今年も確定申告の時期を迎えます(原則として2月16日~3月15日)。昨年は、コロナ禍に見舞われただけに、厳しい経済環境に置かれた人が多いはず。それだけに、できるだけ節税したいという思いは例年以上に大きいのではないでしょうか。理解不足で経費の計上を忘れていた…といった事態は避けたいものです。申告の際に間違いやすい点を中心に、個人事業主の節税のポイントを解説します。
目 次
そもそもどうすれば節税できる?
個人事業主が支払う税金は、「所得税」「住民税」「事業税」「消費税」などです。
このうち、消費税は、原則として売上が1,000万円に満たない場合は課税されません。
また事業税は、課税される業種とそれぞれの税率が法律に定められています。
所得税と住民税のベースは、売上ではなく所得で、これを低く抑えることが節税の肝になります。
所得税は、売上(収入)から「必要経費」を引いた額=〈所得金額〉から、さらに「所得控除」を差し引いた〈課税所得〉に、税率を掛けて計算されます。
そのため、個人事業主の節税は「必要経費と所得控除をきちんと計上すること」と言い換えることもできるでしょう。
所得税は、所得が上がるほど税率も高くなるので(累進課税と呼びます)、やり方によっては支払う税額に数十万円単位の差が出ることもあることに注意が必要です。
必要経費の注目ポイント
【ポイント1】「収入を得るために必要な出費」はすべて経費に
必要経費とは、「事業によって収入を得るために必要になったお金」のことです。ただし、「これが経費」と法律に決められているわけではありません。
例えば、“仕事のストレスを紛らわすために猫を飼っています”と税務署に主張しても、その餌代が経費として認められる可能性はありません。一方、猫カフェで飼うのなら、購入費用も餌代も必要経費になるでしょう。「収入を得るために必要」というのは、こういったイメージです。
【ポイント2】生活と重なる出費もきちんと「按分」する
例えば、自宅を事務所として使っている場合には、家賃や水道光熱費のうち、実際に仕事で使用している分を必要経費に計上することができます。これを「家事按分」と言います。
具体的に費用の何割を経費にするのかは、総床面積に占める事務所スペースや、仕事時間などの「合理的な基準」によって決めることとされています。
火災保険料や、仕事にも使う自家用車の購入代金やガソリン代、車検代といったコストも家事按分の対象になりますので、忘れず計上しましょう。
【ポイント3】税金も経費になる
意外に思うかもしれませんが、支払った税金にも経費にできるものがあります。
経費にできる税金
- 個人事業税
- 印紙税
- 固定資産税
- 不動産取得税
- 登録免許税
- 自動車税
- 自動車取得税
- 自動車重量税
- 地価税
- 利子税
など
経費にできない税金
一方、次のような税金は、経費にはできません。
- 所得税
- 相続税
- 都道府県民税
- 市町村民税
- 国税の延滞税・加算税
- 地方税の延滞金・加算金
- 交通違反での罰金
など
【ポイント4】祝儀や香典も計上できる
個人事業主にも、「交際費」が経費として認められています。
取引先など、仕事が関係する相手との飲食代に加え、祝儀や香典といった冠婚葬祭の費用も計上することができます。
所得控除の注目ポイント
【ポイント1】青色申告にする
確定申告には、青色申告と白色申告があります。
青色申告には、複式簿記による帳簿付けなどが必要になりますが、65万円の特別控除を受けることができます(「白色」だと10万円の控除額)。
このほかにも青色申告では、次の「専従者控除」で有利になるほか、赤字が出た場合に次の期以降の黒字と相殺できる「繰越控除」の適用になる、といった多くのメリットがあります。
青色申告を選択するなら税理士への依頼も検討しよう
上記で説明したように、「青色申告」にするためには記帳をしっかりやる必要があり、提出書類も増えます。煩雑な作業をスルーしたい場合には、それらを税理士に依頼する、という選択肢も検討すべきでしょう。
例えば、所得税の税率が20%だったら、65万円の所得控除で減る税額は、65万円×20%=13万円ということになります。記帳から申告までを税理士事務所に丸投げしても、支払う報酬の多くをその分でカバーできますし、他にも節税のアドバイスといったサービスが受けられてお得…という考え方もできます。
【ポイント2】家族に払った給与に気をつける
個人事業主が、配偶者などの同居の親族に仕事を手伝ってもらい、給料を支払った場合には「専従者控除」の対象となり、その給与を経費にすることができます。
ただし、全額を経費にできるのは、青色申告に限られます(この場合も「適正水準」でなくてはなりません)。白色申告には、配偶者は86万円、その他の親族は50万円まで、という上限が設けられています。
【ポイント3】ふるさと納税で節税する
ふるさと納税制度を使って自治体に寄付を行うと、同額が住民税+所得税の形で差し引かれます(年間2,000円の自己負担額があります)。このように、税率を掛けて計算された税額から丸々差し引ける控除を「税額控除」と言います。
通常の国や地方自治体、公益団体などへの寄付は、同額の控除があるだけなので、経済的な“得”はありません。
しかしふるさと納税では、寄付額の3割以内の「返礼品」をもらうことができます。例えば、日用品や米や調味料といった食品をもらえば、その分家計を節約できる=実質的な節税になるのです。
昨年ふるさと納税を行った人は、確定申告の際に、自治体から送られてきた「寄付金受領証明書」を忘れずに提出するようにしましょう。
税理士への依頼を検討中の個人事業主の方へ
個人事業主の節税は、必要経費と控除を漏れなく計上するのがポイントです。不明な点があったり、作業が大変だったりする場合には、税理士のサポートを受けることも検討してみてはいかがでしょうか。