海外に住む人が頼む「納税管理人」を税理士に依頼するメリットは?
- 最終更新日:
- 2024/08/27
- この記事の監修者
- ACCESS税理士・不動産鑑定士事務所
代表 植崎紳矢(公認会計士・税理士・不動産鑑定士)
納税管理人とは?どのような場合に依頼できる?
例えば日本の会社に勤めているサラリーマンが、1年以上の予定で海外支店などに転勤する場合、一般的には所得税法上の「非居住者」の扱いになります。原則として、赴任先で得た所得については、その国で課税されるため、日本国籍を持ったままであっても、日本で課税されること(二重課税)はありません。ただし、非居住者であっても、日本国内で発生した一定の所得については、引き続き日本で課税され、確定申告が必要になることに注意する必要があります。
確定申告の対象になるケースは?
確定申告の対象になるのは、例えば次のような場合です。
- 海外に居住することになる年の1月1日から出発日までの間に、日本国内で給与以外の一定の所得を得ていた(保険金なども含む。所得が給与のみの場合には勤務先で年末調整が行われるため、確定申告は不要)
- 海外に居住後、国内にある不動産を貸し付けて所得を得たり、日本国内に持つ資産を譲渡して所得を得たりした
- 国内上場企業の株式を保有し、日本国内でそれを売却した
- 記事監修者からのワンポイントアドバイス
- 海外に住んでいても、例えば日本国内に不動産を持っていて、毎年一定の賃料などの所得がある場合、毎年日本国内で確定申告が必要になる場合があります。
- ACCESS税理士・不動産鑑定士事務所
代表 植崎紳矢
所得税関係以外でも、日本国内での申告・納税が必要なケース
- 相続が発生し、相続税の納税義務が生じた
- 贈与税の納税義務が生じた
- 1月1日時点で日本に不動産を所有していたために、固定資産税の納税義務が生じた
- 1月1日時点で日本に居住していたために、住民税の納税義務が生じた
厄介な手続きを代行してくれるのが「納税管理人」
このような場合、その都度帰国して、申告や納税の手続きを行うことはもちろん可能です。ただ、現実問題としては難しい方も多いはず。そこで、そうした手続きを代行してくれる納税管理人の選任が認められているのです。
納税管理人がいる場合といない場合の違いとは?
あらためてまとめると、海外に住む納税者に代わって、税務申告書類の提出、各種税務関係書類の受領、国税の納付または還付金の受領を行うのが、納税管理人の仕事です。選定に際しては、非居住者となる人の納税地を所轄する税務署長に、納税者と納税管理人それぞれの氏名、住所などを記した「納税管理人届出書」を提出する必要があります。この「届出書」は、日本を出国する前に提出するのが基本。その提出自体も、納税管理人に頼むことができます。
実は、この届出書を出すか否かで、確定申告のやり方が変わります。
納税管理人がいる・いないは、確定申告の手続きに影響する
納税管理人を選んだ場合には、「その年の1月1日から出国までに得た全所得」と、「出国の翌日から12月31日までに得た国内源泉所得(家賃収入など、日本国内で確定申告が必要になる所得)」の合計額を、翌年の確定申告時期(原則として2月16日~3月15日)に、納税管理人を通じて申告します。
しかし、納税管理人がいない場合には、1月1日から出国までの給与以外の所得については、出国前に確定申告を済ませる必要があります。なおかつ、それをした場合にも、「その年の1月1日から出国までに得た全所得」と、「出国の翌日から12月31日までに得た国内源泉所得」について、翌年の確定申告時期に申告しなくてはなりません。つまり、2度手間になる、ということです。
- 記事監修者からのワンポイントアドバイス
- 「急遽海外に行くことになった」「バタバタしていて、出国までの確定申告ができなかった」という方もいらっしゃいます。早めに税理士等に納税管理人を依頼し、出国までに必要な確定申告から依頼することで精神的な負担を減らすこともできます。
- ACCESS税理士・不動産鑑定士事務所
代表 植崎紳矢
納税管理人がいない場合の確定申告手続きの手順
非居住者の方が日本国内で一定要件に該当する所得がある場合には、納税管理人を代理人として確定申告をしなければなりません。本来、非居住者の方が国外に出国する際には、出国前に納税管理人を選任し税務署に届出を行う義務があります。(選任しなかった場合、国税の罰則規定はありませんが、地方税では一定の過料が課されますので注意してください)
仮に納税管理人を選任しなかった場合の確定申告書の手順は、以下の通りとなります。
- 所得金額を計算するために必要な書類の取得
- 各種控除証明書の取得
- 確定申告書の作成
- 確定申告の提出
- 所得税の納税
これら一連の作業を、国外に居ながら確定申告の法的期限内に行わなければなりません。各種書類の取得や確定申告書の提出は、書類のやり取りをするだけでも時間と手間がかかります。また、確定申告書の作成には会計や税法の知識が必要になるケースもあります。納税管理人に税理士を選任しておけば、書類の受け渡しから確定申告書の作成提出、所得税の納税までを全て税理士が代行してくれます。確定申告の専門家に依頼すれば、計算間違いや作成ミスもなくなりますので、納税管理人には税理士を選任することをお勧めします。
納税管理人は誰に依頼したらいい?
では、この納税管理人は、誰に頼んだらいいのでしょうか?管理人という仰々しい名前が付いていますが、特に資格などは必要なく、「居住地が日本」であれば誰がやっても問題ありません。個人でも法人でもOKです。
確定申告書の作成等も依頼したい場合は、税理士を納税管理人にしよう
ただし、単なる書類の受け取りなどにとどまらず、確定申告書の作成や、節税などの税務相談を頼む場合には、税理士資格を持った人を選ぶ必要があります。それらは、税理士のみに認められている「独占業務」だからです。「税のプロ」である税理士に納税管理人を頼んでおけば、間違いが起こらず安心できる、というのも大きなメリットです。海外という離れた場所から仕事を依頼するわけですから、余計な「心配事」は極力減らしたいもの。日本国内で、ある程度の納税機会がある(予想される)場合には、税理士を納税管理人に選んでおくことをお勧めします。
納税管理人を解任する場合は?
なお、納税管理人を解任する場合にも、税務署への「解任届」の提出が必要です。税務を代理・代行するという重要な権限を付与しているわけですから、その必要がなくなったときには、確実に解任の手続きを取るようにしましょう。
よくある質問
納税管理人とは何ですか?
納税管理人は、海外に住む日本人に代わって、日本国内での税務手続きを行う人です。納税管理人は、税務申告書の提出や税務署からの書類の受領、税金の納付や還付金の受領を代行します。
誰が納税管理人になれますか?
納税管理人は、日本国内に居住する個人または法人であれば誰でもなれます。特別な資格は必要ありませんが、税務に詳しい税理士に依頼することをお勧めします。
- 記事監修者からのワンポイントアドバイス
- 納税管理人は、親族や知り合いに依頼することもできます。万が一、納税者が滞納をしても、納税管理人が責任を問われることはありません。
- ACCESS税理士・不動産鑑定士事務所
代表 植崎紳矢
税理士に納税管理人を依頼するメリットは何ですか?
税理士に納税管理人を依頼することで、確定申告書の作成や節税対策などの専門的なアドバイスを受けることができます。税務のプロフェッショナルである税理士に依頼することで、安心して手続きを任せられます。
納税管理人を依頼するための手続きはどうすれば良いですか?
納税管理人を依頼するためには、非居住者となる人の納税地を管轄する税務署に「納税管理人届出書」を提出する必要があります。この届出書には、納税者と納税管理人の氏名や住所を記載します。提出は日本を出国する前に行うのが基本です。
納税管理人を解任する場合の手続きは?
納税管理人を解任する場合には、税務署への「解任届」の提出が必要です。解任手続きは、納税管理人としての権限がなくなったことを正式に通知するために重要です。
記事監修者 植崎税理士からのワンポイントアドバイス
海外に移住したり、赴任したりして非居住者になっても、日本で確定申告などが必要になることがあります。そんなときには、自分に代わってそれらの手続きを行ってくれる納税管理人を選ぶことができます。「安全・確実」を重視するならば、専門家である税理士に依頼してみてはいかがでしょうか。
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