株取引にかかる税金はどのくらい?確定申告は必要?
- 最終更新日:
- 2024/07/02
株にかかる税金とは?
株への投資で狙う利益には、値上がりした株を売って得る「売却益」と、企業業績などに応じて毎年株主に還元される「配当」の2つがあり、原則としてそれぞれに課税されます。
株の売却「譲渡所得」にあたる
売却益からみていきましょう。
個人の所得は、税法上、「給与所得」「事業所得」「不動産所得」など10種類に分類されています。株の売却益は、このうち「譲渡所得」という所得に該当します。譲渡所得には、他に土地、建物の売却益などがあります。
ちなみに、所得=収入ではありません。例えば、売却した株式には、購入時に費用が発生しているはずです。譲渡所得の金額は、譲渡価額(売却額)から、取得費、譲渡費用、借入金利子などの「必要経費」を差し引いたものになります。
譲渡所得は「分離課税」制度になっている
給与所得や事業所得、不動産所得などに関しては、同時に発生した場合には、それらを合算した総所得金額に課税されます。これを「総合課税」といいます。これに対して、株取引などの譲渡所得は、他の所得金額と合算せず、単独で税額を計算する「分離課税」になっています。他には、「山林所得(木の売却など)」、「退職所得」などが、この分離課税です。
所得税の総合課税は、所得金額が大きくなるほど税率も高まる「累進課税制」になっています。所得の多い人により多くの税を負担してもらい、社会の基盤づくりに回そう、という考え方に則った制度です。
とはいえ、一時的に高額の所得が発生する譲渡所得などをこれに含めると、総所得額が一気にかさ上げされ、納税額が過大になってしまう可能性があります。それを避けるために設けられているのが分離課税の仕組みで、そのため「株で儲けた結果、想定外の税金を取られた」ということは、起こらないのです。
税率は住民税含めておよそ20%
では、具体的な税額の計算はどうなるのかというと、売却益の金額にかかわらず20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)です。これをさきほどの譲渡所得の金額に掛けたものが、納める税額になります。ただし、売却額が取得費を下回ったりして利益が出なかった場合には、税金はかかりません。
株の配当は「配当所得」にあたる
一方、株の配当は「配当所得」です。こちらは、今の分離課税(税率は同じく20.315%)のほか、総合課税を選択し「配当控除」を受けるなどの方法も選択できます。詳しくは後述します。
非課税の株取引もある
NISAとは?
実は、株などの投資で利益が出ても税金を支払わなくていい「NISA(少額投資非課税制度)」という国の作った制度があります。ひとことで言えば、「毎年120万円を上限とする新規購入分の株式や投資信託を対象に、その配当や譲渡益を最長5年間、非課税とする」仕組みで、国民の将来の備えとなる資産づくりを促進することなどを目的としたものです。ただし、上限額が設定されているほか、1人1口座しか開設できない、債権やFX(外国為替証拠金取引)などは対象外、といった制限があります。
また、これとは別に「20年間、毎年最大40万円まで非課税枠が設定されている「つみたてNISA」もあります。
NISAについて、詳しくは「NISAとは? : 金融庁 (fsa.go.jp)」をご参照ください。
NISAとiDeCoの違いは?
NISA同様、国がバックアップする「iDeCo(個人型確定拠出年金)」という制度があります。こちらは、毎月積み立てを行い、金融商品で資産を運用していきます。やはり運用益は非課税で、掛金は全額が所得控除、給付金の受け取り時には退職所得控除、公的年金控除の対象となります。
iDeCoについて、詳しくは「iDeCoの概要 |厚生労働省 (mhlw.go.jp) 」をご参照ください。
両者の主な違いは、次の通りです。
NISA(少額投資非課税制) | iDeCo(個人型確定拠出年金) | |
---|---|---|
運用商品 | 株式、投資信託、ETFなど | 投資信託、定期預金、保険商品 |
運用後の引出し | いつでも可能 | 60歳まで原則不可 |
運用可能期間 | 最大5年 | 加入時~75歳まで |
最低運用金額 | なし | 毎月5,000円 |
年間運用金額の上限 | 120万円 | 14万4,000円~81万6,000円 |
累計運用金額の上限 | 600万円 | 上限なし |
NISAの年間運用額の上限は120万円、保有期間は最長5年ですので、最大で600万円まで非課税で運用することが可能です。一方、iDeCoの年間掛金は職業などにより決まっていて、変更することもできます。
確定申告は必要なのか?
申告の必要性はケースバイケース
株で売却益を得た場合や配当があった場合、自分で確定申告を行う必要はあるのでしょうか?
答えとしては、「必要な場合」「不要な場合」「不要だがした方がいい場合」と、ケースにより異なります。順を追ってみていきましょう。
NISAとiDeCoの運用益は申告不要
これらは、説明したように「非課税」ですので、確定申告も必要ありません。ただし、iDeCoの掛金に関しては、それを年末調整されていない(給与所得者ではない)人が所得控除を受けるためには、確定申告が必要になります。
株の売却益(譲渡所得)は証券会社に開設する口座の種類(次の3種類)による
(1)「特定口座(源泉徴収あり)」の場合:申告不要
売却益・税金の計算は証券会社がしてくれます。サラリーマンの給与のように、税金が天引きされて支払われるため、確定申告は必要ありません。
(2)「特定口座(源泉徴収なし)」の場合:申告が必要
売却益・税金の計算は証券会社がしてくれますが、利益が出た場合には、証券会社の発行する取引報告書を基に、投資家自らが確定申告を行います。
(3)「一般口座」の場合:申告が必要
売却益・税金の計算は自分で行わなければなりません。こちらも、利益が出たら、確定申告が必要です。
給与以外の所得が20万円以下の人:申告不要
また、(2)や(3)の場合でも、サラリーマンで、給与所得以外の所得(株の売却益や、他の副業などの所得合計額)が20万円以下ならば、所得税申告の必要はありません(納税も免除されます)。
ただし、このケースで申告が不要になるのは所得税(国税)であり、住民税(地方税)については申告・納税が必要ですから、間違えないようにしましょう。
さきほども述べたように、取引で損失が出た(利益がなかった)場合にも、納税額はゼロですから、申告の義務はありません。
確定申告した方がよいケースとは?
しかし、あえて確定申告した方が節税になることもあります。注意すべきは、株取引で損失が出た場合です。
損益通算
ある口座内の取引で損失が出た場合、別の口座や投資信託の売買などで利益が出ていたら、その利益や配当金から損失分を差し引くことが認められています。所得を減らし、納税額を抑えることができます。
繰越控除
すべての口座で損益通算をしても、依然として損失が残る場合には、その金額を翌年以降3年間にわたって、株取引の利益などと損益通算することができます。
節税という形である程度損を取り戻せる仕組みですが、これらの適用を受けるためには確定申告が必要になるのです。手間やコスト(税理士に依頼する場合)をかけた場合との比較検討ということになりますが、節税を重視するのならば、確定申告を検討すべきでしょう。
配当の課税方法は3つ
株の配当は、所得税、住民税が源泉徴収されます。そのため、基本的に申告不要なのですが、やはりあえて確定申告した方が有利になる場合があります。整理すると、次の3つの課税方法から、納税者が選択することができるのです。
①申告しない
納税は源泉徴収で完了します。
②申告して総合課税を選ぶ
他の所得と合算されるのですが、この場合には「配当控除」を受けることができます。配当控除率は課税総所得の金額により異なり、所得税については配当所得の10%または5%が算出された税額から差し引かれます。
③申告して分離課税を選ぶ
納税額は①と同じですが、株式の損失と、さきほど説明した損益通算が可能になります。株式投資などで損失が出た場合には、このやり方をすれば納税額が抑えられます。配当控除を受けることはできません。
まとめ
株取引で得た譲渡所得には、原則として約20%の税金が課税されます。確定申告が必要か否かは、証券会社に開設した口座の種類などによって異なりますが、損失が出た場合には、あえて申告を行ったほうが得をする場合もあります。判断に迷うような場合には、確定申告を見越して税理士に相談してみることをおすすめします。
よくある質問
株取引にかかる税金はどのくらいですか?
株取引の売却益にかかる税金は20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)です。配当所得も同様の税率が適用されます。
確定申告が必要な場合はどのような時ですか?
「特定口座(源泉徴収なし)」や「一般口座」を利用している場合、確定申告が必要です。また、損益通算や繰越控除を利用するためにも確定申告が必要です。
NISAとiDeCoの違いは何ですか?
NISAは年間120万円までの非課税枠で株式や投資信託を運用できますが、iDeCoは年金目的で毎月積み立て、60歳まで引き出せません。
株取引で損失が出た場合の対処法はありますか?
損失が出た場合、他の利益と相殺する「損益通算」や、翌年以降3年間の利益と相殺できる「繰越控除」が利用できます。これにより節税が可能です。
確定申告を行わない場合のリスクは何ですか?
確定申告を行わないと、税務署からの追徴課税のリスクがあります。また、節税の機会を逃すことにもなります。
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