税理士と社会保険労務士(社労士)、業務内容の違いはある?頼めることを確認してみよう!

税理士と社会保険労務士(社労士)、業務内容の違いはある?頼めることを確認してみよう!
最終更新日:
2024/10/01
この記事の監修者
テントゥーワン税理士法人
代表社員 前田直樹(税理士・中小企業診断士)
 
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税理士と社会保険労務士(社労士)は、会社経営にとって欠くことのできない専門家と言っていいでしょう。ただ、その業務の違いを、どれだけ正確に認識していらっしゃるでしょうか? それぞれには、他の士業が行ってはいけない「独占業務」もあります。 今回は、税理士と社労士の「異なる仕事」「頼めること」について解説します。

税理士は「税金のプロ」

税理士の「独占業務」として、税理士法には次の3つが定められています。

税理士の独占業務①【税務代理】

税務官公署への申告、届け出など

税理士の独占業務②【税務書類の作成】

確定申告書、相続税申告書などの作成代行

税理士の独占業務③【税務相談】

税額計算、節税対策など税務全般の相談に応じること

さらに、これらに付随する会計業務(会社の財務書類の作成、会計帳簿の記帳代行など)や財務分析などを手掛けています。

長い目で見て、適切な節税によって会社にどれだけお金を残せるのかが経営に大きく影響するのは、言うまでもないでしょう。

記事監修者からのワンポイントアドバイス
一方で、税務調査の結果、万が一想定していなかった追徴課税を課せられたりすれば、事業に打撃を与えかねません。信頼できる「税のプロ」は、経営者にとってなくてはならない存在です。
テントゥーワン税理士法人 代表社員 前田直樹
※1税務調査:国税局や税務署が、納税者の税務申告が正しいかどうかをチェックするために行う調査。任意調査と、国税局査察部が行う強制調査がある。
※2追徴課税:申告漏れや脱税の目的で、本来支払うべき税金よりも納税した金額が少なかった場合に、追加で税金を支払うこと。過少申告加算税などの「加算税」、「延滞税」がある。

 

社労士は「人事・労務管理の専門家」

社労士も社会保険労務士法で、次のような「独占業務」が認められています。

社労士の独占業務【労働社会保険諸法令に基づく申請書類作成、手続代行】

  • 労働保険(労災保険、雇用保険)の申告
  • 社会保険(健康保険、厚生年金、介護保険)の算定基礎届、月額変更届
  • 助成金などの申請

社労士の独占業務【労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類の作成】

  • 労働者名簿の作成
  • 賃金台帳の作成
  • 就業規則の作成、変更

その他

  • 紛争解決手続代理業務(厚生労働大臣が定める研修を修了し、同業務試験に合格した「特定社会保険労務士」のみ)など

このほか、雇用や人材育成、人事、賃金、労働時間など人事・労務管理に関するコンサルタント業務など、社労士の独占業務ではない業務(3号業務)にも人事・労務管理のプロとして携わっています。
最近では、雇用調整助成金をはじめとする新型コロナウイルス感染症に関連する各種助成金の申請業務に、重要な役割を担っていました。

給与計算代行を依頼するならどちらの専門家?

さて、この税理士と社労士の業務が重なり合うのが、給与計算です。
給与計算には、源泉所得税(※3)をはじめとする税金と、社会保険の計算が混在しているからにほかなりません。会社とすれば、できればどちらかに「一気通貫」で依頼したいところですが、現実には中々そうはいきません。

給与計算関連の業務を整理してみよう

実際に給与計算に関わる両者の業務を整理してみると、次のようになります。

  • 毎月の給与計算の代行
  •  →税理士、社労士の両方ができます。
  • 算定基礎届の提出、労働保険の申告、月額変更届の提出
  •  →社労士の「独占業務」にあたります。
  • 年末調整
  •  →税理士の「独占業務」にあたります。

年末調整に必要な給与額や社会保険料の算定は、社労士でもOK

実は、年末調整については、どちらの業務なのかをめぐって争いがあり、かつては社労士も携わっていた時期がありました。

記事監修者からのワンポイントアドバイス
2016年にそれぞれの全国組織である日本税理士会連合会と全国社会保険労務士会連合会の間で、「年末調整に関する事務は、税理士法第2条第1項に規定する業務に該当し、社会保険労務士が当該業務を行うことは税理士法第52条(税理士業務の制限)に違反する」という合意が図られました。
テントゥーワン税理士法人 代表社員 前田直樹

 

現在は、年末調整に必要な「源泉徴収票」などの作成は税理士の業務となっており、社労士が行うことはできません。ただし、年末調整に必要な給与額や社会保険料の算定などに関しては、社労士に頼んでも問題なし、ということになっています。

※3源泉所得税:企業が従業員や報酬を受け取る人から源泉徴収し、本人に代わって納める所得税。
給与計算代行を依頼するなら、ワンストップ対応の事務所に依頼しよう!
税理士事務所と社労士事務所が提携していたり、グループを作っていたりすることもあります。また、税理士と社労士のダブルライセンスを持つ先生もいます。よりワンストップに近いサービスを期待する場合には、そうした事務所を選ぶのも、1つの方法でしょう。

まとめ

説明してきたように、同じ“士業”でも、税理士と社労士の業務には、はっきりした区分があります。法律違反などのトラブルを防止し、それぞれの専門性をいかんなく発揮して経営に貢献してもらうためにも、両者の違いをきちんと理解したうえで仕事を依頼することが大切になります。

よくある質問

税理士と社労士の違いは何ですか?

税理士は税務に関する専門家で、税務代理、税務書類の作成、税務相談が独占業務です。社労士は人事・労務管理の専門家で、労働社会保険諸法令に基づく申請書類の作成や手続代行が独占業務です。

税理士に頼める具体的な業務は何ですか?

税理士は、確定申告書や相続税申告書の作成、税務相談、税務署への申告などが行えます。また、会計帳簿の記帳代行や財務書類の作成も手掛けています。

記事監修者からのワンポイントアドバイス
税務調査の立会のほか、税理士によっては、事業計画の立案など税務や財務を軸とした経営コンサル、事業承継やM&Aの支援なども依頼することができます。
テントゥーワン税理士法人 代表社員 前田直樹

社労士に頼める具体的な業務は何ですか?

社労士は、労働保険や社会保険の申告、助成金申請、労働者名簿や賃金台帳の作成、就業規則の作成・変更などが行えます。

給与計算を依頼する場合、どちらの専門家に頼むべきですか?

給与計算には税金と社会保険の計算が含まれるため、税理士と社労士のどちらも対応可能ですが、年末調整は税理士の独占業務です。ワンストップ対応の事務所を選ぶと便利です。

税理士と社労士の業務が重なる部分はありますか?

給与計算業務は両者の業務が重なりますが、年末調整の税務書類作成は税理士の独占業務です。給与額や社会保険料の算定は社労士でも対応可能です。

記事監修者 前田税理士からのワンポイントアドバイス

同じ“士業”でも、税理士と社労士の業務には、明確な区分があります。専門家に重要な業務を依頼する以上、意図しない法律違反は避けたいところです。
ここでいう法律違反は、法律が専門性を認めていない方に対して、専門性が欠かせない重要な業務を依頼してしまっている状態ともいえます。
各専門家に、その専門性をいかんなく発揮してもらうためにも、あるべき専門家に業務を依頼することが大切ではないでしょうか。とはいえ、専門性を担保する独占業務の線引きを考えることや、税理士にも社労士にも同じことを伝えるような二度手間が煩わしい、とお感じであれば、税理士も社労士も在籍するワンストップ対応の専門家に依頼することも一手です。

この記事の監修者
テントゥーワン税理士法人
代表社員 前田直樹(税理士・中小企業診断士)
税理士や公認会計士だけではなく、中小企業診断士、社会保険労務士、司法書士、行政書士、不動産鑑定士、そしてシステムエンジニアなど、多彩な専門家が在籍。グループの共通理念や価値観のもと、ひとりひとりが専門性の深化を第一義とした「最良の一手」を追究、多角的にクライアントをサポートする。

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この記事の執筆者
税理士紹介センタービスカス編集部
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