざまな課題に対応してもらえる。
- 個人で足りないところは、組織がカバーし解決策を見出してくれる。
- 体制面でも、組織的なフォローという安心感がある。
税理士事務所・税理士法人のデメリット
デメリットはこれらの裏返しで、例えば個人事務所だと、サポートしてもらえる分野に限りがある、大きな税理士法人の場合は、税理士資格を持たない担当者にしか対応してもらえないことがある、といった点になるでしょう。
税理士に依頼したい内容による
ざっくり言えば、毎年の税務申告といったルーチンワークがメインならば、税理士事務所に頼むのがベターでしょう。
相続をスポットで頼むような場合にも、経験を持つ税理士に直接助言を求めるのが良いかもしれません(相続専門の税理士法人もありますが、必ずしも全スタッフが相続のプロというわけではありません)。
事業がそれなりの規模になり、直面する課題も、海外取引や事業の買収・移転、あるいは事業承継といった複雑なものになっている場合には、それに対応できるだけの規模と組織を持つところ(中規模税理士事務所~)にサポートを依頼すべきです。
企業の場合は、長期的な視点で選ぶのがおすすめ
さきほども述べたように、個人の事務所や小規模事務所だと、税理士に何かあったとき、抱えていた仕事を事務所が継続することが困難になってしまいます。
会社にとって重要かつ長期的なフォローを求めたい案件については、複数の税理士がいて組織的な裏付けもあるところに任せるのが無難と言えるかもしれません。
まとめ
税理士事務所も、税理士法人も、「税理士に求められる仕事をする」という基本のところは、変わりません。具体的に、何を頼みたいのかを明確にしたうえで、自分に合うところを選択すればいいでしょう。
迷ったら、実績のある税理士紹介会社を利用して、自分に合っている税理士事務所・税理士法人を探してみるのも1つの方法です。