大きな設備や事務所もいらず、簡単に始められて、手軽に稼げるネットショップの人気が高まっています。ただ、それだけに“置き去り”にされがちなのが、税金のこと。「稼ぎ」がある以上は、基本的に課税対象になり、納税を怠ったりすると重いペナルティを課せられることもあります。そんなことにならないように、頭に入れておくべきポイントを解説します。
目 次
ネットショップ・EC事業の「ごまかし」は税務署にダダ洩れ!?
ネットショップ・EC事業を始めるとき、税金に対する知識が不十分だと、事業を安定的に営めなくなる可能性があります。
税金の負担を考えていなかったために、仕入れに回すお金が不足してしまった。払わなくてもいい税金を納めてしまった。まして、「申告しないでも大丈夫だろう」とそのままにしていた結果、突然税務署から連絡があって、追徴課税(後述)を支払わなくなったりしたら、せっかくの努力が水の泡になってしまいますね。
実店舗での販売と違い、インターネットを通じたやり取りは、税務署にバレないだろうと感じるかもしれませんが、それは過去の話。ネットショップを含むインターネット取引での不正に対応するため、国税庁はすべての国税局に「電子商取引専門調査チーム」を設け、監視を強化しているのです。さまざまなところに電子データが残るネット取引は、むしろ「捕捉されやすい」ビジネスだと言えるでしょう。
ちなみに、税務署には、銀行口座を調査する権限も与えられています。あなたの収入はすべて“丸裸”にされていると考えてください。
ネットショップ・EC事業の主な税金
所得税: 個人事業主が対象となる所得税の仕組みと基本
個人事業主の場合、利益(所得)に対して所得税が課税されます。ネットショップやEC事業で得た収入から必要経費を差し引いて利益を求め、社会保険料等を控除した後の金額(課税所得金額)に対して税率を乗じ税額を計算します。
法人税: 法人化した場合にかかる法人税の概要
これに対して個人事業を法人化した場合、利益(所得)に課税されるのは法人税です。収入から経費を差し引いて利益(所得)を求めるのは個人事業と同じですが、その利益に法人税法で定められた加算・減算の手続きを経て課税所得金額を計算する点が異なります。
消費税: 一定の売上を超えた場合に課される消費税の基礎知識
所得税や法人税とは別に、当年(当期)の売上高(課税売上高)が1,000万円超になった場合、翌々年(翌々期)から消費税の納税義務が生じます。また、特定期間(個人事業主の場合は1月から6月、法人の場合は期首から6ヶ月)の課税売上高が1,000万円超になった場合には、翌年(翌期)から消費税の納税義務があります。消費税の納税義務が生じた場合、本則課税あるいは簡易課税いずれかの方式で消費税額を計算し納付しなければなりません。
住民税・事業税: 地方税の仕組みとネットショップへの影響
事業で得た利益(所得)については、国税のほかにも都道府県や市区町村からも各種税金が課税されます。
・住民税(都道府県民税・市区町村民税)
個人事業主の場合は住所地、法人の場合は本店や支店の所在地を所轄する都道府県や市区町村に対して納付する税金です。個人事業主については、所得税を計算する際に求めた所得金額から住民税の所得控除を適用した後の課税所得に対して税金がかかります。法人の場合は、法人税額に税率を乗じた金額が地方税額となります。
・事業税
事業で得た所得が、ある一定の金額以上になった場合、住民税とは別に事業税が課税されます。個人事業主の場合は290万円の控除がありますので事業所得から290万円を控除した後の所得、法人の場合は所得に法人税法の加算・減算を行った後の所得に対して税金がかかります。
ネットショップ・EC事業の確定申告と節税ポイント
個人がネットショップ・EC事業を本業として営む場合、毎年1月1日~12月31日の1年間の所得(事業所得)について、管轄の税務署に確定申告する必要があります。
申告期間は、原則として翌年2月16日~3月15日となっています。
個人事業主が主として支払う税金は、所得税です。これは、所得に税率を掛けて計算され、その税率は、所得が多いほど高くなっていきます(累進課税)。
ところで、所得は売上とは違います。売上から経費、控除(例えば生命保険控除)を差し引いた金額が所得です。
経費とは、ひとことで言えば「事業を営むために使った費用」のことで、同じ売上だったとしても、これが多いほど所得は低くなる、つまり税金は安くなります。
ですから、使った経費は確実に計上する、つまり売上から差し引くことが、節税の大きなポイントと言えるのです。
ネットショップ・EC事業で経費にできるものは?
では、ネットショップ・EC事業で経費に計上できるのは、どんな費用でしょうか?
経費として認められるもの一例
一般的には、
- 商品の仕入れ代金、材料費
- ショップの作成費
- ホームページ作成費
- 事業関連の書籍代、セミナー受講費
- サーバー、ドメイン代
- カメラ、スキャナー、プリンターなどの費用
- 梱包材
- 商品買い付けの際の交通費、車のガソリン代
- 振込手数料
- 商品発送の際の送料
- パソコン、スマホなどの通信料
- 光熱費
などのような支出があれば、経費として認められるでしょう。
ただし、あくまで「事業に関係のある出費」であることに注意してください。
ネットショップの運営をしているのに、「交際費」が異常に多かったりすれば、税務署に目を付けられるかもしれません。また、例えば自宅で仕事をしている場合の光熱費など、日常生活でも発生する費用については、「事業に使った分」を計算して、経費にする必要があります(家事按分)。
確定申告では経費が重要!
確定申告には、「青色申告」と「白色申告」があります。「青色」だと、65万円の特別控除が受けられるといったメリットがあるのですが、帳簿付けなどでやや煩雑な作業が必要になります。
この確定申告を、「バレないだろう」「面倒だから」といった理由で怠ったり、あるいは経費にできないものをしていたなどのミスがあったり、さらには意図的にごまかしたりした場合には、税務署から「税務調査」(※)を受ける可能性があります。
その結果、「無申告加算税」「過少申告加算税」などを、本来支払うべき税額に上乗せして追徴されることになるかもしれません。「仮装、隠蔽があった」と判断された場合の「重加算税」の税率は、最高40%です。
確定申告で注意が必要なポイント
確定申告で最も気をつけるべきポイントは「網羅性」です。1年間の取引によって得た収入や必要経費を1つ1つチェックし、全て漏れなく計算に含めることが大切です。特に収入の計上漏れは所得が少なくなりますので、イコール所得税を正当な金額より少なく納税することになります。「収入を漏らしたけど、お咎めなしだったから大丈夫」と安心するのは早計で、このような不正に対する調査は数年後に来るケースがありますので注意が必要です。
「無申告でもバレなかったから大丈夫、は間違い」という点を覚えておきましょう。
所得が増えたら法人化も検討しよう
さきほど、「所得税の税率は、所得が多いほど高くなる」という話をしました。事業が軌道に乗って利益が増えてきたのに、割増の税金を支払わなくてはならないのでは問題ですね。
そうならないために、事業規模がある程度大きくなったら、法人化を検討する必要があるでしょう。法人が納める法人税は、税率が一定のため、所得が膨らんでも税額の大幅な増加を抑えることができるからです。
また、法人にすることで、ショップとしての信用度を高められる、というメリットもあります。
ただ、所得がどのレベルになったら法人化すべきかという「損益分岐点」は、それぞれの人の生活実態や事業の見通しなどにより異なります。
法人化すれば、経費処理や申告業務が複雑になるほか、社会保険に強制加入となって、その保険料を半額会社が負担しなくてはならないなどの「デメリット」もあります。税理士などの専門家に、そうしたことを含めた詳細なシミュレーションを作成してもらったうえで、慎重に判断すべきでしょう。
ネットショップ・EC事業に詳しい税理士をお探しの方へ
「ネットショップと税金」について述べてきましたが、実際には取引の数も多く、適切な節税策を講じながら「お金まわり」の作業をこなすのは、かなり大変です。事業に集中したいときなどには、税理士のサポートを検討してみてはいかがでしょうか。