1人で2つの資格を持つことを“ダブルライセンス”といい、税理士でもそういう立場の人が結構います。わざわざ複数の資格を取るのは、それだけ業務の幅が広がるからにほかなりません。とはいえ、取得には時間もエネルギーも必要ですから、チャレンジするなら「仕事の役に立ち、自分に合ったライセンス」を狙うべきでしょう。今回は税理士業務と親和性の高い資格をいくつか紹介します。
目 次
ダブルライセンスは「需要があるか」をベースに考えてみる
便利な会計ソフトの登場や電子納税の普及などにより、税理士が淡々と税務申告をこなしていれば食べられた時代ではなくなりました。同業との差別化を図って自分の価値を高めるという点で、別の資格を持つことには大きな意味があります。
では、税理士が新たに取得するとしたら、どんな資格がいいのでしょうか?それを考えるうえでのポイントは2つあります。
資格取得ポイント1:税理士業務との相性・親和性
1つは、税理士業務との相性・親和性です。
例えば、難関の弁護士資格を目指しても、税理士としての仕事にプラスαになるかは疑問です。あくまでも、今の資格・仕事と「相乗効果」を生むものを選択肢として考えるべきでしょう。
資格取得ポイント2:顧客のニーズ
もう1つ重要な視点は、顧客のニーズです。
税理士の仕事の幅が広がるということは、顧客からすると「いろいろ頼めて使い勝手がいい」ことにつながります。資格取得により、自分に「普通の税理士にはない経営上のアドバイスがもらえる」といった付加価値を付けることができれば、大きな武器になるでしょう。求められるニーズは、例えば法人か個人か、といったことで違ってきます。
税理士のダブルライセンスにおすすめの資格5つ
では、具体的にどんな資格を目指すべきなのか、みていきましょう。
社会保険労務士(社労士)
社労士は税理士と同じく国家資格で、社会保険・労働保険の加入手続きや就業規則の作成など、社労士でなければできない法的な「独占業務」があります。企業を“人材”の面からフォローするスペシャリストと言っていいでしょう。
顧問税理士として会社に関わると、社会保険や人事・労務管理をはじめ、経営的な課題に直面します。この資格を持てば、そうした部分のサポートも可能になるのです。
給与計算においては、算定基礎届の提出などが社労士の独占業務になっている一方、年末調整は税理士の独占業務で、顧客が使い分けなくてはなりません。両者のダブルライセンスを持っていれば、会社は一気通貫で頼めますから、ありがたい存在です。法人メインで仕事をする場合には、とても相乗効果の高い資格だと言えるでしょう。
中小企業診断士
中小企業診断士は、経済産業大臣が登録する「中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を行う専門家」で、ひとことで言えば、経営コンサルタントを認定する唯一の国家資格です。企業の成長戦略の策定や、その実行に当たっての経営計画の立案などのほか、企業と行政、金融機関などとのパイプ役を果たしたり、国や自治体の中小企業施策の適切な活用支援を行ったりと、できることはたくさんあります。
企業の税務に携わっていると、こうした経営上の問題についてアドバイスを求められることが多くあるはずです。経営コンサルは、独占業務には当たらないため誰でも行えるのですが、専門知識に裏打ちされた資格があるのとないのとでは、大きな違いになります。もともと税務=数字に強い税理士がこの資格を持てば、一般の経営コンサルとの差別化も図れるはずです。
ファイナンシャルプランナー(FP)
ファイナンシャルプランナー(FP)は、「ファイナンシャル・プランニング技能検定」(「1級FP技能士」「2級FP技能士」「3級FP技能士」)に合格すると得られる国家資格です。また、日本FP協会が認定する「AFP資格」「CFP資格(上級資格)」という民間資格もあります。
FPは、「個人のお金」をサポートするのが主な仕事になります。税理士にとっては、個人事業主や中小企業の経営者などが対象になるでしょう。経営者も人生の中で、資産運用、保険への加入、不動産の購入、事業承継、相続といった個人的な課題に数多く直面します。税金だけでなく、そうしたマネーの問題にも深いアドバイスが行えるようになれば、仕事の幅は確実に広がるでしょう。
行政書士
行政書士は、書類作成の専門家と言ってよいでしょう。その仕事は、「官公署に提出する書類の作成」「権利義務又は事実証明に関する書類の作成」です。
例えば、役所に提出する許認可の届け出は、この資格がないと代行できません。また、行政書士は、各種の契約書、法人設立の必要書類、各種証明書(会社業歴書、自動車登録事項証明書など)、会計書類などを作成することができます。
会社経営には、節目でこうした書類の作成が必要になりますから、税務も含めて任せられるのは、やはり顧客にとって大きなメリットになります。なお、税理士資格を持っていれば、行政書士の試験は免除され、審査をクリアすれば登録することができます。
宅地建物取引士(宅建士)
宅地建物取引士(宅建士)は、その名の通り、不動産取引の専門家です。資産に不動産を多く持っている個人や企業のサポートに役立ちますまた、相続では、節税や分割方法をめぐって、被相続人(遺産を譲る人)の持つ不動産が問題になります。この分野を伸ばしたいと考える場合には、非常に有意義な資格と言えるでしょう。
まとめ
顧客から見て、ダブルライセンスを持つ税理士は、とても頼もしい存在です。記事を参考に、「これからの自分に必要なもの」にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。