建設業の一人親方にかかる税金は?税金の種類と節税ポイントについて徹底解説
- 最終更新日:
- 2024/06/24
一人親方が納める税金は4種類
そもそも、一人親方が納める税金には、どういうものがあるのでしょうか?
具体的にみていきましょう。
〈1〉所得税
法人に対する法人税が事業年度(例えば4月1日~翌年3月31日)を課税期間としているのに対し、個人事業主の場合は必ず毎年1月1日~12月31日の間に稼いだお金に対して課税されます(以下〈2〉~〈4〉も同様)。
所得には10種類あるのですが、一人親方が納めるのは「事業所得」です。サラリーマンと違い、原則として翌年3月31日までに、自分で税務署に確定申告(※)を行い、併せて納税する必要があります。
この所得税は累進課税といって、所得が増えるほど税率自体も高くなっていきます。それだけに、所得を低く抑えること=“節税”が重要な意味を持つのです。
〈2〉住民税
所得税が国に納める「国税」なのに対して、住民税は都道府県・市区町村に収める「地方税」です。所得税の確定申告を行うと、その内容に基づいて税額を計算した市区町村から納付書が送られてきます。
〈3〉事業税
事業税は“290万円以上の事業所得にかかる税金”です。言い方を変えると、所得が290万円に満たなければ課税はされません。
税率は業種ごとに決まっていて、建設業は5%です。したがって、事業税の額は、
ということになります。
なお、この事業税は、マンション経営などによる「不動産所得」にも課税されます。
〈4〉消費税
消費税の税金は、全員に納付義務があるわけではありません。
まず、開業後2年間は全額免除対象なので、支払わなくて済みます。その後についても、課税対象になる場合とならない場合があります。
課税対象になるのは「前々年の売上高が1,000万円以上、または前年1月から6月までの売上高か給与支払額が1,000万円以上ある事業主」です。「年間売上高1,000万円」を超えるかどうかというのが1つのラインになるのです。
課税対象になった場合の消費税(税率10%)の額は、
で計算されます。
「課税仕入れ等の10%」とは、仕入金額などに上乗せして取引先に支払った消費税の金額です。納付の際には、忘れずにこの分を差し引く必要があります。
そもそも「所得」とは何か?節税するためには?
〈1〉~〈3〉の納税額は、所得によって変わります。そのため、節税のためには「できるだけ所得を抑えること」がポイントになります。
ここで押さえておきたいのが、「収入と所得は違う」ということです。収入は売上高のこと。しかし、それが丸々手元に残るわけではありません。例えば、売上を上げるためには、事務所を構えたり、車が必要だったりします。そうしたことに支出した「経費」などを差し引いたものが、税金の計算のベースになる所得なのです。
さらに、この所得から差し引けるものに「控除」があります。ざっくり言えば、所得税は、総収入から経費と控除を除いた金額に、所定の税率を掛けて算出されるのです。
つまり、節税のためには、「経費をできるだけ多く計上し、間違いなく控除を受けること」が重要になるわけです。
節税の肝は経費にあり!一人親方が計上できる経費とは?
では、経費からみていきましょう。
収入から差し引けるものを、正確には「必要経費」と言います。一人親方が計上できる経費には、次のようなものが考えられます。
地代家賃
事務所を借りたら、家賃の全額が経費計上できます。
自宅を事務所にする場合には、仕事に使っている面積や時間などを考慮して、家賃の一定割合を経費にします(「家事按分」と言います)。
水道光熱費・通信費
水道や電気、ガス料金、携帯やインターネットの料金も、「仕事用」ならば経費です。
自宅兼事務所の場合には、これらにも「家事按分」の考え方が適用されます。
車両費
仕事で使う自動車のガソリン代、車検費用、修理代などは経費になります。
接待交際費
仕事の打ち合わせを兼ねた食事代や喫茶店での支払いは、立派な経費です。
「接待ゴルフ」のゴルフ場利用料、中元や歳暮の費用など、仕事上の取引を円滑にするための費用も、経費で落とせるのです。
雑費
作業着や靴などの費用、クリーニング代、さらには銀行振込手数料やごみ処理費用、休憩や仕事場として使った喫茶店の代金なども雑費として認められます。
専従者給与
個人事業主は、同居している配偶者などを「専従者」にすることができます。事務仕事などを手伝ってもらい、給料(専従者給与)を支払えば、その金額が丸々経費として認められるのです。
仮に月に10万円支払えば、120万円経費計上できますから、節税効果は抜群と言えます。
経費にするには、領収書をきちんと保管しよう
上記のように、基本的に「仕事のために使った」ものは、幅広く経費になると考えて大丈夫です。
ただし、認めてもらうには、これらの証明(領収書など)が必要です。関連する領収書などは紛失しないよう、しっかり保管しておきましょう。
控除とは?確定申告で忘れずに計上しよう
控除は、「一定金額を所得から差し引くことができる公的な仕組み」と考えればいいでしょう。該当する場合には、確定申告で忘れずに計上するようにします。
基礎控除38万円
これは、無条件にすべての人が受けられます。
青色申告特別控除65万円(電子申告の場合)
確定申告のやり方には、「白色申告」と「青色申告」があります。控除額は、白色申告だと10万円・青色申告だと65万円(電子申告でなければ55万円)になります。
ただし、青色申告にするためには事前に税務署に届を出したうえで、原則として複式簿記という方法で帳簿付け(記帳)を行うことが求められます。
売上が上がって取引先が増えたりすると大変な作業になりますので、その際には、記帳業務や確定申告を税理士に頼むことをおすすめします。
実は、さきほど節税効果が高いと説明した専従者給与の金額を自由に決められるのは、青色申告をした場合に限られます。白色の場合は、配偶者86万円・その他の親族には50万円までと決められているのです。
税理士に依頼すれば当然費用が発生しますが、そうしたメリットも考え合わせたうえで判断すればいいのではないでしょうか。
配偶者控除38万円
所得が一定限度内の配偶者がいる場合に、使うことができます。ただし、今の専従者給与を支払う場合には、適用されません。
扶養控除38万円
配偶者以外の子どもなどの親族1人当たりの控除額です。
生命保険料控除最大12万円
生命保険に加入している場合の控除です。
医療費控除
1月1日~12月31日の間に支払った医療費が一定額を超える場合には、控除が受けられます。
建設業に詳しい税理士をお探しの方へ
一人親方の節税には、「経費にできるものは経費で落とす」「忘れずに控除を利用する」ことがポイントです。
わからないことがあったら、税金の専門家である税理士に相談してみましょう。
よくある質問
一人親方が納める必要のある税金にはどのようなものがありますか?
一人親方が納める税金には、所得税、住民税、事業税、消費税の4種類があります。それぞれの税金には納付のタイミングや計算方法が異なるので、正確に理解しておくことが大切です。
経費として計上できる項目にはどのようなものがありますか?
一人親方が計上できる経費には、地代家賃、水道光熱費、車両費、接待交際費、雑費、専従者給与などがあります。正確に経費計上を行うためには、領収書などの証明書類をしっかりと保管しておく必要があります。
控除とは何ですか?
控除とは、所得から一定金額を差し引くことができる仕組みです。主な控除には、基礎控除、青色申告特別控除、配偶者控除、扶養控除、生命保険料控除、医療費控除などがあります。これらを活用することで、納税額を減らすことができます。
青色申告と白色申告の違いは何ですか?
青色申告は、一定の要件を満たすことで、65万円(電子申告の場合)の特別控除を受けられるなどのメリットがあります。白色申告に比べて複式簿記による記帳が必要ですが、節税効果が高いです。白色申告は手続きが簡便である一方、控除額が少なくなります。
消費税の課税対象になる条件は何ですか?
消費税の課税対象になるのは、前々年の売上高が1,000万円以上、または前年1月から6月までの売上高または給与支払額が1,000万円以上の場合です。開業後2年間は全額免除の対象となります。
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