個人事業主は、毎年1月末ごろになると、「そろそろ税務署に提出する確定申告の準備をしなくては」とそわそわすることになります。会社経営者にとっての税務署は、「今年は税務調査があるのだろうか?」と気になる存在かもしれません。
いずれにしても、なんとなく“煙たい”イメージの税務署ですが、内部はどんな組織になっているのでしょうか? あらためてまとめてみました。
目 次
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関連:税務調査では何をチェックする?業種別の税務調査のポイント
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税務署をわかりやすく解説すると
税務署とは、税金に関する業務を担当する行政機関です。日本では、国税庁が税務署を統括しています。税務署の役割は、納税者に対して税金の申告や納付の手続きを案内し、税金の徴収や調査を行うことです。
税務署では、個人や法人などの納税者からの税金の申告書を受け付けています。申告書には、所得税や消費税などの税金の種類や金額を記入します。税務署では、申告書の内容を確認し、税金の計算や請求書の発行を行います。また、税金の納付方法や期限についても案内します。
税務署は、納税者の税金の徴収や調査も行っています。徴収は、納税者が申告した税金を受け取ることです。
調査は、納税者の申告内容や財産状況などを調べ、適正な税金を納めているかどうかを確認することです。税務署は、必要に応じて納税者に対して追加の税金の請求や修正申告を求めることもあります。
税務署は、納税者が正確かつ適切に税金を申告・納付することをサポートするために存在しています。税金に関する手続きや疑問点がある場合は、税務署に相談することができます。
- 記事監修者からのワンポイントアドバイス
- 確定申告時期になると、税務署では確定申告の相談会が無料で行われています。長時間待つこともありますが、税理士に依頼はできないけど、申告書作成について相談したい場合は利用をおすすめします。
- キークレア税理士法人 代表税理士 三嶋 泰代
税務署は国税局とどう違う?
「税務署」は、国民が国に納める税金を管理する公的機関の一つです。
言うまでもなく、国の財政は税金によって成り立っているわけですが、その財政全般を統括する中央官庁が「財務省」です。その外局に、租税制度を専門的に担う「国税庁」があり、その管轄下にあるのが、全国に11ある「国税局」と「沖縄国税事務所」です。
「税務署」は、国税庁と国税局の指導監督を受ける下部組織として、全国に500ヵ所以上設置されているのです。
税金には、大別すると国税(中央税)と地方税がありますが、この【国税庁】-【国税局】-【税務署】のラインが担当するのは国税です。
国税とは、具体的には
- 所得税(1月1日から12月31日までの1年間にあった所得に対して課税される税金)
- 法人税(事業活動によって得られた所得に対して課税される税金)
- 消費税(商品・製品の販売やサービスの提供といった取引に対して課税される税)
- 贈与税(個人から年間110万円を超える財産を貰った場合、貰った個人が負担する税金)
- 相続税(相続や遺言で遺産を受け継ぐ際に、遺産総額金額が大きいと課税される税金)
- 酒税(酒類に課せられる税金)
- 印紙税(契約書や領収書などの文書を作成した場合に、印紙税法に基づきその文書に課税される税金)
といった税金になります。
国税局は税務署のまとめ役…だけでない
国税局から説明しておくと、それは、単に各地の税務署を「束ねる」だけが仕事ではありません。納税額の大きい個人や法人に対して、自らも税務調査などの現場業務を行う行政機関という顔を持ちます。ドラマや映画でおなじみの「マルサ」は、「国税局査察部」の俗称で、犯則事件(※)についての強制調査を行います。
一方、「課税部」というところに「資料調査課」という部署がありますが、こちらでは、個人や中小法人ながら税務署の手に余るような案件についての調査を行っています。俗称「リョウチョウ」が行う税務調査はあくまで任意調査なのですが、マルサに劣らない「迫力」だと言われています。
- 記事監修者からのワンポイントアドバイス
- 任意調査であっても調査官には質問検査権というものがあり、正当な理由なく回答を拒否すると罰則があります。不安な場合は税理士に相談することをお勧めします。
- キークレア税理士法人 代表税理士 三嶋 泰代
税務署には「課税」や「徴税」などの部門がある
説明したように、国税局が一部の大法人、大口の税滞納者などを対象とするのに対して、税務署はその他の法人や個人事業を幅広くカバーしています。確定申告の時期に窓口が込み合うように、納税に関する一人ひとりの相談などにも乗ります。逆の言い方をすると、一般の納税者が税金関係で接点を持つのは、よほどの悪事を働かない限り、地域の税務署ということになるわけです。
税務署は、税務署長をトップに、いくつかの部門を置いています。規模の大きな税務署には、国税庁長官が直接辞令を与える特別国税調査官・徴収官といった肩書の人が配属されることもあります。では、納税者が関係する部局にはどんなものがあるのか、具体的にみていきましょう。
管理運営部門
2009年7月にできた「管理運営部門」から説明します。この部署は、確確定告書や各種申請書の受付、各種申告、申請用紙の交付、納税証明書の発行、国税の領収などの窓口業務を担当します。でしから、税務署を訪れる人の多くが、ここに顔を出すことになるはず。また、国税の債権管理、確定申告書の入力事務をはじめとする内部事務も行っています。
課税部門
「課税部門」は、個人事業者の所得税や消費税に関する相談業務、青色申告普及のための記帳指導などを行う「個人課税部門」、相続税、贈与税などの申告相談、指導を行う「資産課税部門」、法人税や消費税(法人)、印紙税、酒税などを担当する「法人課税部門」に分かれています。
納税者の税金に関する相談に乗ったりするのと同時に、法人の事務所や相続のあった家庭などに出向いて、さまざまな裏付け調査などを行って、申告内容に誤りがないのかを確認する税務調査を行うのも、この部門です。なお、税務署の行う税務調査は、すべて任意調査です。
徴税部門
また、「徴税部門」では、納期限までに納められなかった税金について、納付相談・納付指導を行い、それでも納付されない場合には、財産の差押えや、公売などの「強制換価手続」を行います。「納付指導」というと穏やかに聞こえますが、要するに「督促」です。「徴税の公平性」の観点からも、税務署が「見逃がして」くれる可能性はありませんから、万が一そういう立場になった場合には、誠実に対応する必要があるでしょう。
税金の相談は、専門の税理士にしたほうがいい
説明したように、税務署は税務申告の相談にも乗ってくれます。ただし、注意すべき点もあります。
税務署は「納税者から公平に税を徴収する」ことを目的に対応しますから、必ずしも最良の「節税策」がアドバイスされるとは限らないのです。
税について相談をするのなら、その分野に詳しい(例えば相続なら相続に実績のある)税理士を頼るのがいいでしょう。税務署の任意調査は、税務調査に強い税理士に対応してもらえば、安心です。
- 記事監修者からのワンポイントアドバイス
- 税務署はあくまで申告書の記載方法や税法に関する質問へ回答してくれるのみです。節税対策を相談したい場合は税理士にしましょう。
- キークレア税理士法人 代表税理士 三嶋 泰代
税務調査で税理士をお探しの方へ
税務署には、「課税」だけでなく、「調査」、「徴収」などの業務があります。申告の相談にも乗ってくれますが、ベストの節税を考えるのなら、税理士のサポートを受けることをお勧めします。
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記事監修者 三嶋税理士からのワンポイントアドバイス
意外と知る機会のない税務署という組織について解説しましたが、ほとんどの事業者が心配しているのは税務調査だと思います。
税務調査は正しい反論をしないと、思いもよらぬ課税を受けてしまいます。
税務調査は深い税務知識だけでなく、交渉するテクニックなど、様々なスキルが求められます。税務調査は数年に一度(10年来ない場合もありますが)来ますので、税務調査に強い税理士に税務顧問を依頼することをおすすめします。