FXの利益にかかる税金はどれくらい?確定申告のポイントを解説

FXの利益にかかる税金はどれくらい?確定申告のポイントを解説
最終更新日:
2024/10/07
この記事の監修者
篠昌義税理士事務所 代表 篠 昌義(公認会計士・税理士)
 
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将来に向けた資産づくりを目的に、FX(外国為替証拠金取引)を始めたいと考えている人も多いのではないでしょうか。うまく運用すれば、少ない資金で大きなリターンを得ることも可能になるといった点は魅力ですが、その利益には税金がかかります。どんな税がどの程度課税されるのか?今回はFXの税金について解説します。

どんな税金がかかるのか?

所得税などが課税される

FXとは、国同士が通貨を交換する際の「為替レート」の変動を利用した投資です。例えば、ある国の通貨を安く買い、レートが上がった時点で売れば、差益を手にすることができます。また、取引される2国間の金利差を調整するために付与されるスワップポイントを受け取ることでも、利益が出せます。ここで言う「FXの利益」には、今の2つが該当します。

スワップポイントというのは、他の金融取引にはないFX独特の仕組みです。例えば日本のような超低金利の国の通貨を売って、新興国などの高金利の国の通貨を買うと、スワップポイント(金利差調整分)と呼ばれる収益が、ポジションを決済するまで毎日得られるのです。
株式投資による利益は、買値よりも時価が上昇したタイミングで売却しないと得られません。しかし、FXのスワップポイントは、売買の必要もなく継続的に利益を生むため、中長期の投資として人気を集めています(金利の変動などで「高金利通貨を売って低金利通貨を買う」というパターンになると、逆にスワップポイントを投資家側が支払う必要が生じます)。

当然のことながら、一定の儲けが出たら税金を支払わなくてはなりません。FXの利益に課税されるのは、所得税(復興特別所得税を含む)と住民税です。
FXには、株式投資の「特定口座」(証券会社が1年間の損益を計算して年間取引報告書を作成)のように源泉徴収を選択することはできず、投資家自らが利益を計算して、税務署に確定申告を行う必要があります。

FXの利益(所得)は、次の式で計算します。

1月1日~12月31日の①為替差益+②スワップポイント-必要経費

さきほど述べたように、①は為替レートの変動から得られた収入、②は金利差から得られる収入です。両方に投資していたら、その収入を合算します。例えば①で200万円の収入を得たけれど、②で50万円の損をした場合には、200万円-50万円=150万円がその年のFXの収入になります。
収入から必要経費(経費)を差し引いたのが所得で、その金額に20.315%を掛けた金額が、その年の納税額になります(詳しくは後述します)。確定申告は、原則として翌年の3月15日までに行います。

FXの利益は「雑所得」

所得税が課税される「所得」には、給与所得(サラリーマンの給料)、事業所得(個人事業主の所得など)、不動産所得(地代・家賃所得など)をはじめとする10種類が、税法に定められています。FXで得た利益は、このうち「雑所得」に分類されます。

雑所得とは、ひとことで言えば、「他の9種類の所得のいずれにも該当しない所得」で、公的年金、講演料、先物取引やアフィリエイトの利益、ネットオークションの利益などがこれに該当します。

監修者

篠 昌義

記事監修者からのワンポイントアドバイス

FXにかかる所得は、「先物取引にかかる雑所得等」という分類にあたります。雑所得の中でもFXにかかる所得唯一税制が優遇されている所得であり、現行の所得税法上は、実質的に株取引と同様の優遇された税制が採用されています。

税金はいくらになる?

「申告分離課税に該当する」の意味するものは?

では、具体的にどれくらいの税金がかかってくるのか、見ていくことにします。まず押さえておく必要があるのは、FXによる所得は「申告分離課税」になる、ということです。

給与所得や事業所得、不動産所得などに関しては、同時に利益が発生した場合には、それらを合算した総所得金額に課税されます。これを「総合課税」と言います。
これに対して、他の所得金額と合計せず、単独で税額を計算するのが「分離課税」です。FXによる所得は、山林所得(木の売却など)や退職所得などと同様、この分離課税方式で課税されることになります。

所得税の総合課税は、所得金額が大きくなるほど税率も高まる「累進課税」になっています。もしFXの所得をこれに含めると、総所得額がかさ上げされ、納税額が大幅に増えてしまうかもしれません。しかし、実際には分離課税なので、その心配はありません。

税率は住民税含めておよそ20%

税率は、売却益の額にかかわらず20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)です。これを所得金額に掛けたものが、納める税額になります。利益が出なかった場合には、納税の必要はありません。

所得金額 × 20.315% = 納める税額

注意したいのは、FX取引で得た「収入」=税額計算のベースになる「所得」ではない、ということです。収入を得るためにかかった費用を「必要経費」としてそこから差し引くことで、所得を減らし、節税することができるのです。
例えば以下のような項目について、経費として計上することを忘れないようにしましょう。

  • FXトレード時に発生する各種手数料
  • FXの情報取得や分析のために購入した書籍、新聞
  • FXの情報取得や分析のためのセミナー参加費
  • FXに使用したインターネットなどの通信費

これら以外にも、「FXを行う上で絶対に欠かせなかった」と説明できる費用であれば、経費で落とすことは可能です。逆に言えば、必要性が曖昧な出費については、経費として認められない可能性が高いです。

海外FXの利益は「総合課税」になる

なお、今説明したのは、国内業者(国内FX口座)を利用した投資に関しての課税についてです。海外の業者(海外FX口座)を使う場合には、そこで得た所得は、申告分離課税ではなく総合課税の対象になるため、注意が必要です。

監修者

篠 昌義

記事監修者からのワンポイントアドバイス

申告分離課税ではなく総合課税の対象になるということは、稼ぎが多い場合には一律20%ではなく、マックスの所得税率が45%(住民税をあわせると55%程度)に膨れ上がる可能性があるということです。リスクヘッジのためにも海外FX口座は使わない方が無難だと思います。

FXの税金は他の投資と比較して高い?低い?

では、このFXにかかる税金は、他の投資などに比べて高いのでしょうか、それとも安いのでしょうか?

分離課税の国内FXや株式投資の税率は、一律で20%(所得税+住民税、復興特別所得税除く)です。
これに対して、海外FXや暗号資産(仮想通貨)の収入にかかる所得税は、給与所得や事業所得などと同じ総合課税です。これは、所得が大きいほど税率も高くなっていく累進課税となっていて、5%(195万円未満)~45%(4,000万円以上)までに区分けされています。国内FXが5%だった住民税は10%なので、最大で55%の税率になります(所得税は、税率ごとに一定の控除額があります)。そのため、国内FXの税金が高いか安いかは、「どれくらい利益を上げたのか」によります。
ちなみに、総合課税の税率20%は、所得が330万円~694万9,000円の場合です(所得税のみ、約43万円の控除あり)。例えば国内FXの利益が1,000万円単位ならば、一律20%という税率は「圧倒的に有利」ということがいえるでしょう。逆に海外FXで大きな利益を上げると、他の所得との合計により、儲けの半分以上が税金で消える可能性もあるわけです。

確定申告のポイント

申告が必要になるのは?

FXによる所得には所得税などが課税されますが、正確には「一定額を超えた場合に納税の義務が生じる」ことになります。その場合には、給与所得に関しては会社が税金の源泉徴収(天引き)をしてくれるサラリーマンでも、自ら確定申告をする必要があります。
サラリーマンの場合は、給与所得以外の所得が年間20万円を超えた場合には、申告・納税しなくてはなりません。FX以外の例えば株式投資などの所得があれば、それらを合算して20万円がボーダーラインです。
主婦などの給与所得がない人の場合は、所得が48万円を超えたら確定申告の必要性が生じます。また、扶養から外れることになりますので、注意してください。

確定申告をすると、他の投資と「損益通算」できる

確定申告を行うと、他の金融商品との損益を合算して節税することが可能です。仮にFXで大きな利益が出ていても、金、原油などのCFD(差金決済取引)や商品先物取引などで損失が生じていたら、そのマイナス分と利益を相殺することができるのです。ただし、株式投資とは損益通算することができません。

監修者

篠 昌義

記事監修者からのワンポイントアドバイス

FXにかかる所得は、「先物取引にかかる雑所得等」という分類にあたります。この分類にあたるもの同士は損益を相殺できます。ですが、よく勘違いされていることとして、投資の損益は全て相殺できると思われていることです。あくまで「先物取引にかかる雑所得等」に分類されている損益同士を相殺できるということは注意しましょう。

確定申告をすれば、損失を「繰越控除」できる

FXで損失が出た(利益がない)場合には、申告・納税は不要です。しかし、あえて確定申告することは、無駄ではありません。FXによる損失は、翌年から3年間、繰越控除(利益との相殺)が認められるからです。
例えば、100万円の損失が出た場合、翌年から3年間、毎年30万円ずつの利益が出たとしても、その間は課税されないで済むのです。この繰越控除を受けるためには、毎年確定申告を行う必要があります。

FXの利益は税務署に把握されている

「源泉徴収されないのだから、黙っていれば税の支払いを免れることができるのでは?」と思う人も多いのですが、残念ながらそうはいきません。FX業者には、顧客の取引結果を記載した支払調書の税務署への届け出が義務づけられています。つまり、利用者の儲けは、課税当局に“筒抜け”なのです。
FXに伴う確定申告が必要なのにしないでいると、追徴課税などのペナルティを課せられる公算大です。忘れずに申告を行うようにしましょう。

FXの確定申告を行うために必要なこと・準備すること

確定申告は、原則として毎年2月15日~3月15日の間に行う必要があります。申告期限間近になって慌てないように、早めに準備を始めることが大事です。
説明してきたように、申告のためには、まず「FXで1年間に得た利益」を正確に把握しなくてはなりません。計算の元になるのが、FX会社が毎年1月中旬ごろまでに発行する「年間損益報告書」です。複数の会社を通じて投資を行っている場合には、確実に届いていることを確認したうえで、準備を進めましょう。

節税のポイントは、経費をきちんと計上することです。その経費を証明するのが領収書。日頃から必ずもらう習慣をつけ、なくさないように保管するようにしましょう。領収書を確定申告書に添付する必要はありませんが、万が一税務調査(※)の対象になったときなどには、「経費の証明書」となるものですから、申告が終わったからといって廃棄するのはNGです。
確定申告は、国税庁ホームページにある「確定申告書作成コーナー」を利用すれば、わざわざ税務署に出向くことなく、自分で比較的簡単に済ますことができます。ただ、利益が高額な場合、経費計上に迷う場合、忙しくて作業が難しい場合などには、税理士に相談したり、申告書の作成や申告の代行を依頼したりすることができます。

※税務調査:国税局や税務署が、納税者の税務申告が正しいかどうかをチェックするために行う調査。税務署が行う任意調査と、国税局査察部が行う強制調査がある。

まとめ

FXによる所得は、雑所得として分離課税されます。確定申告を行うことにはメリットもありますが、経費計上の仕方なども含めて、判断に迷うことがあるかもしれません。そうしたときには、一度税理士に相談してみてはいかがでしょうか。

記事監修者 篠税理士からのワンポイントアドバイス

FXにかかる所得の税金は特殊です。基本的な考え方として、株取引と同じ税制優遇を受けられると考えておけば問題ありません。ですが、株取引と分類が一緒なわけではないため、両方の損益を相殺するようなことはできません。FX取引をなんとなく始めたという方は、税金の取り扱いをしっかりと自分自身で勉強し、間違った確定申告をしないように細心の注意をするようにしましょう。また、仮想通貨取引も最近増えてきていますが、仮想通貨ともまた税制が全く違いますので、仮想通貨とも混合しないようにすることも大事です。

この記事の監修者
篠昌義税理士事務所 代表 篠 昌義(公認会計士・税理士)
有限責任監査法人トーマツで監査やコンサル、税理士法人平成会計社(現令和会計社)で税務実務や記帳・決算代行など様々な専門業務を経験した後、シェアリングテクノロジー株式会社のCFO、代表取締役を歴任。現在は、税理士事務所所長、専門家の相談室を運営するマーケットハック株式会社の代表取締役。

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この記事の執筆者
税理士紹介センタービスカス編集部
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