税理士の変更を検討する際のタイミング・手順や契約解除の注意点を徹底解説
- 最終更新日:
- 2024/09/30
- この記事の監修者
- 税理士紹介のパイオニア
株式会社ビスカス 代表取締役 八木美代子
この記事のアドバイザー
梶本公認会計士・税理士事務所 所長
梶本卓哉
早稲田大学卒業後、関東信越国税局採用。税務大学校を首席卒業(金時計)し、税務署法人課税部門にて法人税、消費税等の税務調査に従事。複雑困難事案の事績により署長顕彰。税務署勤務中に公認会計士試験に合格し、大手監査法人に入所。製造業や不動産業をはじめ様々な業種の上場会社監査やIPO監査に従事。その後、中央官庁勤務を経て、大手証券会社の投資銀行部門で多数のIPOの実現に関与。2023年公認会計士・税理士事務所開設。主に法人の税務顧問を務める。
顧問税理士にこんな不満を抱いていませんか?
会社の税務をそつなく処理してたくさん節税してくれて、ときには経営についての的確なアドバイスをしてもらえる――。顧問税理士を雇うなら、そんな役割を誰しも期待するでしょう。でも、すべての税理士がそのニーズに応えられるわけではないのが実情です。現実には以下のような不満で、経営者が顧問の交代を検討するケースも少なくありません。以下のような不満を抱いている経営者の方も多いのではないでしょうか。
- 【事務所の対応の悪さ】
- 税理士ではなく無資格(資格取得中)の担当者任せになっている
- 税理士が上から目線で相談しにくい
- メールや電話のレスポンスが遅い
- 【サービス内容への不満】
- 税理士顧問料が高すぎる
- 試算表を渡すだけで決算対策の助言がない
- 業界知識が乏しく経営の相談に乗ってくれない
- いまだに手書きで申告書を作成している
顧問税理士の仕事に対する不満は、顧問契約の見直しを考えるきっかけになります。
現在の税理士を見直してみる
まずは、現顧問の税理士が自社に合っているか見直してみましょう。ここでは4つのケースを挙げます。
税理士の対応に満足できない
上述したように、税理士の対応に不満を感じたときは“換え時”です。事業を始めたばかりの頃は税務を肩代りしてくれるだけで満足していたとしても、年月が経っていろいろなことがわかり始めると不満も大きくなっていきます。本来、経営者と税理士は固い信頼関係で結ばれているべきものです。不満が増大し、信頼に基づく関係の維持が難しくなった段階もまたら、税理士を変更するタイミングと言えるでしょう。
経営環境が変化した
経営者の代替わりや新規事業の展開など、経営環境の変化も税理士の変更を考えるタイミングです。「もともと、顧問税理士の対応に不満を持っていたものの、なかなか変えるきっかけがつかめない」という状況の場合、「経営環境が変化したから、顧問税理士も含めて新しい体制を構築したい」と顧問税理士に契約終了を切り出しやすくなります。
経営者が代替わりした
経営者の代替わりは顧問税理士を変更しやすいタイミングです。そもそも、税理士の変更を躊躇してしまう理由の1つに「繋がりを切りにくい」ことが挙げられます。税理士や監査担当者とは会社の財務内容という重要部分を共有することから必然的に繋がりが深くなります。また、会社の財務内容は誰にでも開示できるものではないため、簡単に税理士を変更しづらいという側面もあります。逆に、経営者の代替わりは新たな繋がりを作る契機になります。「経営者が変わるのを機に経営体制を一新したいので、顧問税理士も変更したい」と切り出せば、税理士にも納得してもらえるでしょう。
新たな事業やニーズが出てきた
また、事業内容を変更するときも新規事業の立ち上げ時も、税理士の再検討が必要です税理士の変更を検討するきっかけになります。既存事業と異なる事業が異なればにおいては、何が経費として認められるのかといった細かな解釈や節税テクニックも違ってきます。税理士にはそれぞれ得意な事業分野があるので、事業が入れ替わるときには新規事業への参入をきっかけに、新しい事業分野に明るい税理士に変更することを検討すると良いでしょう。
税理士事務所の体制が変わった
税理士事務所側に変化が起きたことをきっかけに、顧問税理士の変更を検討する場合もあります。いつも訪問してくれる担当者が退職し、新しく来た担当者が迅速に対応してくれなくなったり、的確なアドバイスをもらえなくなったりということは珍しくありません。あるいは、事務所が合併して税理士法人となり、トップの意向で訪問回数など顧問先のフォロー体制が変わることもあります。税理士事務所側の体制が変わることで、事務所から提供されるサービスの質が低下したと感じたときは、顧問税理士の変更を考えましょう。
税理士が新しい技術に対応できない
経営者は日々、経営改善に取り組みます。その一環として、クラウド会計など新しい技術の導入も考えている人も多いでしょう。しかし、顧問税理士がその動きに対応できないこともあります。そのような場合、新しい技術に対応してくれる税理士を新たに探す必要があります。
クラウド会計に移行したい
クラウド会計を導入すれば、インターネット上のクラウドを活用し、どこからでも取引を入力し、自動仕訳や管理ができます。経営者としては、会計業務の効率化を進めるうえで欠かせない技術ですが、顧問税理士がクラウド会計の導入に対応してくれないケースがあります。一方、クラウド会計の導入を積極的に支援している税理士もいます。クラウド会計に対応してくれる税理士と顧問契約を結べば、クラウド会計ソフトの導入に必要なデータ移行や初期設定などを行ってくれます。
労務と税務のワンストップ対応を求めている
従業員の給与や各種保険など労務に関する相談事は社会保険労務士(社労士)、税務に関する相談事は税理士にそれぞれ依頼することになりますが、会社経営の観点で考えると労務と税務は密接なつながりがあります。できれば、ひとつの窓口に相談し、迅速に課題を解決したいところです。そんなときは、社労士資格を有する税理士、あるいは事務所内に社労士も所属する税理士事務所、社労士事務所をグループ内に持っている税理士法人など、ワンストップで対応できる体制を整えている税理士と顧問契約することをおすすめします。
税理士変更の際にトラブルにならない断り方は?
梶本 卓哉
税理士からのワンポイントアドバイス
昨今、税理士変更は当たり前になってきていますので、税理士としてもその可能性は常に認識しており、変更するというだけでトラブルになることはそれほど多くはないと思います。
しかしながら、契約形態や変更時期によっては円満な変更が難しい場合もあります。例えば、月額の顧問料とは別途に決算料を支払う報酬体系の場合、決算前の期中に解約するのはトラブルの原因になりやすいです。
期中での解約については、違約金が設定されていることもあります。決算まで対応してもらえないのに違約金を支払わなければならないというのは、納税者にとっては納得しづらい面もあるかと思います。一方で、違約金が設定されていない場合、税理士としては決算を見越して前広に対応していることもありますので、期中に解約されるとその工数が無駄になってしまうということがあります。
以上から、税理士の変更については、次の決算までと早めに税理士に伝えておくことが望ましいと思います。
税理士を変更するメリット
次に自社に合った税理士に変更することで、どのようなメリットが得られるのか見てみましょう。
より積極的な提案が得られる
自社の業界に関する知識に乏しく、自社の事情に合わせた経営アドバイスが得られない税理士から、業界の事情に詳しい税理士に変更すれば、経営判断に役立つ情報や提案が得られる可能性があります。業界の最新動向や自社と関連性の高い補助金など、経営者が独力で集めるのが難しい情報が得られるだけでなく、どのように活用すればよいかアドバイスももらえ、経営者にとって心強いパートナーになるでしょう。
コミュニケーションの改善
電話やメールのレスポンスが遅い、あるいは税理士の人柄が合わず相談しづらいといった問題を解決するために税理士を変更できれば、円滑なコミュニケーションができ、経営者の精神的なストレスが軽減されます。この場合、きめ細やかなフォローができる、あるいは人当たりがよく相談しやすい税理士を見つけられるかがポイントになります。
試算表などの早期提出が可能
経営状況の把握や融資を受ける際に金融機関に提出するなど、試算表をすぐに出してほしいと希望する経営者は多いでしょう。試算表は1~2週間程度で提出されることが多いので、1か月以上待たされる場合は、税理士を変更すれば解決できる可能性があります。試算表の提出が遅い税理士事務所は、スタッフの数が足りずに試算表をスピーディーに出す体制が整っていないと考えられます。事務所スタッフの数や税理士の年齢などを参考に、試算表をスピーディーに出してくれそうな税理士事務所を探すとよいでしょう。
税理士変更のデメリット
税理士を変更したばかりに「こんなはずではなかった」と後悔することもあります。変更を考える際は、あらかじめデメリットも知っておきましょう。
顧問料が上がる可能性
新たな税理士と契約することで、顧問料が今よりも高くなる可能性があります。サービスの質と顧問料は相関関係があるため、今よりも良いサービスを受けたいと考えるなら、今よりも高い顧問料を支払わなければなりません。顧問料が上がることを理由に、税理士の変更を躊躇する経営者の方もいらっしゃるでしょう。しかし、経営者の希望を満たせない税理士と契約し続けるほうが、経営上の不利益をこうむります。
必要な手続きと書類の準備
顧問税理士を変更する場合、顧問契約を結ぶときにかわした契約内容を確認し、契約解除の手続きをする必要があります。また、税理士に預けていた決算関係の書類を返却してもらいます。顧問税理士に契約解除を申し出て承諾してもらい、手続きを進めるのは相当なエネルギーと時間が必要です。顧問税理士との付き合いが長いほど、経営者にとっては重荷になります。
税理士変更の手順
税理士を変更するときには、現在の税理士との契約内容をよく確認すること、預けた書類を返してもらうこと、契約解除の通告やスケジューリングを文書化すること、新しい税理士が見つかってから契約を解除することに注意しましょう。以下に、税理士変更の手順について簡単に整理します。
番号 | 手順 | 重要なポイント |
---|---|---|
1 | 現在の税理士との契約内容を確認する | 契約書をよく読み、手続きを確認する |
2 | 次の税理士を事前に探す | 新しい税理士が決まってから解約する |
3 | 解約の意思を現在の税理士に伝える | 文書で意思を伝える |
4 | 重要書類を回収し新税理士へ引き継ぐ | 会計データの電子データも忘れずに |
5 | 新税理士との業務開始日を調整する | 契約期間がダブらないよう調整する |
解約手続きが完了する前に、回収する必要がある重要書類リスト
- ☑ 決算書
- ☑ 仕訳帳
- ☑ 総勘定元帳
- ☑ 請求書
- ☑ 領収書
- ☑ 会計データ(電子データ)
顧問税理士変更のベストタイミング
新しい顧問税理士に変更するタイミングとして適しているのは「法人税申告書提出後」と「税務調査の完了後」です。一方、決算月の変更は避けなければなりません。ここでは、変更に適したタイミングと避けるタイミングについて解説します。前の顧問税理士との契約書で決められている契約解除期限に留意しながら、顧問税理士変更のタイミングを考えましょう。
法人税申告書提出後
企業は事業年度終了後、決算をしてから2か月以内に、法人税の申告書を税務署に提出します。申告書を提出すると税理士の業務は一段落するため、申告書提出後は顧問税理士を変更する良いタイミングです。たとえば、決算月が3月末の企業の場合、5月末が法人税申告書の提出期限なので、6月に顧問税理士の変更を計画するとよいでしょう。
税務調査の完了後
自社に税務調査が入る場合、調査が終わって結果が明らかになってから顧問税理士を変更しましょう。税務調査は、申告書や関連書類を作成した税理士が立ち会うことになります。調査前には社内の経理担当者や経営者と税理士とで打ち合わせを行うほか、調査で誤りが見つかった場合は修正申告を行う必要があります。顧問税理士の変更は、調査が完全に完了してからが安心です。
決算月を避けて変更
1年間の業績や税額を算出する決算は、税理士のサポートのもと行います。決算月に顧問税理士を変更してしまうと、決算書類の作成や税務処理に支障が出る可能性があります。顧問税理士の変更は決算月を避けましょう。さらに、決算には数か月を要するため、少なくとも決算月の2か月前を切ったら、税理士を変更しないほうがよいです。
税理士変更で失敗しないためのポイント
新しく顧問税理士を選ぶ際、気を付けたい3つのポイントを見てみましょう。
経営課題に合った事務所の選定
「事業の拡大にともない、今よりも税理士と密にコミュニケーションを取り、節税対策だけでなく経営的なアドバイスも得たい」など、自社が抱えている経営課題を明確にし、課題解決につながるような税理士事務所を選びましょう。自社に合った税理士事務所を見つけるには、自社の経営状況や今後の目標、経営課題をピックアップして整理しておくことが重要です。
事務所への期待と体制を明確にする
税理士事務所に望むことや、社内の今後の経理体制について方向性を決めておきましょう。クラウド会計の導入や経理のアウトソーシング化など、社内の体制をどうするかによって、新たな顧問税理士に依頼する内容は変わってきます。また、将来的に事業承継を視野に入れている場合、事業承継に関わった実績のある税理士を探す必要があります。
専門の税理士紹介会社への相談
自社に合った税理士・税理士事務所を探すにあたって、経営者のツテだけでは限界があります。税理士と企業をマッチングする紹介会社への相談をおすすめします。税理士紹介会社は、ヒアリングをもとに企業の経営課題や要望に合った税理士事務所を探してくれます。
まとめ
顧問税理士を交代するのか・しないのかは、「経営第一」で判断を。新しい人を頼むときには、自分のニーズに見合ったスキルや人間性を備えた税理士なのかきちんとチェックしたうえで、納得感を持って顧問に就いてもらいましょう。とはいえ、自社に合った顧問税理士を自力で探すのは簡単ではありません。税理士紹介会社を活用することで、企業を成長に導いてくれる顧問税理士に出会える可能性が高まります。
よくある質問
税理士を変更する場合、どのような手続きを踏む必要がありますか?
税理士を変更する場合、まず現在の税理士との契約内容を確認し、契約解除の手続きを行う必要があります。具体的には、契約書に記載された解約手続きを遵守し、解約の意思を文書で伝えます。その後、預けている決算書や仕訳帳などの重要書類を回収し、新しい税理士に引き継ぎます。また、新しい税理士を探してから現在の税理士に解約の意思を伝えることが重要です。変更のタイミングも考慮し、法人税申告書の提出後や税務調査の完了後などが適しています。
税理士の変更によって顧問料が上がることはありますか?
税理士を変更することで顧問料が上がる可能性はあります。新しい税理士が提供するサービスの質や内容によって料金が変動するため、事前に料金体系を確認し、予算に合った税理士を選ぶことが重要です。ただし、顧問料が高くても、質の高いサービスや的確な経営アドバイスが得られる場合、長期的には経営にプラスとなる可能性があります。
税理士を変更するタイミングはいつが良いですか?
税理士を変更するタイミングとして適しているのは、「法人税申告書提出後」や「税務調査の完了後」です。申告書提出後は税理士の業務が一段落し、スムーズに引き継ぎができます。また、税務調査が終わってからの変更は、調査対応が完了しているため安心です。逆に、決算月の変更は避けるべきで、決算の2か月前を過ぎたら変更を控えるのが良いでしょう。
新しい税理士を選ぶ際に注意すべきポイントは何ですか?
新しい税理士を選ぶ際には以下のポイントに注意してください。
1. 経営課題に合った事務所の選定: 自社の経営課題を明確にし、それに対応できる税理士を選びましょう。
2. 事務所への期待と体制を明確にする: クラウド会計の導入や経理のアウトソーシングなど、具体的な期待を事前に決めておきましょう。
3. 専門の税理士紹介会社への相談: 自力で見つけるのが難しい場合は、税理士紹介会社に相談するのも良い方法です。紹介会社は企業のニーズに合った税理士をマッチングしてくれます。
税理士を変更した場合、現在の会計データや書類はどうなりますか?
税理士を変更する際には、現在の税理士からすべての重要書類や会計データを回収する必要があります。これには決算書、仕訳帳、総勘定元帳、請求書や領収書、さらには電子データも含まれます。これらの書類やデータは新しい税理士に引き継ぐため、回収することが重要です。特に電子データは、新しい税理士がスムーズに業務を引き継ぐために必要です。税理士との契約書にデータの納品方法が明記されていることを確認し、適切に回収しましょう。
- この記事の監修者
- 税理士紹介のパイオニア
株式会社ビスカス 代表取締役 八木美代子
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